2013 Fiscal Year Annual Research Report
歴史認識の越境化とヨーロッパ公共圏の形成―学術交流、教科書対話、博物館、メディア
Project/Area Number |
24320149
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
剣持 久木 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60288503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
西山 暁義 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80348606)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 准教授 (80396837)
吉岡 潤 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10349243)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヨーロッパ / 公共圏 / 学術交流 / 歴史認識 / 歴史教科書 / 歴史博物館 / 公共史 / 歴史教育 |
Research Abstract |
2年目の2013年度は、初年度の構築された研究体制に基づいて、研究計画を遂行した。9月には、剣持、近藤、西山、川喜田、吉岡のメンバー全員で、ポーランド、ドイツ、フランスの視察を行った。ポーランドでは、クラクフ、アウシュヴィッツを皮切りに、カトーヴィツェ、グリヴィーツェなどのシュレジエン地方を重点的に視察した。とりわけ、ポーランド・ドイツ国境地域における公共史の現状を、シロンスク大学教授カジマレク氏やシュレジェン歴史博物館準備室長のヨドリンスキ氏らと面談して詳しく話を聞くことができた。また、ドイツ側のゲルリッツにあるシュレジエン博物館も視察した。フランスでは、アネット・ヴィヴィオルカ氏の案内で、2012年秋に開館していたドランシー収容所記念館を始めとする、ユダヤ人迫害関連施設を視察した。 剣持は、2013年9月に福岡大学、2014年2月には静岡大学で、歴史認識をめぐるシンポジウムに参加し、同年3月14日にはレンヌ第2大学准教授エマニュエル・ドロワ氏のセミナーで「独仏和解の射程:教科書、博物館、学術交流」と題する報告をおこなった。西山は在外研究の環境を利用して、現地で開催されたヨーロッパにおける記憶と歴史にかんするシンポジウムに参加する一方、アルザス・モーゼル記念館の関係者とのインタビューと資料収集、そしてベルリンでの「極東戦線異状なし?-ナショナリズムが昂揚する東アジアにおけるトランスナショナルな視点」と題する報告を行った。吉岡と川喜田は、2013年6月22日に日本ドイツ学会で開催されたシンポジウム「領土とナショナリティー」でそれぞれ報告とコメンテーターをつとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に構築された研究体制に基づいて、「研究の目的」で掲げた「公共史」の可能性と課題について実践的かつ理論的に考察するという目的のための、ポーランド、ドイツ、フランスで、本研究のために必要な調査は、おおむね順調に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究の目的」では、「公共史」の構築に重要な役割を果たす回路として、(i) 学術ネットワーク、(ii) 歴史教育、(iii) 歴史博物館、(iv)メディアの四つを掲げた。(ii)については、引き続きドイツ・ポーランド共通教科書の進捗状況のフォローを今後も継続する。 (iii)については今年度も、欧州各地の歴史博物館の視察を行うとともに、関係者の招請も検討し、公共史についての理論的考察を行う。(i),(iv)については、本年から始まる第一次世界大戦100周年記念行事をめぐる展開に注目する。さらにユーロクリオなどの歴史教育をめぐるネットワークの調査も実施していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度まで順調に研究を遂行してきたが、初年度の2012年度において視察出張における旅費が想定を下回ったために、それが2013年度に繰り越されている。2013年度においては、急激な円安もあり海外出張経費が当初の想定を上回る支出であったが、これは2012年度の繰越の一部によってカバーされ、残った金額が2014年度に繰り越されている。 2014年度においては、旅費をはじめ物品費および人件費等では研究計画通りの遂行が予想されるが、昨年来の円安傾向が続いていることもあり、旅費については、想定を超えることも予想されるため、昨年度の繰越分によるカバーが期待される。また、最終年度の2015年度は研究成果報告のために、学会経費、出版経費を計上する必要が想定されるため、万一2014年度において繰越が生じた場合は、そちらに充てる可能性もある。
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Research Products
(15 results)