2013 Fiscal Year Annual Research Report
高速・高精度・広時間域スピンダイナミクスイメージング計測装置の開発と応用
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24340070
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡邉 紳一 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (10376535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高速スピン制御 / テラヘルツ波 / ファイバーレーザ |
Research Abstract |
本研究課題は、磁気デバイスのテラヘルツ光パルスによるピコ秒スピン制御を目指し、高速・高精度・広時間域スピンダイナミクスイメージング計測装置を開発しその実現に取り組むものである。具体的には、ピコ秒で振動するテラヘルツ瞬時磁場をポンプ源として用い、その後のスピン挙動について近赤外光あるいはテラヘルツ光をプローブに用いて時空間分解観測・評価し、ピコ秒高速スピンスイッチの実現を目指すものである。 平成25年度は、前年度に開発した磁化イメージング装置を用いて磁性体薄膜マイクロディスクの磁気光学イメージング計測を行った。磁気光学イメージング計測用の光源としては、パルス幅90 fs、繰り返し周波数80 MHzのTi:Sapphireレーザーの第二高調波(波長400 nm)を用いた。パルスレーザー光源を試料に照射したときの、磁化の存在に起因するわずかな磁気カー回転を計測できるようにした結果、試料内部の磁気渦構造を明瞭に観察することに成功した。さらに静磁場を印加した時に渦中心が移動する様子も明瞭に確認することができた。以上の結果は、今後の動的な磁気渦イメージングに向けて重要な基盤技術となるものである。 また、平成25年度はカナダのAdvanced Laser Light Source(ALLS)との共同研究により高ピーク強度を持つテラヘルツ電磁波パルスをパーマロイ磁気マイクロディスクに照射する実験も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の申請書に記載した研究計画において、平成25年度以降は、平成24年度に開発した装置を使って実際に磁気材料の計測を開始させることを記述した。実際、研究計画に記載した通り、パーマロイ磁気マイクロディスク内の磁気渦スピンダイナミクスの研究に大きく進展がみられており、その意味で概ね順調に進展していると考えてよい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度は、この二年間で積み上げてきた計測技術を総合し、当初の目標であった「ピコ秒で振動するテラヘルツ瞬時磁場をポンプ源として用い、その後のスピン挙動について時空間分解観測・評価する」技術を完成させる。 平成25年度の結果の知見として、高ピーク強度テラヘルツ電磁波印加によってサンプルの磁気渦構造に何らかの変化があらわれることが分かった。今後は、カナダのAdvanced Laser Light Source(ALLS)において行った実験結果の解析を進めるとともに、ディスク直径など条件の異なるパーマロイ磁気マイクロディスクを新たに作製し、テラヘルツパルス照射実験の追試を行う。解析と追試を通して「テラヘルツ光磁場によるスピン反転」が実際に実現しているのかの解釈を進め、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究室既存のフェムト秒レーザー再生増幅器の修理費用として見込んだ予算につき、代替のレーザーを借りることでその支出が不要となったため。 代替レーザーの借用により、当初予定していたレーザーの修理費用が不要となり且つレーザー出力強度が安定したため、実験環境としては大変使いやすいものになった。しかしながら、レーザーパワーは半分程度に小さくなってしまった。平成26年度は次年度使用額を使用し、小さいレーザーパワーを効率よく利用するための光学部品を購入し、当該課題の達成を目指す。
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