2014 Fiscal Year Annual Research Report
環状ジヌクレオチドの生理活性探索・免疫機能発現機構の解明と新規免疫賦活剤の開発
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24350087
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
早川 芳宏 愛知工業大学, 工学部, 教授 (50022702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 美智男 椙山女学園大学, 看護学部, 教授 (20111841)
兵藤 守 愛知工業大学, 工学部, 講師 (30548186)
西村 聡子 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (90609322)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環状ジヌクレオチド / 免疫 / バイオフィルム / がん免疫療法 / STING |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に得た主な研究成果を以下に示す。 ①c-di-GMPのレセプターとして我々が本研究の一環として共同研究で発見したSTINGは、細胞質に流れ込んだDNAを検知し、自然免疫を活性化させてインターフェロンを誘導することをこれまでの研究で明らかにしていたが、昨年度は、STINGの新しい機能として実験的自己免疫性脳骨髄炎を減弱させる効果をもつことを明らかにした(J. Immunology, 2014, 192, 5571-5578)。実験的自己免疫性脳骨髄炎は多発性硬化症のモデルとして実験室で使用されている疾病モデルであり、これを減弱させるということはc-di-GMPによる STINGへの活性化が多発性硬化症の治療法として使用できる可能性を示しただけでなく、様々な自己免疫性疾患に対する治療法として有望な成果であると言える。 ②また、マウスモデルにおいてc-di-GMPを用いる免疫活性化により様々な疾病、具体的には百日咳(PLoS One, 2014, 9, e109778)、肺転移癌(Cancer Immunology Research, 2014, 2, 901-910)および腹腔癌(J. Control. Release, 2014, 192, 5571-5578)の治療に成功した。中でもJ. Control. Releaseに発表した腹腔癌の治療においては、世界で初めてDDSとc-di-GMP免疫活性化を複合化した癌治療法で投与量を大きく減少させつつ、強力ながん細胞増殖抑制効果を発揮させることに成功した。 ③このほかにも、近年細胞質DNAセンシングの核心物質である2',3'-cGAMPの合成法、さらにc-di-GMPの誘導体の合成法を独自に開発した。これによって、今後の環状ジヌクレオチドの医学的、薬学的、生物学的研究の発展がさらに進むものと期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主目的の一つであるc-di-GMPと、そのレセプターである、免疫誘起機能を持つタンパク質STINGとの複合体を単離し、その結合様式を分子レベルで解析する事は意外と難しく、実現に至っていない点を除けば、研究の進行状況は順調である。 とくに新規環状ジヌクレオチドの発見と生理活性探索研究においては、所期に予想した以上の成果が得られている。なかでも米国カリフォルニア大学バークレー校R.E.Vanceとの共同研究による、哺乳動物によって生合成される2',3'-c-GAMPの発見は大きな発見である。その理由は、この新規環状ジヌクレオチドはこれまで発見された細菌によって生合成されるいくつかの環状ジヌクレオチドに比べて、哺乳動物中のSTINGと結合し易く、その結果免疫誘起機能も高いため、医薬品としてのポテンシャリティーが高いからである。 その他、米国エール大学のR.R.Breakerとの共同研究でc-di-GMPがリボスイッチの働きを持つ事も発見し、環状ジヌクレオチドの今後の新しい研究課題の扉を開いた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、本年度も環状ジヌクレオチドの合成(独自に行う)をベースに、同化合物の自然免疫活性化機能探索、同機能発現メカニズムの解明および環状ジヌクレオチドを用いる疾病の治療を達成する(いずれも独自にあるいは国内外の共同研究によって行う)。 具体的には、未だ達成されたいない本研究の主目的の一つであるc-di-GMPと、そのレセプターである、免疫誘起機能を持つタンパク質STINGとの複合体単離について、単離に必要な化合物の合成はほぼ達成できているので、今後はそれを用いて同複合体の単離し、その結合様式の分子レベルでの解析を最優先で行う。 また、上記2',3'-c-GAMP生理活性、とくに哺乳動物における免疫機能、できればガンに対する免疫機能を探索する。また、その機能発現機構を解明したい。 これらが実現できたら、その結果を基に、本研究の最終目的である環状ジヌクレオチドをリード化合物とした医薬品の開発を、企業との共同研究で進めたい(現在某企業と共同研究を始めつつある)。 その他、c-di-GMPのリボスイッチとしての働きについての研究も、積極的に行いたい。
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Causes of Carryover |
昨年度、米国の共同研究者との研究打ち合わせのために年度末(2015年1月頃)渡米する予定で、国外出張旅費として約70万円を計上していたが、その出張が、先方の都合で叶わず、同旅費の大半が未使用、本年度繰り越しと成ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は本研究の最終年度に当たるため、そのとりまとめと、今後の研究打ち合わせのため、米国への比較的長期にわたる出張を予定している。前年度繰り越した助成金をこれに充てるつもりである。
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[Journal Article] Activation of the Stimulator of Interferon Genes (STING) adaptor attenuates experimental autoimmune encephalitis.2014
Author(s)
Henrique Lemos, Lei Huang, Phillip R. Chandler, Eslam Mohamed, Guilherme R. Souza, Lingqian Li, Gabriela Pacholczyk, Glen N. Barber, Yoshihiro Hayakawa, David H. Munn, and Andrew L. Mellor
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Journal Title
J. Immunology
Volume: 192
Pages: 5571–5578
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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