2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24380060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 正敏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (50237278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川出 洋 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20291916)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒメツリガネゴケ / ジベレリン / ent-カウレン酸 / 生理活性 / 原糸体 |
Outline of Annual Research Achievements |
コケ植物の分化制御に関わるカウレン代謝物質Xの構造解明を目的として、前年度まで展開していた3アプローチを2つに絞り、人的勢力を傾注して展開した。 (1)カウレン合成能を欠くコケ変異株を用いて、その応答を指標として生理活性を有するent-カウレン酸投与後の代謝物を追跡した。その結果、TLCにおける移動度、逆相系カラムを用いたHPLCの保持時間から判断して、ent-カウレン酸よりも極性の高い活性代謝物を複数検出した。そこで、まず主要な活性画分に絞り、LC/MSを用いて活性と連動する物質をイオンピークとして検出できるか精査した。その結果、1つの画分からこの条件に合致するピークを検出した。他の活性画分についても同様の解析を行うためには、時間あるいは生理条件においてさらに代謝を促進させること、あるいは、物質の蓄積量を増やす必要があると考え、それに向けたent-カウレン酸投与条件・環境を整備している。 (2)発現解析を通じて絞り込んだP450候補遺伝子の解析を継続した。前年度に続き、異種発現系を用いて翻訳産物の調製を行い、可能なものはP450差スペクトル解析を測定した。また、これらリコンビナントタンパク質を用いて、基質ent-カウレン酸に対する酵素活性の進行を調べているが陽性反応は確認されていない。活性が維持された状態でリコンビナントタンパク質が調製されたか判然としないため、発現条件・環境を変えて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者と分担者は常時緊密に連携をとっている。達成度を高める上で、代表者が主に実施項目(1)を、分担者が主に項目(2)を担当する現研究体制に問題はない。項目(1)では、生物検定系を用いたX関連の代謝物質候補として複数の活性物質の検出に成功した。項目(2)では、異所発現系で調製したリコンビナントタンパク質の酵素活性確認には至らない状況ながら、その困難さはある程度想定の範囲内であり、問題点クリアに向けた別アプローチを既に開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要で述べたとおり、物質Xの特定に向けて最も直接的なアプローチである項目(1)は着実に成果を挙げており、主軸に据えてこれまで以上の効率的な活性画分の蓄積体制の整備が有効と考えている。また、項目(2)から随時得られる情報もこの効率化のために活用できると期待する。項目(2)で展開してきた代謝酵素の候補遺伝子特定について、リコンビナントタンパク質の酵素活性検出系による検討は系を変えながら継続を図るが、加えて、相同組換えによる破壊株作出を順次進める。異常形質が確認された破壊株を選抜し、項目(1)で採用している評価系と、当研究グループが発表した青色光に対する応答系を併用して物質X生合成能の欠損に伴うものであるか、相補実験やLC/MSなど機器分析を用いて多角的に評価していく。
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Causes of Carryover |
外部委託する計画であった遺伝子の発現解析について、対象の植物があまり一般的ではないため、通常どおり委託した場合、信頼性高い結果が受け取れない可能性が期中に判明した。そこで、本解析に精通している他大学の研究者に協力を要請し、必要な設備と実施の裁量を持つ当該研究者との間で共同研究として進める話が最近になってようやくまとまった。従って、解析の実施が遅れたことに由来して次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同研究で用いる試薬等の消耗品費、そして、共同研究により得られることが期待される成果に基づいて2015年12月に米国ハワイ州で開催される国際学会への参加費および旅費として使用し、有効に活用したい。
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