2012 Fiscal Year Annual Research Report
音声言語行動による自己表出・他者理解機能の音声科学的・脳科学的研究
Project/Area Number |
24320081
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
今泉 敏 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (80122018)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 裕 独立行政法人理化学研究所, 言語発達研究チーム, 研究員 (80415174)
伊集院 睦雄 東京都健康長寿医療センター, 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00250192)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 発話意図理解 / 音声言語 / 他者理解 / 脳機能 / 自己表出 / 認知モデル / fNIRS / fMRI |
Research Abstract |
音声言語による自己表現と他者理解の仕組みを音声科学的、脳科学的に解明することを目的として、1)~3)の研究を遂行し、以下の成果を得ることができた。 1)緊張場面における自己表出と他者理解:緊張の度合いを心理的指標と生理的指標を用いて調べ、不安の種類と強度が発話行動や対人理解に与える影響を解析した。その結果、話者の場面不安、対人不安、行動不安の強さに応じて、音声には有意な変化が現れた。緊張場面では場面不安の高低に関わらず音声の基本周波数が上昇し、対人不安が強い人ほど音声の基本周波数は高かった。行動不安が低い発話者ほど緊張場面で発話速度が上がり発話量が増加して自己表出の積極性が知覚された。フィラーなどには有意さが観測されなかった。音声が発話者の緊張や不安を伝達し、話者理解に有意に影響することが示された。 2)文脈、言語的意味、プロソディと発話意図理解:褒める文脈と責める文脈、言語的に褒める文と責める文、褒める音声プロソディと責める音声プロソディの組み合わせ音声を作成して、小学生定型発達児の発話糸意図理解機能を調べた。その結果、文脈の寄与率がほかの要因より高かったものの、音声プロソディと文脈や文の意図が矛盾する場合には反応時間が有意に延長した。この結果は、文脈と音声プロソディとを統合して話者の発話意図を理解する機能が発達途上にあるものの、小学生低学年ではまだ成熟はしていないことを示唆した。 3)脳機能発達の研究:小学1年生と4年生を対象に、文の言語的意味と発話意図が矛盾している短文などを激としてfNIRSを用いて発話意図理解脳機能の発達変化を研究した。下前頭回領域が重要な役割を果たしていることが示された。さらに小学1年生では両側の側頭・頭頂接合部が発話意図理解に関与している可能性が新たに示され、小学1年生と4年生における話者意図理解に関する脳機能の発達的変化がより明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「緊張場面における自己表出と他者理解」、「文脈、言語的意味、プロソディと発話意図理解」、「脳機能発達の研究」は計画通り順調に進展している。MRIによる脳機能の研究と認知モデルの開発に関して準備を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
「伝達意図表出機能の解析」に関して、初年度は主として緊張場面(就職試験での面接場面など)における音声行動を解析することによって、自己表出と他者理解過程を研究した。平成25年度は構音運動と喉頭調節運動をできるだけ自然な状態で計測し解析するための装置を、ATR-Promotionsから一部技術援助を得て完成させる。健常者に加えて、軽度発達障害者が音声言語による自己表現と他者理解にどのような制約をもたらすか解析する。「脳機能の解析」については新たに研究分担者密本淳嗣を加えてfMRIとfNIRSによる脳機能解析とモデル化を進める。「脳機構モデルによる理論的解析」については当初の予定通り、伝運意図理解の脳機能モデルを作成し、モデル上に障害を起こすことによって、脳機能障害と話者理解の関係を明確にする研究を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
構音運動と喉頭調節運動をできるだけ自然な状態で計測・解析する方法を用いて、緊張場面など多様な条件下で、健常者や吃音などの言語障害を持つ人々が音声言語を介して行う自己表現と他者理解り過程を解析する。なお構音運動と咽頭調節運動を自然(非侵襲的)な方法で正確に計測する装置の完成に時間が掛かったため予算を今年度に繰り越した。今年度はこの問題を解決して研究の推進を図る。
|
Research Products
(4 results)