2013 Fiscal Year Annual Research Report
サルソリノールによる反芻家畜のプロラクチン分泌支配機構概念の構築
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24380149
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
橋爪 力 岩手大学, 農学部, 教授 (60124533)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サルソリノール / プロラクチン / ドーパミン / L-dopa / 日長 / 視床下部 / ヤギ / 反芻家畜 |
Research Abstract |
サルソリノール(SAL)による反芻家畜のプロラクチン(PRL)分泌支配機構を明らかにするために、本年度は主として、中枢を介したドーパミン(DA)とSALによるPRL分泌制御機構に関する実験を行った。この実験では、昨年度に引き続き、Carbidopa (Carbi)とL-dopa処理によりヤギの視床下部内DA量を高めたときのSALにより誘起されるPRL放出反応を異なる日長条件下で検討した。すなわち、雄ヤギを8時間明:16時間暗(短日)または16時間明:8時間暗(長日)の条件下で飼養し、それぞれの日長下で、CarbiとL-dopa処理後SALを投与してPRL放出反応をしらべた。長日期のPRLの平均基礎濃度は短日期に比べ高かった。SALの投与は長日期と短日期の血中PRL濃度を上昇させた。また長日期のSALによるPRLの放出反応は短日期に比べ大きかった。CarbiとL-dopa処理は長日期と短日期ともSALによるPRL放出反応を抑制した。これらの結果から、ヤギにおいて視床下部内DAが増加すると、日長に関係なくSALにより誘起されるPRL放出は抑制されることが分かった。またこの実験と並行して、TRHやスルピリド(DAアンタゴニスト)によるPRL放出反応もしらべたが、TRHによるPRL放出反応は長日及び短日期で、スルピリドによる反応は短日期で抑制されることが分かった。さらに視床下部内DA量をレセルピンにより減少させたときの、SALやTRHによるPRL放出反応を予備的にしらべた結果、PRL放出反応は増加することも示唆された。本年度はこの他、ストレスとSALによるPRL分泌反応をしらべるための先行実験として、物理的ストレスの有効な負荷方法を検討した。その結果、ヤギの四肢上端をクリップでつねる方法が物理的ストレスの実験系に応用できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は交付申請書に記載した中枢を介したDAとSALによるPRL分泌制御機構に関する実験を主として行い、一応の研究成果を得ると共に、次年度以降に行う課題も得ることができた。またストレスとSALによるPRL分泌反応をしらべる先行実験を行い、物理的ストレスの負荷方法を確立した。しかし申請書に記載した性差とSALによるPRL分泌反応差に関する実験は、供試動物の頭数が確保できず実施できなかった。SALによる反芻家畜のPRL分泌制御機構の一端が少しずつ明らかになって来ている。 以上のことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度及び本年度の実験から、視床下部内DA量を高めるとSALによるPRL放出反応が抑制されることが明らかになった。また本年度の実験からレセルピンにより視床下部内DA量を減少させるとSALによるPRL放出反応が高まることが示唆された。今後はレセルピンによる実験をさらに行うと共に、中枢のみならず末梢のDAの影響も知るために、血液脳関門を通過しないDAアンタゴニスト(ドンペリドンなど)を利用し、DAとSALによるPRL放出との関係をさらに探る。また物理的ストレスの負荷方法が確立されたので、ストレスとSALによるPRL分泌反応の関係もしらべる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度(次年度)は最終年度で、経費負担が増すことが予想されるため、本年度の直接経費を若干次年度に繰り越した。試薬、消耗品器具、実験動物飼養経費が高額なため、最終年度の研究費が十分確保できるようにした。 試薬(アイソトープ、ホルモン測定用抗体、ホルモン標準品等)、消耗品器具(ガラス器具類、ピペット、チップ、ホルモン測定用ガラスチューブ等)、実験動物飼養経費(乾草、濃厚飼料等)、実験動物(ヤギ)、学会発表旅費等に使用する。
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Research Products
(9 results)