2013 Fiscal Year Annual Research Report
教師の専門性の再検討と教師教育における「子ども理解のカリキュラム」の構想
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24330229
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
田中 孝彦 武庫川女子大学, 教育研究所, 教授 (80092261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安東 由則 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (10241217)
上田 孝俊 武庫川女子大学, 教育研究所, 准教授 (30509865)
倉石 哲也 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (20234528)
渡邉 由之 武庫川女子大学, 教育研究所, 助手 (40611348)
福井 雅英 北海道文教大学, 外国語学部, 教授 (20388804)
筒井 潤子 都留文科大学, 文学部, 准教授 (70405075)
山内 清郎 大谷大学, 文学部, 准教授 (80351253)
影浦 紀子 園田学園女子大学, 教育学部, 講師 (00390287)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 子ども理解 / 発達援助職 / 教師の専門性 / 教師教育のカリキュラム / 臨床教育学 |
Research Abstract |
【本研究の目的】本研究は、教師の専門性と教師の養成・教育のありかたの再検討、とくに教師教育における「子ども理解」のカリキュラムを構想するための基礎的な研究・調査に、4年間の計画で取り組もうとするものである。 【具体的な研究・調査の活動】2013年度は、上記の目的のもと、次の研究・調査を行ってきた。 1、テーマ・概念・方法の理論的検討:①地域に根差した教育活動を推進してきた檜山・上ノ国の約10年の歩みを振り返り、今後の調査方法について議論した。②福祉領域からみた発達援助職の養成・教育の課題について報告・討議を行った。③教師教育において、教師の自己の育ちとそのための大学院教育の在り方について検討した。 2、地域調査:北海道の檜山・上ノ国を訪ね、人口の減少、地場産業の継承問題など地域が抱える変化のもとで、漁業関係者・高校生・教師・教育行政関係者に、地域・教育・人生イメージについて聴きとりを行った(9月)。 3、大学・大学院調査:福井大学教職大学院を訪問し、教職大学院の設立に至る経緯とその構想について、インタビューを行った。また、実際に教育現場を参観し、とりわけ大学生と大学院生(ストレートマスター)のカンファレンス的学習に参加、学習風景に触れた(11月)。 4、子ども・当事者理解と教育的・援助的実践のカンファレンス:山梨県の児童相談所に勤務する西堀涼子氏を報告者として、困難を抱えた子どもへの理解と、そこでの援助的課題について討論した(2月)。 5、上記のほかに、子ども・教育の今日的状況をとらえるために、滋賀県の小学校訪問、岐阜県恵那市への訪問調査を重ねた。 【研究・調査の記録】2年間の檜山・上ノ国調査をまとめた内部資料として聴きとり記録集を作成した(3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も、①地域における子育て・教育の現状を探る地域調査、②教師教育の実際と課題を探る大学・大学院調査を軸として研究を進めてきた。また、教育現場・教育実践への接近として、③子ども理解の教育的・援助的カンファレンス(以下、カンファレンス)も開催することができた。達成状況の詳細は、次の通りである。 ①…これまでの北海道檜山・上ノ国での聴きとり調査を通して、高校生、地域で働く若者、幼い子どもの母親、地場産業従事者(農家・漁師)、小学校教師、高校教師、教育行政関係者の語りが蓄積されている。それらの語りに共通するのは、地域の過疎化や働き口といった問題が、子育て・教育・就職・暮らしの多面において影響を与えていることの実感であったが、同時に、地域の子育て環境のよさや、若い世代の地域づくりに対する動きも、そこには含まれていた。現地での地域と教育を考える動きとともに、本研究が進みつつある。 ②…教職大学院への本格調査は初めてであったが、福井大学教職大学院の協力も得られ、設立の構想や理念、今日の実践課題など幅の広い討論を行うことできた。また、実際の授業(学生カンファレンス)を参与観察し、拠点校の一つである丸岡南中学校の公開授業も参観し、教師教育に求められる実践的な学習の重要性を再確認した。また、学生・院生が実践経験をもったうえで教師としての自己を育む学習環境を用意することの意味とともに、そこでの大学教員のあり方の問題も見出された。 ③…カンファレンスでは、児童相談所の職員から垣間見られる今日の子どもの困難を中心に、子どもを取り巻く社会・家族の問題、そして援助者特有の困難・課題を丁寧に議論した。医療・福祉・教育に携わる援助職の共通性と差異を考えるための重要な機会となった。 上記の活動のほか、全体研究会での課題討論、教育現場への訪問調査の可能性の探求など、日常的活動も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においても、これまで共同研究の柱としてきた、①地域調査、②大学・大学院調査、③カンファレンス(実践検討・理論研究会)を本格的に推進し、三つの活動の円環のもとに「教師教育の課題と可能性」、「子ども理解の今日的意味と地域での教育的・援助的活動の実際」、「子ども理解のカリキュラム構想」についての研究を推し進めたい。また、調査及び活動後の検討会(全体研究会)を活性化させ、本研究の到達と課題を浮き彫りにし、研究の総括に向けた議論を重ねる。 次年度の具体的な研究推進方策については、次の通りである。 第一に、これまでの地域調査で浮かび上がってきた課題を検討する。地域に根ざした教育に多くの課題はあるが、地域の衰退が著しいなかで、なお子ども・若者は、その地域で育ち・働き・子育てをしたいという生活要求を抱いている。この事実は、現地の関係者を交えて深く議論することが必要である。とりわけ、次年度以降は、これまでの調査を踏まえた全体研究会を、現地関係者とともに推し進める。 第二に、大学・大学院調査の当面の課題として、現職教員の自己教育のあり方と関わった大学院教育の質の検討が挙げられる。あわせて、大学教員の質の問題も、検討課題であるといえる。発達援助専門職の学習の質とともに、こうした大学機関、大学教員の質の検討を行い、教師教育に関するカリキュラム構想や理論的研究を深める必要がある。 第三に、上記の検討課題とあわせて、教師や援助職の専門性を検討するために、実践者・研究者とのカンファレンスを重ね、教育現場の問題・課題を身近でとらえる場を設ける。また、兵庫県西宮市及び滋賀県の教育現場を訪ね、今日の教育の実情に触れる活動も計画している。これは教師教育における子ども理解のカリキュラム構想に、実践的な目線を含み込む活動として位置づける。 次年度は、調査・研究を通じて浮かび上がっている上記の理論課題に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、最終年度に向けた総括準備期間として次の計画を立てている。①これまでの研究調査(主に聴きとり調査)で蓄積している記録を内部資料や聴きとり記録集として編集し、調査者全員で共有するために印刷・製本する。②これまで武庫川女子大学を全体研究会の開催地としてきたが、とりわけ北海道の檜山・上ノ国を対象とした地域調査においては、現地の関係者とともに調査結果と研究課題を検討し、その総括を行う段階に達したと判断した。よって、今後は、檜山・上ノ国での研究討議の機会を増やすこと、檜山・上ノ国調査に関する全体研究会のうちで必要なものは現地で開催することを計画としている。③これまでに蓄積した参考資料や文献の整理と保存のために、必要な消耗品を購入する。 以上の活動・作業が次年度以降に必要不可欠となったため、それらを円滑に遂行するための次年度使用額が生じた次第である。 次年度の研究費の使用計画は下記の通りである。 物品費:250,000円(研究資料の整理・保存のための消耗品、研究活動に必要な機器・物品等の追加購入)、旅費:1,780,000円(地域調査、大学・大学院調査、教育現場の訪問調査、檜山・上ノ国での研究会、科研費の運営に関する会議、その他研究活動に要する旅費)、人件費・謝金:350,000円(カンファレンス報告者への謝礼、聴きとり調査謝礼等)、その他:1,028,467円(研究に関する内部資料、聴きとり調査記録集、科研費資料集などの印刷・製本/聴きとりデータのテキスト化(テープ起こし)のための経費、資料郵送費、会議室使用料、等)
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Research Products
(13 results)