Research Abstract |
ツキノワグマの行動生態研究の多くは,秋の食欲亢進期(飽食期)に行われており,本種の春から夏の行動生態はほとんど解明されていない。先行研究および応募者らの研究でのスナップショットでは,秋の蓄積脂肪を翌年の冬眠明け後から晩夏まで利用している可能性が示唆される。本研究では,衛星通信型の活動量センサー付GPS首輪,体内埋め込み型心電データレコーダーなどの機材を駆使し,春から夏の冬眠明け時期に着目して,野生グマの栄養・生理状態の把握によりその行動生態の解明を,性,齢級,社会的ステータスごとに試みるものである。また春から夏のツキノワグマの行動を評価することは,これまで秋の堅果結実の多寡だけでは説明できていない,本種の晩夏の人里への出没機構の解明にも光を当てることが期待できる。 平成24年度では,日光足尾山地の足尾地区において計31頭(オス12頭,メス18頭,不明1頭)のツキノワグマを学術捕獲して,内13頭にGPS首輪を,1個体にVHF首輪を装着した。日光地区では,ツキノワグマ計4個体(オス3頭,メス1頭)を捕獲して,その内3個体にGPS首輪を装着した。内4個体は,当年度から新たに導入した活動量センサー付きのイリジウム衛星通信型のGPS首輪(ドイツ・Vectronic社)であった。またすべての個体について,インピーダンス計を用いた体脂肪計測装置により体脂肪量を測ると共に採血を行い,繁殖にかかる性ホルモンの分析を行い,栄養状態と受精および妊娠のタイミングの関係の検討を開始した。同時に,日立市かみね動物園,横浜市ズーラシア動物園において,飼育ツキノワグマからの定期的採材(糞,尿)を進め,性ホルモン量の経時的変化のモニタリングも行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りにおおむね順調に進行しているが,野生個体への体内埋め込み型心電データレコーダーの装着については,当初予定していたドイツ製(Vectronic社)インプラント装置の一部機能の完成が遅れていることと,日本国内での動物への適用についての安全性の確認が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
体内埋め込み型心電データレコーダーの装着については,25年度にまずは飼育個体で臨床実験を行った後に,野1生個体への適用を計画している。また並行して,アメリカの当該研究に関する先行研究を行っている研究者(Dr.rimLaske)を日本に招き,アメリカで使用されている体内埋め込み型心電データレコーダーの適用についても検討を行う。
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