2012 Fiscal Year Annual Research Report
多文化空間に生きる越境者の共同性再構築に関する地域間比較研究
Project/Area Number |
24310181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 孝子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 名誉教授 (20293839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 節子 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (60367133)
藤本 透子 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 助教 (10582653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 歴史学 / 多文化空間 / 越境者 / 共同性再構築 / 地域間比較 |
Research Abstract |
1990年代以降、地域の独自性や文化的異質性を主張するミクロな共同体の再構築、たとえば宗教施設などの「場」の構築による出身地意識の維持といった動きがみられる。本研究計画は、グローバル化時代に逆行する形で生成されるこのような共同性の再構築メカニズムを、越境者ネットワーク、歴史的記憶、個人や宗教者のリーダーシップなどに注目し、多文化空間に生きる越境者集団の地域間比較により、人類学的・歴史学的視点から実証的に解明することを目的とする。 平成24年度においては、研究代表者(山田孝子)は、平成24年11月にトロント在住チベット難民を対象とし、伝統の維持と共同性の維持・再構築に関する集中的フィールド調査を実施した。研究分担者(園田節子)は、平成24年9月にバンクーバーにおいてカナダ太平洋岸在住の中国移民の歴史の保存・回復活動について、研究分担者(藤本透子)は、ナウルズの祭りの開催に合わせ、平成25年3月にモンゴル国において、カザフ人の伝統維持と共同性の創出・維持に関する集中的フィールド調査を実施した。研究協力者(王柳蘭)は、文献資料をもとに共同性再構築に関する理論的検討を行うとともに、台湾の宗教組織によるタイ北部中国系移民支援に関する資料収集を行った。 これらの調査研究にもとづいた資料整理、分析の結果、多文化空間に生きる越境者の共同性再構築にみるホスト社会との共生関係、エンパワーメントに関わる歴史の掘り起こし運動、共同性維持における文化・言語継承上の問題点、超域的ネットワークの存在などが明らかになった。また、第111回アメリカ人類学協会年次大会(平成24年11月14-18日、サンフランシスコ)において、園田節子・藤本透子がオーガナイザー、山田孝子が座長となって、体制変化と越境をテーマに分科会「Regime Change and Border Crossings in Modern Asia : Transnational Politics, Religion and Social Spaces」を組織し、越境、トランスナショナル、共同性という観点について吟味した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、および研究分担者によるフィールド調査は滞りなく実施された。研究協力者による平成25年3月に計画していたフィールド調査は実施することができなかったが、タイ北部雲南系華人と台湾の宗教団体との超域的ネットワークに関する貴重な情報の収集調査が行われた。これらの調査研究により、科学的、実証的データに基づく目的にかなった知見が得られたものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、平成24年度のフィールド調査の成果を踏まえ、当初のフィールド調査実施計画をさらに充実させ、フィールド・データ、文献資料の収集、整理、分析を行うことにしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年3月に予定していた研究協力者によるフィールド調査の実施が平成25年度に見送られたこと、インタビュー・録音テープの書き起こし作業が持ち越しとなったことで、直接経費の次年度持ち越し金が発生した。平成25年度においては、よりフィールド調査の充実を図る実施計画を立てており、持ち越し金はフィールド調査のための旅費、テープ資料書き起こしのための謝金として使用する計画である。
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Research Products
(22 results)