Research Abstract |
本研究では,「中-高速すべりにおける摩擦化学反応による物質変化に起因した断層強度弱化の機構」を解明することを目的とした研究を行う.特に,近年その重要性が指摘されている,珪質断層におけるシリカ-水系の摩擦化学反応に起因した断層強度弱化の現象をとりあげる.本年度は,交付申請書に記載の「(1)珪質岩石の中-高速摩擦特性の解明+摩擦生成物質のレオロジー性質の解明」について研究をすすめるために,付加体の放散虫起源のチャート,珪質泥岩,珪質軟泥などについて回転式摩擦せん断試験機を用いた摩擦実験を行った. コスタリカ沖で10DPのEXP334により採取された粘土鉱物を含む堆積物(siltyclay, Unit I)および,珪質および炭酸塩質の生物起源堆積物からなる軟泥(siliceous to calcareous ooze, Unit II)について,含水条件における摩擦の性質を調べ,摩擦強度とその速度依存性を検討した結果,粘土鉱物を含む堆積物と珪質物質を含む生物起源堆積物との間で,摩擦特性が大きく異なることが明らかになった. 粘土鉱物を含むUnitIの堆積物はおよそ0.2以下の非常に小さい摩擦係数を示すのに対し,生物起源堆積物からなる軟泥は,同様の条件で0.75程度と高い摩擦係数の値を示す.摩擦の速度依存性においてもこれら二種類の試料の示す摩擦特性は顕著に異なることが明らかになった.粘土鉱物を含む堆積物試料の定常摩擦は,実験した速度範囲において常に正の速度依存性を示すのに対して,生物起源堆積物の摩擦は顕著な負の速度依存性を示す.一方,高速すべり条件での摩擦実験の結果,珪質物質を含む堆積物は,含水条件において30mm/sといった,比較的低速のすべり速度においておおきな摩擦強度弱化を示すことが明らかになった.XRD解析によると,試料中には,非晶質シリカが含まれる.今後,弱化の機構を詳細に調べる予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載の大項目について,当初の計画通り順調に進展しており,珪質の生物源堆積物を含む沈み込み帯物質の含水,中-高速すべり条件下での摩擦特性が明らかになりつつある.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に購入した物品納品金額が,交付申請書作成当初の見積額からの値引きをうけたことにより,次年度に繰り越して使用する助成金が生じた.次年度はこの助成金と研究費を合わせ,今年度設置したシリンジポンプシステムを利用した間隙水圧制御システムの調整をすすめる.また,実験用の消耗品費,調査や研究発表のための旅費として研究費を使用する.
|