2013 Fiscal Year Annual Research Report
東南海・南海地震に対する地域社会の脆弱性とプリペアードネスに関する実証的研究
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24330151
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 由彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30170137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
丹辺 宣彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90212125)
丸山 康司 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20316334)
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
青木 聡子 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80431485)
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脆弱性 / プリペアードネス / 地域社会 / 南海トラフ巨大地震 / コミュニティ / ガバナンス / 復興 / 避難 |
Research Abstract |
東日本大震災の勃発を受けて、中央防災会議による南海トラフ巨大地震(=東南海・南海地震)の被害予測の見直しが行われてきた。2012年8月に第一次報告、2013年3月に第二次報告、2013年5月に最終報告が出された。それを受けて、2014年3月には中央防災会議から南海トラフ地震防災対策推進基本計画が発表された。 中央防災会議の一連の発表は、防災行政が中央集権的であるため、地方自治体における防災対策に大きな影響を与えた。具体的には、都道府県、市町村は、中央防災会議の被害想定の見直しに対応することを迫られ、市民の不安を煽るような報道で不安を募らせた市民からの突き上げもあって、いわば見切り発車的に対策を発表してきた。 行政の対応には地域によってばらつきがあるが、総じて対応の遅れや場当たり的成果は否めない。住民組織の側の対応はさらにばらつきがあるようだ。地震・津波による大きな被害が予測される地域においても、独自の事前避難計画を策定する地域がある一方で、無関心・無策の地域も少なくない。 最悪の被害想定があまりに甚大ゆえに、行政、市民ともに、すくんでしまった感がある。中央防災会議の発表の仕方は、リスク・コミュニケーション的に問題だと思われる。行政はその被害予想の甚大さに無力感に襲われながらも、最低限必要な施策を出来る範囲で粛々とすすめているように見える。他方、住民にはメディア以外に情報がなく、最悪のケースの度重なる報道がかえっていたずらに不安をあおる結果となっているように思われる。 以上が、南海トラフ巨大地震を前にした、現時点におけるプリペアードネスの状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中央防災会議による南海トラフ巨大地震の被害予想を受け、西日本の太平洋沿岸地域の自治体では新しい防災・減災対策の検討が始まっている。そのなかでも最も被害の大きいと予想される東海地方の3県(愛知県、静岡県、三重県)の防災・危機管理部門の責任者と地震学・社会学・経済学・地理学の研究者の参加を得て、ワークショップを開催した。南海トラフに対する行政の最前線の動向に関する基本的な知識が得られると同時に、課題も浮き彫りになった。 巨大災害に対する国家の危機管理およびプリペアードネスに関する国際比較を目的に、中国地震局・地震局地球物理研究所とワークショップを北京市において開催した。科学的知識を根拠に防災対策がとられる点では中国も日本と同様であるが、日本以上に科学的知識が政治に従属する側面もあることがわかった。日本の防災・減災対策を相対化する視点が得られた。 東日本大震災の被害構造の分析、および復興過程の調査・分析は、前年度に引き続いて行った。 以上から、研究が概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究の最終年度である。必要に応じて補充調査を行いながら、これまでの調査研究で得られた知見を研究成果としてまとめ、公開していきたい。何冊かの報告書を刊行する予定である。本研究のねらい、基本的視点、これまで開催してきた研究会・ワークショップの記録については、すでにホームページを開設し、公開している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰り越された理由は2つある。第一に、報告書を印刷する費用、および報告書郵送費用として予定していた費用が印刷の遅れによって繰り越されたものである。第二に、研究分担者に配分した研究費が、その分担者の平成25年度に科研費が支給されることになり、そちらの研究費を優先的に使ったために、本研究が当初予定していたように使用されなかったことである。 ・繰り越された額のうち、報告書印刷費、および報告書郵送費として予定していた額は、平成26年6月までに支出する予定である。 ・平成25年度に研究分担者に配分していた額については、今年度は、(1)補充調査等に振り向ける、(2)今年度の後半に予定している研究報告のシンポジウムのために支出する、以上の予定である。
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