2014 Fiscal Year Annual Research Report
イオン注入による欠陥制御を利用した圧縮歪みシリコンの実現と高正孔移動度素子応用
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24360001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇佐美 徳隆 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20262107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有元 圭介 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30345699)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90409376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歪みシリコン / ヘテロ構造 / 分子線エピタキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シリコン基板へのアルゴンイオン注入により生じる残留欠陥を転位源として利用することで、高品質な歪み緩和シリコンカーボン薄膜を作製することと、さらに歪み緩和したシリコンカーボンを疑似基板として高い正孔移動度を示す圧縮歪みシリコン薄膜の実現を目指して研究を実施した。ジシランとトリメチルシランを原料とするガスソース線分子線エピタキシー法により、イオン注入と結晶性回復のための熱処理を施したシリコン基板上に、膜厚が20-200nmのシリコンカーボン薄膜と、膜厚が20nmのシリコン薄膜を連続成長させた。参照用試料として、イオン注入を施さない場合の試料も作製した。X線回折逆格子空間マッピングにより構造評価を行った結果、シリコンカーボン層の膜厚が110nmの試料において、イオン注入無しの試料では、シリコンカーボン層が完全歪みで成長したのに対し、イオン注入有りの試料では、歪みが完全に緩和していることが明らかとなった。これは、イオン注入により生じる欠陥がシリコンカーボン層の歪み緩和を促進させることを初めて示した結果である。また、カーボン組成が、歪み緩和した試料で増加する傾向にあることが明らかとなった。この結果は、シリコンカーボン層が歪み緩和するとカーボン原子が置換格子位置に取り込まれやすくなることを示唆している。これらの試料について表面Si層の歪み量を調べたところ、イオン注入有りの試料では、0.8%の面内圧縮歪みが導入されていることが分かった。このような大きな面内圧縮歪みの導入により、正孔移動度が増大することを示唆する結果も得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン注入による欠陥制御が圧縮歪みシリコン薄膜の形成に有用であることを明確に示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、歪みの熱的安定性や、イオン注入条件の影響についての詳細な調査を実施するとともに、電界効果型トランジスタの作製と特性評価といった応用研究へと展開していく。
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Causes of Carryover |
これまでの研究により、シリコンへのイオン注入を行った基板上へのシリコンカーボン膜の成長により、歪み緩和が促進され、疑似基板として圧縮歪みシリコン薄膜の成長に有用であることが実証された。この知見を得て、シリコンカーボン膜の高品質化研究、歪みシリコン膜の特性評価やデバイス応用についての研究を引き続き実施するべきと判断したため未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高品質薄膜の成長実験、圧縮歪みシリコン薄膜の特性評価やデバイス応用についての研究、外部発表や今後の展開に向けての調査などに充当する。
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Research Products
(6 results)