2013 Fiscal Year Annual Research Report
中―高速域における断層の摩擦化学反応過程と断層強度弱化の機構解明
Project/Area Number |
24340104
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 昭人 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90324607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 亮 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324609)
下林 典正 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70235688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地震現象 / 断層 / 摩擦 |
Research Abstract |
実績概要 本研究では,「中―高速すべりにおける摩擦化学反応による物質変化に起因した断層強度弱化の機構」を解明することを目的とした研究を行う.特に,近年その重要性が指摘されている,珪質断層におけるシリカ―水系の摩擦化学反応に起因した断層強度弱化の現象をとりあげる.本年度は特に,交付申請書に記載の以下の二つの項目について研究をおこなった. (1)珪質岩石の中―高速摩擦特性の解明+摩擦生成物質のレオロジー性質の解明 (2) 摩擦試料表面や摩擦生成物の結晶学的分析による物質状態変化の過程解明 上記の(1)については,本年度は非晶質シリカ粉末と方解石粉末の混合ガウジを用いることで天然の断層を模擬し,中―高速摩擦実験をおこなった.垂直応力5 MPa,含水条件下において0.28 mm/sのすべり速度でおこなった実験において得られた摩擦挙動は,天然の珪質生物起源堆積物中の断層が示す摩擦挙動とほぼ同様の挙動となることが確認された.(2)については,摩擦発熱による温度変化に起因した摩擦生成物の結晶性変化を明らかするために,多目的X線回折装置を利用して室温から1200℃までの加熱同時測定実験をおこなった.この静的加熱実験の結果に基づいて,摩擦生成物の温度上昇と強度弱化過程との関連性に関する解析をすすめる予定である.本年度はまた,Hayashi and Tsutsumi (2010)で記載した,珪質岩石の摩擦面上に形成されるロッド状ナノサイズ摩耗物質(wear roll)の内部構造を明らかにするために,集束イオンビーム加工観察(FIB)装置を利用してナノローラーの断面を切り出し,TEM下で観察することを試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した大項目について,当初の計画通りおおむね順調に進展しており,珪質断層物質の含水.中―高速すべり条件における摩擦生成物の物質変化の詳細と,摩擦特性が明らかになりつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目について研究をすすめる. (1)「シリカー水」系摩擦化学反応の解明するため,SEM,TEMを用いることで摩擦試料表面や摩擦生成物の形態的な特徴を,さまざまな実験段階において高倍率で観察し,摩擦面における物質状態変化の過程を明らかにする. (2)多目的X線回折装置を利用した解析により,温度変化に伴って,摩擦生成物質の結晶性がどのように変化するかといった動的構造変化をリアルタイムで観察することを試みる. (3)ロッド状ナノサイズ摩耗物質の内部構造を明らかにするために,集束イオンビーム加工観察(FIB)装置を利用してナノローラーの断面を切り出し, TEM下で観察することを試みる. (4)粘土鉱物の膨潤性の摩擦特性への影響評価の目的で,珪質泥岩中の,粘土鉱物の膨潤性が摩擦の性質に及ぼす影響を定量的に評価するために,TEMを用いた実験試料観察によって,イライト/スメクタイト混合相の膨潤性を実測することを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度計画していた,摩擦面近傍への間隙流体圧測定センサー設置システム構築に時間を要したことから,繰り越して使用する助成金が生じた. 次年度は,この助成金(次年度使用額)を研究費と合わせることで,間隙流体存在下における圧力測定用の試料アセンブリを完成させる.また,実験用の消耗品費,天然の珪質物質調査の費用や,研究発表のための旅費として研究費を使用する.
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Research Products
(5 results)