2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24350014
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井村 考平 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80342632)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光励起状態 / ナノ粒子 / 時空間制御 / 波動関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ナノ粒子集合体に誘起される光励起状態の空間構造の動的制御に取り組み,一般性の高い波動関数の時空間制御法を確立することを目標にしている。本年度は,これまでに開発してきた時間分解近接場分光手法の高度化とそれを用いた金ナノロッドプラズモン波動関数の動的可視化を行った。また,自己集合を用いた金ナノ粒子配列の作製と光学特性の解明を行った。さらに,電子線リソグラフィーを用いて作製した金ナノ粒子配列の近接場分光特性とファーフィールド分光特性の相関を究明した。以下にそれぞれの成果の概要を述べる。 時間分解分光手法の高度化では,測定系の改良により測定時間の短縮を実現した。これによりプラズモン位相緩和の空間マッピングの測定が可能となった。金ナノロッドに励起されるプラズモンの動的可視化を行った結果,単一のモードを励起する場合,プラズモンの位相緩和の分布はロッドの位置によらず一定であることが明らかとなった。 自己集合を用いた金ナノ粒子の配列制御とその光特性の究明では,まず配列制御テンプレートの種類を変化させることおよびテンプレートを除去法を開発した。また,配列の顕微分光測定を行い可視から近赤外に複数のプラズモンン共鳴を示すことを明らかにした。これらの分光特性を電磁気学計算により定性的に再現することに成功し,その起源を解明した。さらにそのラマン活性の評価を行った。 電子線リソグラフィーを用いて作製した金ナノ粒子配列の分光研究では,配列構造の散乱スペクトルに複数のプラズモン共鳴が存在することが明らかとなった。これらの共鳴構造は,電磁気学計算の結果と一致する。同一の集合体において近接場消衰スペクトル測定を行い,近接場スペクトルはファーフィールドスペクトルの微分波形と概ね一致することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解近接場分光装置の高度化を実現し波動関数の動的空間構造を高精度に可視化することが可能となった。この装置により多様なナノ構造の励起状態の可視化が可能である。測定手法および試料作製も概ね予定通りに進展している。また,研究成果は論文として報告している。以上の通り,研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
単一モードを励起した場合にプラズモンの位相緩和の時空間分布がロッドの位置によらず変化しないことが明らかとなった。複数のモードが同時に励起される場合,モードごとに,特徴的な空間分布を示すこと,また位相緩和時間が変化することを考慮するすると,ロッドの位置により観測されるダイナミクスが変化すると考えられる。これまでのテスト計測からこれを示唆する結果が得られている。これを裏付けることができれば,研究の大きな目標である時空間のコヒーレント制御が可能となる。今年度は,波動関数の時空間のコヒーレント制御実現に向けて研究を推進する計画である。
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Causes of Carryover |
特注の光学部品の購入を検討していたが,保有する類似製品に仕様上の問題があることが発覚しその原因を究明するのに時間を要したため年度内の購入を見送った。この物品およびそれに付随する光学部品の購入予定価格が次年度への繰り越した予算の大半である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記特注を検討していた光学部品は,当初予定していた業者以外から類似品を調達する方法を検討中である。測定に利用するミラーやフィルターなどの光学部品は,埃やレーザーによる損傷を受けやすいため.定期的に交換する必要がある。これら光学部品の購入を計画している。また,本課題は最終年度であり,複数の学会での発表や論文発表を予定している。それらの経費として今年度予算を執行する計画である。
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