2013 Fiscal Year Annual Research Report
微小ジョセフソン接合システムにおけるクーパー対トンネリングの非局所相関の研究
Project/Area Number |
24340067
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
島田 宏 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60216067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微小ジョセフソン接合 / 電流ドラッグ / 非局所相関 / 帯電効果 |
Research Abstract |
トンネル電流の非局所相関の機構についての情報を得るために、昨年度に引き続き、比較的大きな古典的な振る舞いをする単一のJosephson接合の交流Josephson効果をオンチップの高周波源とし、微小Josephson接合列への照射実験を行った。その結果、微小Josephson接合列に誘引される電流は、およそ100 GHzまでの範囲で、ほぼ交流Josephson効果での入力パワーに比例して増大することを見出した。また、接合列からの電磁波放射を実証するためのオンチップ検出器の試作を行った。 一方、非局所相関に基づくと考えられる局所容量結合が強い微小Josephson接合列間の片バイアスでの異常電流誘引については、一方の接合列をdc-SQUID列にし磁場によりin situで素子のパラメータを変化させることで、誘引係数の大きさが誘引先の接合列の接合のJosephson結合エネルギーにほぼ比例して増減することを見出した。 接合列の電流電圧特性に表れる定電流構造については、SQUID列リードのついた20接合からなる素子についてさらに実験を進めた。SQUIDリード部の電圧をもモニターするため、特殊な電圧プローブを付けた素子も作製し、測定を行った。現状では、定電流構造は、SQUIDリードの特性と強く相関して現れるものの、素子のBloch振動とは直接関係しないという結果を得ており、その起源は未だ明らかにはなっていない。 なお、今年度までの成果について、いくつかの国際会議やシンポジウムで発表を行った。そのうち1件で、Best Poster Awardを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度行う予定であった、低温高周波計測システムでの微小Josephson接合列への高周波照射実験が未だ行えていない。また、接合列からの電磁波放射を実証するためのオンチップ検出器は、試作までが行えているが、その機能の検証はできていない。以上の点で、研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
トンネル電流の非局所相関については、比較的大きな古典的な振る舞いをする単一のJosephson接合の交流Josephson効果による接合列への高周波の照射実験の結果を周波数、電力の観点から評価して取りまとめる。さらに、この電流誘引過程について、より定量的に評価するために、低温高周波計測システムにて、連携研究者と協力して、20 GHzまでの範囲で、微小Josephson接合列での電流誘引の周波数・照射パワー依存性を調べ、電流誘引過程の物理的なプロセスについての知見を得る。以上の結果をもとに、高周波電磁場による電流誘引機構の理論的なモデルを構築し、受信側のCooper対トンネルと電磁場との結合過程を明らかにする。 さらに、電磁波を媒体としたトンネル電流の非局所相関という物理過程を実証するために、ソース側の接合列からの高周波放出を実証する必要があり、そのために試作したオンチップ・ディテクタの機能を調査し、接合列から放射される電磁波の検出を行う。その結果に基づいて、Coulomb閉塞の閾電圧近辺での電磁波の放出過程の理論的なモデルを立て、送信側のCooper対トンネルと電磁場との結合過程を明らかにする。 単一接合あるいは接合列の電流電圧特性に現れる定電流構造については、これまでの研究で、その起源は環境インピーダンス制御を行っているSQUID列リードであることが明らかになった。しかし、当初想定していた、SQUIDの有限電圧での交流Josephson効果に伴う現象であるとの考えには無理があることも明らかになってきた。来年度は、アプローチを変え、SQUID列の示す電流ピークでの伝導プロセスを小規模の素子について明らかにし、その知見をもとに定電流構造の機構に迫る。中央電極に高インピーダンスの電圧リードを持つ2重接合素子を作製し、電流ピーク近辺のバイアスでの各接合についての電圧分布を調べる。
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Research Products
(10 results)