ジベレリン起源物質の構造および活性制御機構の解明

2012 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 24380060
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 中嶋 正敏 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (50237278)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 川出 洋 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20291916)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2015-03-31
• Keywords: ヒメツリガネゴケ / カウレン / クロロネマ / カウロネマ / 受容体 / ジベレリン / P450 / DELLA

Research Abstract

本研究はコケ植物の分化制御に関わるent-カウレン代謝物Xの構造解明を目的として、3つのアプローチを展開している。1、カウレン生合成能を欠いたコケ変異株を用いて、その応答状況を指標として生合成前駆体などX関連物質の検出を実施している。すなわち、ent-カウレン酸投与に伴い分化阻害状態から回復しつつある変異株を収穫し、破砕抽出・HPLC等の分画操作を経て得られた精製画分の中から変異株の分化過程を回復させる成分を探索している。また、14C標識ent-カウレン酸を変異体に投与し、精製した画分をTLCおよびイメージングアナライザーに供して、放射活性に基づく代謝物の検出も展開している。2、物質Xの生合成過程の中にP450酵素による触媒反応が含まれる可能性があるため、コケ・ゲノム中にコードされる全P450候補遺伝子を対象として、ent-カウレンあるいはent-カウレン酸の投与に応答して発現変動を示す遺伝子群の絞り込みを行った。他との相同性を勘案して解析の順位づけを行い、優先度の高いものから順次、異種発現系を用いて翻訳産物を調製している。そのうち幾つかはent-カウレン等を基質とする代謝能を持つか調べているが、目的に合致する分子種特定までは至っていない。残る候補の試験を継続しつつ、分化効率が光波長とも深く関与するとの情報をふまえて、当該観点を加味した新しい順位づけも検討している。3、コケにおける物質Xの初期信号伝達機構が高等植物のジベレリンに関する機構と類似すると想定し、コケに存在する受容体様・DELLA因子様タンパク質の調製準備を進めている。一部はすでに酵母2-ハイブリッド系の実施に向けてベクター挿入を完了した。
精製度の異なる植物抽出物にジベレリンを混入したモデル活性画分を調製して、高等植物のジベレリン受容体・DELLA因子を存在させた2-ハイブリッド酵母によるジベレリン検出が可能となる前処理条件を調べている。得られた情報を反映させて、コケの受容体様・DELLA様両タンパク質を存在させた酵母を用いたX関連物質の検出準備を急ぐ。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究は代表者と分担者の双方が緊密に連絡を取りながら遂行している。3つのアプローチの各々はほほ当初の予定に沿う形に整ってきており、特に、生物検定系を用いた物質X追跡系の整備や、コケP450候補遺伝子における解析の順位づけなど研究推進上の骨格を為す部分の整備は順調に進行している。従って、大幅な路線変更等は予定していない。

Strategy for Future Research Activity

いずれのアプローチとも前年度に展開してきた準備期間を経て2013年度に進展が見込めるものとなっており、これまで進めてきた3アプローチによる遂行体制を堅持する。ただし、3つめに掲げている酵母を用いて実施する手法はもとの計画どおり、2013年度内に進展がみられなければその時点で打ち切りとし、残る2つのアプローチに人的勢力を集中させて望むつもりである。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

当初計画よりもより短期間・より小規模で本試験実施のための条件を見いだせたことに伴い、消耗品および試薬等購入に予定していた経費執行規模を縮小した状態での決算となった。これについては、2013年度の消耗品費への算入を予定する。