2014 Fiscal Year Annual Research Report
歴史認識の越境化とヨーロッパ公共圏の形成―学術交流、教科書対話、博物館、メディア
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24320149
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
剣持 久木 静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (60288503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 潤 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (10349243)
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
西山 暁義 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80348606)
川喜田 敦子 中央大学, 文学部, 教授 (80396837)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヨーロッパ / 公共圏 / 学術交流 / 歴史認識 / 歴史教科書 / 歴史博物館 / 公共史 / 歴史教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目の2014年度は、過去2年間の合同実地調査を踏まえて、各自が個別の実地調査や研究報告を実施する形を中心に、研究計画を遂行した。まず川喜田は、8月末からドイツで調査を行い、ベルリン州立図書館にてドイツ=ポーランド間の現代史の記憶をめぐる研究文献の収集を行ったほか、ドイツ=ポーランド共通歴史教科書の進捗状況についてポーランド学術アカデミー・ベルリン・ドイツ史研究所で関係者にインタビューを行っている。同じく9月には近藤がポーランドで開催された国際歴史教育学会で「日本における歴史教育と歴史産業」と題する報告を行っている。西山も9月にドイツ、フランス滞在に際し、以下6つの博物館(特別)展示を視察した。1. ストラスブール考古学博物館、第1次世界大戦遺跡発掘展示、2. シュツットガルト、バーデン・ヴュルテンベルク歴史館、第一次世界大戦と五感、3. ドレスデン連邦軍軍事史博物館、第一次世界大戦、4. ベルリン、ドイツ歴史博物館、第一次世界大戦、5. ベルリン、ヨーロッパ文化博物館、戦争と感情、6. ベルリン、マルティン=グロピウス=バウ、第1次世界大戦前のカラー写真。また、第一次世界大戦100周年関連での各種行事には、メンバー全員が積極的に関与している。10月にはペロンヌ第一次大戦博物館の研究所長のステファヌ・オードワーヌ=ルゾー氏を招いた講演会を本科研主催で開催し、剣持は12月に広島平和研究所での講演を実施し、西山は2月に、京大人文研が編纂した論集『第一次世界大戦』の合評会で報告している。さらに、2015年3月には剣持がドレスデンの連邦軍事史博物館とロンドンの帝国戦争博物館を視察している。メンバーによる一連の視察結果の比較検討を通して、戦争展示をめぐる近年の傾向(文化史的要素、戦争考古学の成果の展示)を確認し、内容、手法に一定の収斂が見られるとの認識を持つにいたっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去2年間で実施した、実地調査の成果を踏まえて、「研究の目的」で掲げた「公共史」の可能性と課題について、メンバーがそれぞれ、個別の調査、研究を深め、その成果の一部を内外ですでに報告しており、本研究の目的は、おおむね順調に達成されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究の目的」では、「公共史」の構築に重要な役割を果たす回路として、(i) 学術ネットワーク、(ii) 歴史教育、(iii) 歴史博物館、(iv)メディアの四つを掲げた。(ii)については、遅れていたドイツ・ポーランド教科書が2015年度中にようやく刊行されるという情勢を踏まえてフォローを継続する。(iii)については、すでに実施した調査を踏まえた研究成果の公表に取り組んでいく。(i)と(iv)については、昨年の第一次大戦百周年行事に加えて本年度の第二次大戦終結70周年関連行事をフォローしていく。研究全体の成果報告については、2015年5月の西洋史学会で主催するシンポジウムを皮切りに、着実に公表をすすめていく。
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Causes of Carryover |
2014年度まで順調に研究を遂行してきたが、2014年度中に招請予定であったフランス人研究者の来日が2015年4月になったため、その経費の分を翌年に繰り越している。そのほか、最終年度の配分額が少なくなっている分をカバーするために繰り越した部分もある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年4月に来日するトマ・セリエ氏(パリ第8大学ヨーロッパ研究所)を招請する経費として執行する。また最終年度に予定されている研究成果報告関連費用として使用する。
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Research Products
(15 results)