2012 Fiscal Year Annual Research Report
金融取引におけるリスクの多層化と民事責任体系の再構築
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24330024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新堂 明子 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00301862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬川 信久 早稲田大学, 法学研究院, 教授 (10009847)
高見 進 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20009848)
藤原 正則 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (70190105)
山本 哲生 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80230572)
嶋 拓哉 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80377613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リスク / 消費者契約法 / 金融商品取引法 / 金融ADR / 渉外的金融取引 |
Research Abstract |
1.実体法の視点に基づく金融リスクの多角的分析 本研究は金融リスクの分散化・多層化の法的制度設計を事前的予防と事後的負担の2面に分けて考察するものであるが、本年度は後者の面を中心に検討を進めた。 特に、基本的な民事法理との関係では、(1)金融取引における不実表示ないし説明義務違反に基づく契約の取消し、不法行為責任および債務不履行責任の交錯(新堂)、(2)金融取引紛争に起因する不法行為法再編の動き(欧州統一法等)(瀬川、山本周)の論点を中心に据えて研究を行った。また、金融業者の顧客に対する損害賠償にかかる責任保険については、これが経済的損害の填補であることや、被害者が保険者免責を回避すべく業者の故意を主張しないこと等に起因して、モラル・ハザードの発生が懸念されるが、こうした事態に対する実効的規律に関しても検討を進めた(山本哲)。 2.手続法上の新たな制度を通じたエンフォースメントの実効性確保 金融ADRに関しては、訴訟、その他のADRとの比較を通じた金融ADRの特徴の抽出・分析、金融ADRの実効性・公平性の確保に向けた取組みの研究に着手し、資料収集に努めた(高見)。 3.渉外的金融取引における法の適用関係と裁判・執行管轄権の実効的な行使 通常連結と特別連結の多層化構造は、特に渉外的取引に顕著であるが、抵触法と実質法の協働という視点から、同構造について分析を行った。その結果、渉外的取引には、準拠法に加えて、介入規範の適用も想定されるが、その適用に当たって、同規範制定国実質法上の適用意思と法廷地抵触法上の連結政策が協働的に機能しているとの結論を得た(嶋)。 なお、不法行為リスクの多角化を巡る基礎研究として、ドイツ不法行為法の原則的理論と最新の動向を理解するため、ミュンヘン大学のヨハネス・バーガー教授を招聘し、損害論および損益相殺(保険代位)に関する研究会を開催のうえ、意見交換を行った(藤原)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「9.研究実績の概要」に記載したとおり、実体法、手続法、抵触法の領域それぞれについて、おおむね当初計画に沿って各自が研究活動を行った結果、下記「13.研究発表」に示すとおり、多数の成果として発表するに至っている。なお、未発表の成果も含めてこれら初年度の成果については、本年6月に一同による研究会を開催し、その場にて意見・情報交換を図り、研究の一体化を図る方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
実体法の視点に基づく金融リスク分析については、金融取引ごとに検討を深める。手続法上の新たな制度に関する研究については、資料分析を始める。渉外的金融取引における法の適用関係に関する研究については、古典的な複合取引である運送契約や保険契約の検討を通じて、複合的な金融取引への示唆を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については洋書の入荷状況がはかばかしくなかったが、すでに発注済みなので次年度には状況が改善される。国内および外国旅費については一部実施されなかったが、新たに研究分担者(学外)も加わることなどから次年度には解消される。謝金については年度末に講師を招聘したため本年度の計上に間に合わなかったが次年度に計上されるので問題はない。
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Research Products
(25 results)