2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24380095
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80224864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木材 / バイオマス / 熱分解 / 分子機構 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
木材の細胞壁は、セルロースをヘミセルロースとリグニンからなるマトリックスがとりまく多層構造をとる。また、セルロースも均質ではなく、結晶領域と準結晶領域が存在し、前者においてもセルロース微結晶がいくつか集まった構造をもつ。したがって、本研究では、マトリックス中でのリグニンとヘミセルロースの相互作用、セルロースの不均質性の影響などについて検討を進め、成果を得てきている。本年度は、マトリックスにおけるリグニンの熱分解機構の解明研究を進展させた。また、気相でのセルロース由来の熱分解物の2次分解機構についても研究を進めた。
マトリックス中でのリグニンの熱分解機構については、γ位に水酸基を持つ非フェノール性のβ-エーテル型モデル化合物を木材などとともに用いるin situプロービング法を用いて検討することで、リグニン中間ユニットが受ける熱分解反応機構を明らかにした。すなわち、水酸基からの水素引き抜きによるラジカル連鎖反応がリグニンの低分子化が進行する350℃の温度域で進行することが判明し、この機構によりリグニンの熱分解により得られる単量体の化学構造がよく説明されることがわかった。また、側鎖水酸基間での水素結合から進行するヘテロリシス反応である環状Grob反応(側鎖の開裂による低分子化につながる)は重要ではないことも明らかになった。一方、急速加熱条件で可能となると考えられる400℃以上の温度域では環状Grob反応がむしろ優先して進行することも判明した。これらの結果は、リグニンの熱分解機構及びヘミセルロースとの相互作用の詳細が加熱速度により異なることを示唆する。
気相でのセルロース由来の生成物の2次分解については、レボグルコサンの熱分解反応が気相と液相で異なり、気相では液相よりも200℃以上高温の550℃付近から分解が始まり、選択的にフラグメンテーション反応が進行することなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木材成分の熱分解反応を調べること自体容易なことではないが、これまでの研究によりリグニン、ヘミセルロース及びセルロースの熱分解の分子機構及びこれら成分間の相互作用について着実に知見が得られてきている。また、これらの成果により、固相のみならず気相での2次分解を含め、木材の熱分解についてある程度分子レベルでのイメージができるレベルに達した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの流れの研究を着実に進めるとともに、最終年度となる平成27年度においては、多成分複合体としての木材の熱分解機構(分子機構)についての大まかな提案を行なう。
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Causes of Carryover |
実験の予定を少し変更したために、今年度使用した額が予定金額よりも少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に使用する消耗品などとして有効に使用する計画。
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