2014 Fiscal Year Annual Research Report
長周期地震動に対する複合制震ダンパーを用いた免震建物の構造設計法および耐震補強法
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24360227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 聖晃 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00243121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉富 信太 立命館大学, 理工学部, 准教授 (30432363)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 免震構造 / 長周期地震動 / 複合制震ダンパー / 耐震補強 / 免震制震ハイブリッド構造 / 最適設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,以下の項目について研究を実施した. Ⅰ.免震制震ハイブリッド構造についての研究:(1)基礎免震構造物の免震層直下に,慣性接続要素を介して同調質量ダンパーを設置した免震建物について,同調質量ダンパーの質量比(建物質量に対する比)や慣性接続要素の慣性質量の大きさなどをパラメタとして,一般的な基礎免震構造の場合に対する,免震層最大変位と建物頂部の最大加速度の低減効果とその限界を明らかにした.(2)(1)で取り扱った同調質量ダンパー付き基礎免震建物の縮小模型を作成し,正弦波スイープ加振および振幅と時間刻みを調整した記録地震波に対する加振を実施し,(1)で明らかにした応答低減効果が得られることを確認するとともに,(1)で用いたシミュレーション手法の精度を検証した.(3)オイルダンパーや慣性接続要素を用いた複合制振システムを設置した免震建物について,地震時応答低減特性に関する数値解析に基づく検討を実施した.また,多層連結制振建物の連結制振ダンパーの地震時応答低減のための最適設計法を提案した. Ⅱ.多段免震構造についての研究:(4)基礎免震構造物の上部構造物の中間層に第二の免震層を設置した多段免震建物について,建物が建つ地盤の剛性や減衰と,免震装置の剛性や減衰の値に,設計時の想定値からのばらつきが生じる場合に,基礎免震層の最大変位と建物頂部の加速度が最も大きくなるようなばらつきの組み合わせを見出す方法を構築した.また,ばらつきの方向(値が想定値よりも大きくなるのか小さくなるのか)と,応答の変化の方向(ばらつきのないときよりも応答が大きくなるのか小さくなるのか)の関係を,多段免震構造における卓越モードと,入力地震動の応答スペクトルを用いて説明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の3本柱のうち,(1)複合制震ダンパーを用いた高性能免震構造の特性解明と構造設計法の提案,および(2)長周期地震動を受ける高層免震建物の耐震補強方法の提案,については,おおむね目標を達成し,成果の論文化を進めているが,(3)慣性接続要素を用いた仮想質量機構付き振動台実験システムについては,一部の実験を予定した期間内に完了できなかったため,「概ね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
既存免震建物の高性能化に,本研究課題で提案・検証した方法(複合制震ダンパーの設置あるいは多段免震構造化)を適用するには,既往の確立された技術(一般的な建物へのダンパーの付加や,一般的な建物の免震構造化)だけでは十分ではなく,免震層へのダンパーの増設,建物を使いながらの免震装置の交換,免震建物の上部構造物への第2の免震層の設置など,これまでに実施されたことのない技術を,実現可能なレベルにまで引き上げる必要がある.今後は,構造設計の実務者とも協議しながら,本研究課題の成果を実建物の高性能化に実際に適用することを目指し,理論的および実証的研究を継続的に行ってゆきたい.
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Causes of Carryover |
平成26年度には,(1)既存の小型振動台を用いた,慣性接続要素を介して同調質量ダンパーを免震層に設置した免震構造建物モデルの振動実験と,(2)小型振動台のストロークを拡大するための,慣性接続要素による仮想質量機構付き振動台実験システムを用いた,同モデルに対する実験を実施する予定としていたが,(1)の実験結果のシミュレーションにおいて,実験結果との乖離が生じたため,シミュレーションモデルの再構成が必要となった(シミュレーションと実験結果の乖離の原因は,慣性接続要素の摩擦と判明).
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の(2)の実験を平成27年度に実施するため,未使用額は,慣性接続要素と周辺架構の作成にあてる.また,研究発表のための旅費と研究成果の出版費にも一部をあてる.
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