2013 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ公法学における「ケルゼン・ルネッサンス」の検討
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24330010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 篤 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70243540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
毛利 透 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60219962)
西 平等 関西大学, 法学部, 教授 (60323656)
福島 涼史 長崎県立大学, 国際情報学部, 准教授 (70581221)
近藤 圭介 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00612392)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ケルゼン / ルネッサンス / 憲法理論論 / 民主制論 / 議会制論 / 国家の相対化 / ヨーロッパ化 / 憲法裁判所批判 |
Research Abstract |
「ケルゼン・ルネッサンス」をめぐる①現在ドイツにおけるケルゼン研究の進展・成果の把握について、1)方法論に関して、それが主として規範理論、そしてドグマーティック批判の文脈で行われていることが確認された。2)民主制論に関して、1980年代以降の民主制論の発展・転回の中にケルゼンの理経を見ようとする傾向が確認された。3)国家の相対化・グローバル化について、ケルゼンの理論型体をグローバル化・ヨーロッパ化の把握に適用しようとする具体的諸試行を概観し、公表する準備を整えた。 ②ケルゼンについての研究・論及の分析を通じてドイツ公法学の布置を理解することについて、1)方法論に関して、憲法理論、ドグマーティックをめぐる論争の構図にケルゼン研究が密接にかかわることがわかった。2)民主制論に関して、その相対化、機能化をめぐる議論が活発に行われ、その関連でケルゼンがさまざまに援用されていることが確認された。3)国家の相対化・グローバル化について、国家、階層、規範と事実をめぐる対抗軸の中で、ケルゼンの立場(脱国家、階層、規範)が尺度として働いていることが観察された。4)ケルゼン「再発見」と憲法裁判所批判について、その中心となった著作の翻訳、検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①の1)、2)については、相当解明が進み、その成果は高田の諸著作などによって公表された。3)については、まだ完成を見ていないが、西、福島の著作が公表され、近藤の研究も公表準備が進んでいる。 ②の1)については、広い範囲での検討が進んだ。高田、毛利のドイツにおける調査によってその構造の調査がなされ、2014年3月のブムケの訪日とそこにおける共同研究で、理解が深まった。2)については、2013年5月のヴァルトホフの訪日とそこにおける共同研究で解明が進み、高田、毛利の著作で検討結果が公表された。3)については、その検討成果が、松本の編・著作として一部公表され、近藤の研究成果公表の準備も進んでいる。4)については、高田、松本を中心に翻訳を進め、次年度の完成、出版を目指している。 各研究分野について(特に②の1)、4)について)重要な示唆を与え得るドライアーの来日が、2014年度に延期されたため、その点に関してのみ、計画進行に若干の遅れを生じたが、当初計画にはなかった②の4)が進むなど、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
各分担者が計画の完成にむけて研究を進める。その際、高田が、ジーボルト賞受賞により前期にベルリンでの在外研究に招待されているため、他の分担者との連絡を密にしつつ、ドイツの研究者と頻繁に議論し、これまでの分析・検討の精度を高める。また、秋口から3月にかけて、各分担者の研究と取りまとめの助けとなるように、ドライアー、ポッシャー、「プロ・ケルゼン派」研究者(未定)を招き、共同研究会を行う。これ以外にも、分担者が頻繁に会合し、研究の取りまとめに努め、報告書として完成させる。具体的には: 1)方法論:「プロ・ケルゼン」の多くの公法研究者が、専らケルゼンの「法理論」に着目している、というこれまでの分析結果をもとに、彼らの「憲法理論」の理解を、他の立場の研究者との比較の上で明らかにする。また、1990年代以降の社会科学との協働をめぐって展開された公法学方法論争において、「プロ・ケルゼン」の研究者が展開した議論を、この観点から再検討する。 2)民主制論:急速に展開した1980年以降のドイツ民主制論において、ケルゼン理論が大きな役割を果たした、という(再)評価が与えられていることを前提に、ケルゼン民主制論の構成要素ごとに、理論状況の概観を与える。また、議会・法律の意義・働きをめぐって展開した1990年以降の論争の中で、「プロ・ケルゼン派」の研究者が展開した議論を、この観点から再検討する。 3)法形成・適用における国家の相対化とグローバル化:国際法、国際法主体以外による法形成・適用、EUをめぐる法形成・適用の把握について、ケルゼン理論が(再)評価されているという分析結果をもとに、それをめぐる学説状況に概観を与える。 4)ケルゼン「再発見」と憲法裁判所批判:ドイツで大きな反響を呼んでいる、ケルゼン「再発見」を主導するドイツ公法研究者の憲法裁判所批判の著作を翻訳し、その早期の完成と分析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度来日を予定していたホルスト・ドライアー教授が、健康上の理由から来日できなかった。それ故、その旅費等が支出できなかった。 ドライアー教授と相談し、来年度の来日を得ることとなった(2015年3月の予定)。
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Research Products
(13 results)