2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
豊田 哲也 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (30260615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 聡史 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10314460)
長尾 謙吉 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50301429)
中谷 友樹 立命館大学, 文学部, 教授 (20298722)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地域格差 / 世帯所得 / 産業構造 / 人口移動 / 健康水準 / ミクロデータ / 地域政策 / 格差社会 |
Research Abstract |
格差社会問題は経済的にも政策的にも極めて重要なテーマである。日本では、長期にわたる首都圏への一極集中と地方圏の衰退により、国土発展の不均衡が生じた。また、大都市圏の内部では、富裕な地区と貧困な地区とのコントラストが強まっている。このように様々な空間スケールで生じる地域格差現象について、その実態を把握し要因を究明することは地理学にとって大きな課題である。本研究の目的は、(1)これまで未解明であった世帯所得の地域的分布と時間的変化を統計データによって推定し、(2)その背景となる人口学的要因や社会経済的要因を探るとともに、(3)地域の人口動態や健康水準などに及ぼす影響を多面的に分析することにある。1990年代以降に世帯所得のジニ係数が上昇した要因は、高齢化や単身世帯の増加など人口学的変化にあるという指摘がある。そこで、住宅・土地統計調査の非集計ミクロデータを使用し、年齢別人口構成や世帯規模をコントロールした上で実質的な世帯所得を推計した。都道府県別に見た世帯所得の地域格差は、1993~98年にむしろ縮小し、1998~2008年はほとんど変化していない。所得水準の変化を詳細に見ると、景気回復に伴い首都圏で急上昇したほか、近畿地方が落ち込み東海地方が伸びるなど順位に変化が見られる。一方、同期間に低所得地域から高所得地域への人口移動が活発化したことから、人口や経済活動の地理的偏在としての地域格差は拡大していると言える。また、大都市圏の市区町村別に世帯所得の分布を見ると、東京都心部に高所得世帯が集中する傾向が顕著で、郊外地域では団塊世代の引退に伴い所得が低下している。また、こうした経済的な地域格差は居住者の健康水準にも影響を与えることが社会調査データベースから確認される。格差社会問題の解決には、税制や社会保障など所得再分配政策だけでなく、都市政策や地域政策を含めて議論していく必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『経済地理学年報』第59巻第1号は特集「地域格差の経済地理学」として刊行され、5本の論文が掲載されたことは本研究の大きな成果と言える。格差現象の把握と分析に関する方法論的な問題点、地域格差や不平等をめぐる価値的対立と政策的課題、地域格差が人口移動や健康状態に及ぼす影響について、新たな知見を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、地域格差の実態把握、およびその原因や影響の分析をおこなう予定である。さらなるデータの収集と対象範囲の拡張、方法論の深化と手法の精緻化を図る。また、社会学や経済学など他分野の学会で発表も積極的に発表をおこない、格差問題における地理学的アプローチの重要性についてアピールしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、(独)統計センターにオーダーメード集計を依頼し、土地・住宅統計調査や全国消費実態調査に含まれる世帯所得に関する統計表を作成する計画であったが、委託費用が高額なため、既に取得済みの匿名データを用いて予備的に分析手法を精査・検討するのに予定以上の時間を要した。平成25年度はより効率的な方法でデータ作成をおこなうため準備を進めているところである。
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Research Products
(14 results)