2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24340035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須藤 靖 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183053)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / トランジット惑星 / 宇宙生物学 / 天体力学 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
トランジット惑星系の精密測光および分光データを駆使して、その中心星のスピン角運動量ベクトルと惑星の軌道角運動量ベクトルの進化をモデル化するのが本研究の目的の一つであった。 我々のグループは今までに、トランジット惑星系の上記の2つのベクトルのなす角度(以下、自転軌道角)の天球上の2次元射影角を測定する方法論を構築してきた。ただしこの方法論では、中心星の自転軸と我々の視線方向のなす自転傾斜角の大きさは知ることができず、3次元的な意味での自転軌道角の決定は不可能であった。しかし、その自転軌道角は、星の非動径振動に起因する光度変化の周波数解析によって決定できる。 このいわゆる星震学の研究グループと共同して、2つのトランジット惑星系の3次元自転軌道角を決定することに成功した。特にこれは主系列星を中心星とする多重惑星系に対しては初めてである。その結果、従来逆行していると考えられていたHAT-P-7という系は実は極軌道に近いこと、またほとんど整列していると思われていたKepler-25という系は実は数十度傾いていることを明らかにした。この2つの具体例は、星震学が多重惑星系の自転軌道角の精密決定に大きな威力を発揮することを示したものである。 またPTFO 8-8695という高速自転するTタウリ星を中心星とするトランジット惑星系の示す異常な光度曲線の時間変化を、中心星の重力減光、周辺減光、惑星との相互作用による歳差運動などを取り込んだ数値計算で再現するとともに、今後の観測に対する予言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね期待通りの成果をあげているものと判断する。多重惑星系の惑星食の発見、上記の星震学のトランジット惑星への応用はいずれも先駆的な結果であると自負している。一方、天体力学と組み合わせたモデル化については、多自由度パラメータ空間を扱うことが必要であり、なかなか一般的な結論を得ることが難しくやや難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今まで進めて来た研究をより一層改良するとともに、惑星リングの存在の解析、バイオマーカーの提案とその観測可能性についての研究に比重を移して行く予定である。
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Causes of Carryover |
大学業務の関係で予定していた海外出張を取りやめたこと、さらに投稿していた論文の一本の閲読が遅れて最近掲載決定となった上、もう一本は閲読者とのやりとりが続いているためにまだ掲載決定とならず、これらの投稿料と別刷り代金が来年度にずれたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年は、8月にハワイで国際天文連合総会があり、航空運賃が高い時期に2週間滞在する必要があるので、その出張費を計上。さらに上記の論文の投稿料等を今年度に支払う目的として使用する予定である。
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