2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジア比較に基づく基礎教育課程の「一貫制」に関する理論的・実践的研究
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24330214
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 統治 筑波大学, 人間系, 教授 (40128046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
國分 麻里 筑波大学, 人間系, 准教授 (10566003)
井田 仁康 筑波大学, 人間系, 教授 (20203086)
濱田 博文 筑波大学, 人間系, 教授 (20212152)
田中 マリア 筑波大学, 人間系, 助教 (20434425)
庄司 一子 筑波大学, 人間系, 教授 (40206264)
吉田 武男 筑波大学, 人間系, 教授 (40247945)
唐木 清志 筑波大学, 人間系, 准教授 (40273156)
蒔苗 直道 筑波大学, 人間系, 准教授 (40345939)
塚田 泰彦 筑波大学, 人間系, 教授 (50163762)
根津 朋実 筑波大学, 人間系, 准教授 (50344958)
岡出 美則 筑波大学, 体育系, 教授 (60169125)
卯城 祐司 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60271722)
甲斐 雄一郎 筑波大学, 人間系, 教授 (70169374)
大高 泉 筑波大学, 人間系, 教授 (70176907)
礒田 正美 筑波大学, 人間系, 教授 (70212967)
片平 克弘 筑波大学, 人間系, 教授 (70214327)
窪田 眞二 筑波大学, 人間系, 教授 (80170033)
石崎 和宏 筑波大学, 芸術系, 教授 (80250869)
清水 美憲 筑波大学, 人間系, 教授 (90226259)
樋口 直宏 筑波大学, 人間系, 教授 (90287920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一貫制教育課程 / 小中一貫教育 / 中高一貫教育 / 高大接続 / 生涯学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年継続の3年目に当たる26年度は、とくに台湾における12年制一貫教育課程改革の動向とその問題点に注目すると共に、アジア比較の対象国に東南アジアのシンガポールを含めて現地調査を行った。その結果、両国とも生涯学習者を育成すべく基礎教育課程の一貫制を確保するための施策を積極的に展開していることが分かった。12年制一貫教育課程の導入を図っている台湾の場合、高校への入学者選抜方式の公平性をめぐって反対運動が強まり、当面、今年度からの導入が見送られた。台湾政府はこの制度設計の趣旨を貫くことを表明しており、この議論は選挙でも取り上げられる程に大きな争点となっている。これに対しシンガポールでは一貫制を保証するための行政・大学・学校システム間の連携を緊密化して今後の労働市場を展望しつつ生涯学習の施策を充実させている。とくに普通教育を含めてキャリア教育に関する基礎教育を高度化しようと試みている点が注目される。 PISAで上位を占める諸国・地域での積極的な教育改革の動向と比較して、日本の一貫教育のシステムは小中一貫教育と中高一貫教育の両者を混在させており、これが大都市部の施設一体型小中一貫校では7年次生の再募集を行わざるを得ないような「矛盾」を生じさせている面がある。この問題点は地方の小中一貫教育の場合にはあまり見られない傾向であるが、しかし中都市部を中心に今後保護者や学習塾等による進路選択の方向付けによっては「一貫制」の在り方が大きく左右される可能性がある。その実際を調べる過程で研究代表者と分担者計3名は小中一貫教育を進める茨城県つくば市で「学園」を単位とする学校評価研究事業に専門家として加わり、カリキュラム・マネジメント等の展開に注目しながら実践的な共同研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)アジア比較の対象国・地域の中でもとくに有能な生涯学習者の育成を教育目標の一つに掲げる代表的な国・地域(たとえばシンガポール、台湾、香港等)が見出されて、その基礎教育課程の「一貫制」に見られる特質をカリキュラム・マネジメント・モデルの視点から理論的に整理する方向性が切り開かれた。 (2)基礎教育課程の「一貫制」を確保する上で、初等と中等のみならず前期と後期の中等教育間の「接続」問題を解明する必要性が明確となった。この問題は生涯学習社会を構想する時に不可避的な制度設計上の論点である。と同時にそれは教師教育や学校経営の改革方針とも密接に関連することが明らかにされつつある。 (3)つくば市での小中一貫教育の実践的研究と連携しつつ、そこにアジア比較の研究成果を一定還元することができている。今年度は学校評価の側面から専門的な助言と共同研究を行えた意義が大きい。これらの研究成果は日本カリキュラム学会、高校教育学会、特別活動学会等で発表し、また論文発表やHPでの広報も行った。 (4)26年度当初に計画していた東南アジア諸国のSEAMEOのセンターの訪問調査が時間的な都合により行えなかった。また人口規模のより大きな国・地域での調査が行えなかった。この他、研究代表者が27年度より他の研究機関に移籍することになったためこれが共同研究の推進にも若干影響した。 (5)教育課程・教師教育・学校経営の3グループに分かれた共同研究を進める必要があって、分担者間での情報共有をさらに一層活発化しなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる27年度は、アジア比較の調査と講演の成果をまとめ、必要であれば補足調査を行い、最終報告を作成する予定である。最終報告の内容をもとに日本での基礎教育課程の「一貫制」をめぐる論点を再度整理して、グループによる検討会を開催し、その結果もまとめる。とくに一貫教育の在り様をめぐる理論と実践の両面からの論点整理に際して分担者各人の専門領域における知見を実践の場においても活かせるように図る。 たとえば自治体等との共催の形によるシンポジウムや、小中一貫教育全国サミットを含む実践校での発表会での提案と質疑を行う。またこれらの成果を当科研のHPにアップして公開して一貫教育を推進する実践家からのコメントを求め、その内容も整理して掲載する。また教育政策の審議等においても研究成果をもとにした提案を行いたい。 そして最終的には当科研が積み残した研究課題を整理して、次期の研究の課題と計画としてまとめて新たなプロジェクトの申請と推進につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金の使用見込みにおいて東南アジアのSEAMEOから研究者の招聘と講演を予定していたけれども、先方との予定が合わずにこれを見送ったために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き招待講演を計画しているが、アジア諸国・地域からの招聘が困難な場合、日本での一貫教育の専門研究者かあるいは実践家を招くことを予定している。
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Research Products
(7 results)