2014 Fiscal Year Annual Research Report
原子力開発および原子力「安全神話」の形成と戦後政治の総合的研究
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24320128
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
小路田 泰直 奈良女子大学, 副学長 (30186671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住友 陽文 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (30262934)
小関 素明 立命館大学, 文学部, 教授 (40211825)
岡田 知弘 京都大学, 国際公共政策研究科, 教授 (60177053)
小林 啓治 京都府立大学, 文学部, 教授 (60221975)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所 / 東日本大震災 / 原子力行政 / 聞き取り調査 / 放射線被ばく問題 / 安全神話 / 地域社会 / 戦後政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究計画(①国内政治・経済過程と原発「安全神話」の形成の相関を考える分野。②全国54基の原発の建設に際してそれぞれ惹起された反対運動と、その押さえ込みに伴い必然化された地域秩序の改変に関わる分野。③原子力開発を巡ってダイナミックに変動する日米関係(国際秩序)に関わる分野)にしたがい、以下のような成果を上げることができた。 ① ビキニにおける核実験で被ばくした、第五福竜丸以外の漁船に焦点を当てた映画『放射線を浴びたX年後』を上映、監督を招いて、研究分担者・協力者をまじえてシンポジウムを開催した。また、それらの漁船を発見した高知県の高校教師のもとに赴き、聞き取り調査を行うなど、「安全神話」形成にまつわる具体的な事例を多数収集し、研究を深めた。加えて、「安全神話」形成にいたるプロセスを日本史上に広く概観し、以上で得られた研究をふまえた考察を書籍の形で公表した。 ② 原発立地地域における設置反対運動を担ってきた中心人物から聞き取り調査を行った。また、福島で開催された被災地域住民の生活に焦点を当てたフォーラムに参加し、それに参加した研究者およびそれ以外の関係者とのネットワークを構築、とくに東日本大震災において被災地となった浪江町の首長から聞き取り調査を実施して、事故以前と以後の原発と地域との関係性の変化を考察した。 ③ アメリカを中心とする国際秩序に注目した加藤哲郎著『日本の社会主義』の書評会を東京にて開催、国際秩序を歴史的観点から考察した。また相対性理論発見(1905年)以来の世紀にわたる核開発の歴史を、アメリカのみならずヨーロッパの知的動向もふまえて、世界史的な視野から討究するシンポジウムを開催した。 なお、以上の成果の概要ならびに論文は、現在編集中のものをのぞき、すべて当科研のウェブサイトおよび書籍・学術雑誌にて閲覧することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としてみれば、おおむね当初の研究計画通りである。ただし、研究の進展とともに、一部、考察すべき内容に微妙な変化もあった。原子力開発をめぐるアメリカと日本の国際関係の考察については、アメリカのみならず、ヨーロッパの知的動向もふまえた世界史的な視野から研究することが望ましいと考えられた。そのため、研究成果もそれにふさわしい奥行きをもたねばならず、3つ掲げた研究計画の達成度合いには、若干の不揃いが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、年度前半においては、ひきつづき上記研究計画を進展・充実させるが、本年度は最終年度でもあり、総合的な結論にむけて、それまでに得られた成果を公表する点に、重点を置く必要がある。そのため、シンポジウムを複数回にわたって開催して、各分担・協力研究者間で連係しつつ研究を深めると同時に、年度末に完成すべき報告書の錬磨・彫琢を主たる目的とした討議を行なう。
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Causes of Carryover |
現在にいたるまで増加している原発立地地域の膨大な新聞資料の収集を、次年度以降も継続しておこなうため、オーバードクターおよび大学院所属の研究者による比較的まとまった形でのアルバイトを計画している。また、原発にかかわる災害が継続中であり、その間にも関連書籍や関連研究が大量に出版・公表されている状況を鑑み、ある程度の余裕をもって対応する必要があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月より、順次、オーバードクターや研究代表者ならびに研究分担者、その他の所属する大学の大学院生による継続的な新聞資料収集・分析を予定している。
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Research Products
(9 results)