2013 Fiscal Year Annual Research Report
低温条件下における超臨界技術活用による新奇グラフェン素材の開発
Project/Area Number |
24360305
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
孔 昌一 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334637)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 太 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (30262794)
佐古 猛 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20324329)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | グラファイト / 酸化グラフェン / 熱処理 / 超臨界流体 / グラフェン / 還元型酸化グラフェン / 還元処理 / ナノ炭素材料 |
Research Abstract |
酸化グラフェンを熱的・化学的処理することによりグラフェンを創製する手法は、グラフェンの大量生産に適している。そのためこの方法は世界中から注目されている。しかし、その品質は未だに高くなく、高品質なグラフェンの創製技術の開発が求められている。そこで本年度もグラフェンを従来よりも低温でかつ環境に優しい高品質なグラフェン創製が可能となる技術開発に注力した。 黒鉛を酸化剤の酸化により酸化グラファイト、そして撹拌・超音波処理などにより酸化グラフェンを合成した。続いて、黒鉛酸化の最適化および酸化グラフェン還元の低温化技術の開発を行った。結果として、原料である黒鉛と酸化剤との比(重量に)としては1:2の方が一番よい結果となった。超臨界流体としてはエタノールが適切であることが還元処理実験から確認できた。現段階(超臨界流体のみで、添加剤など一切ない)では、超臨界処理温度(~500℃)は高ければ高いほど高品質なグラフェンが得られた。本研究では、その最適処理温度を現有装置の限界である500℃までとした。処理圧力は得られたグラフェン品質に大きな影響は認められなかった。本研究で開発した超臨界流体による還元処理技術では、酸化グラフェンでは酸素の組成が35-40%であったが、還元処理後には、その組成は10%まで下がった。また、500℃では、水素の添加は酸化グラフェンの還元に効果的ではなかったことが分かった(温度がまだ低いから)。また、メタノールに水素の添加は少し有効であったが、エタノールには殆ど効果が認められなかった。超臨界エタノールによる還元処理を行う際に、還元剤としては、キノン類の添加により、シート抵抗の大きな低下に寄与していることが初めて確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である低温条件下における超臨界技術活用による新奇グラフェン素材の開発であり、酸化剤の添加量、製膜法、各種超臨界流体、活性・不活性ガスの導入、還元処理の温度と圧力、各種還元剤の添加などを詳細に検討することにより、本研究では、高温高圧流体を用いて酸化グラフェンを処理することにより低温(500℃)でグラフェンの創製技術の開発に成功した。この技術では、ヒドラジンなどの有毒な還元剤や高温(1000℃)処理が必要なく、 500℃以下で還元型酸化グラフェンの創製が可能となる。今良い成果が得られており、研究は極めて順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、グラフェンの創製処理温度の低温化(300℃以下)を目指す。引き続きエタノールを含む各種超臨界流体の還元効果を調べる。また、添加剤の導入も検討する。 また、プラズマ装置の導入により、水素プラズマ処理によるグラフェンの低温化・高品質化を目指す。更に、黒鉛を酸化せずに、プラズマ処理、超臨界(エタノール)処理などにより黒鉛から直接高品質なグラフェンの量産技術の開発を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
限られた研究費を有効に研究開発に用い、現有の装置設備の能力を最大限に活かすため、今年度は超臨界処理に絞り、黒鉛からグラフェンの創製技術の開発を行い、特に、超臨界処理温度および超臨界処理する際に還元剤の導入に関する詳細な研究を行った。この結果を踏まえた上で、新たな装置設備を次年度に購入することにした。 プラズマによる処理は、電子レベルでは温度が一万℃近くまで上がると考えられるが、基板などバルク的には温度がそれほど上がらないので、非熱的処理とも言われているプラズマ処理は、低温化に有効とされている。特に最近では大気圧プラズマ処理が注目されている。そこで、本研究ではグラフェン創製する際にその処理温度をさらなる低温化を目指し、プラズマ水素還元処理装置の導入を計画している。最終的には、超臨界処理およびプラズマ処理を高度に利用することにより、高品質なグラフェンの低温化技術の開発を行う。
|