Research Abstract |
本研究の目的は,竜巻等の突風の原子力発電施設など,被害が発生した際に周辺地域に甚大な悪影響を与える重要施設の竜巻対策ガイドラインを提案することであり,初年度の平成24年度には以下の5項目についての研究を実施した。 (1)諸外国における竜巻による原子力発電施設等の被害,事故の実態調査 2011年4月の米国バージニア州の竜巻,アラバマ州の竜巻で,2つの原子力発電所で原子炉計5基がシャットダウンする事故が連発した。日本の原子力発電施設内でも竜巻による被害が発生している可能性があるため,原子力発電施設付近で発生した竜巻事例の有無やその状況について諸外国を含めて調査した。 (2)建築物やパイプライン等の竜巻被害調査 原子力発電施設に限定せず,建築物や送配電線,鉄道などライン状構造物や施設の竜巻被害の実態を調査し,最新の竜巻被害データベースを構築した。また,竜巻被害に関しては現地を訪れ,建築物等の被害の実態,送配電施設の被害の実態を現地調査した。 (3)竜巻リスクモデル構築のための気象学的な環境場の調査 日本で発生する竜巻とその環境場は,気象庁等で資料が収集されているため,それを利用して竜巻発生前後のレーダーエコーの分析による積乱雲等の発達状況,スーパーセルやメソサイクロンの状況等々を含め,詳細な環境場の解析を行った。 (4)原子力発電施設等への竜巻による空気力学的影響要因の検討 竜巻状旋回流中での気流性状に関して,竜巻シミュレータを用いて,詳細な検討を行った。また,今後の実験のために,移動型竜巻シミュレータで発生させる竜巻状旋回流のコアを拡大させる改良を行った。 (5)諸外国における原子力施設等の高危険度施設への竜巻対策に関する調査 諸外国の原子力施設等に対する竜巻対策や設計ガイドラインについて,竜巻対策,対応事例を調査した。USNRC(2007)などのガイドラインについても調査するとともに,データベースを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である,原子力発電施設などの重要施設の竜巻対策ガイドラインを提案するために,初年度であった平成24年度の研究計画では5項目を実施することになっていたが,その全てにおいて,計画書どおりの成果を得られており,おおむね順調に進展していると評価できる。さらに平成25年度に実施する計画の4項目の研究項目の実施準備まで取り組むことができており,そういう意味では当初の計画以上であるとも評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究の実施については,原子力発電施設等の高危険度施設周辺の飛散物ポテンシャルの調査は研究分担者である吉田昭仁が主担当となる。また,研究分担者である松井正宏が原子力発電施設等への竜巻による空気力学的影響要因の検討を主に移動効果を考慮した竜巻による風圧力性状の観点から検討する。移動効果を考慮した竜巻の設計用工学モデルの検討は分担者である小林文明が担当し,送配電施設などライン状構造物への海岸線から2km地帯での竜巻被害確率の検討は研究代表者である田村幸雄が行う。また,e-mailによる研究進捗状況の打合せを密に行うとともに,face-to-faceの打合せも月に1回程度実施し,有機的な連携を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年4月16日の米国バージニア州の竜巻および2週間後の4月28日の米国アラバマ州の竜巻で,2つの原子力発電所の送電設備が被害を受け,外部電源が遮断され,原子炉計5基がシャットダウンする事故が連発している。 現地の研究者でないと知りえない情報なども非常に多いため,平成25年度には米国研究者に原子力発電所の竜巻被害についての調査を依頼することにしており,その調査費用に充てる予定である。
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