2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物とバイオ肥料微生物を組み合わせた効率的な放射性Cs除去技術の基盤研究
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24380176
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
横山 正 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70313286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 創三 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30137898)
渡邉 泉 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30302912)
木村 園子ドロテア 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60397015)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / バイオ肥料 / 植物-微生物相互作用 / 放射性セシウム循環 / 粘土鉱物 / 放射性セシウム固定 / 放射性セシウムの可動化 / 根圏 |
Research Abstract |
福島県二本松市を中心に、放射性Csで汚染された森林-農耕地系での「除去植物とバイオ肥料微生物による除去能力加速化の実証」、「粘土鉱物に固定された放射性Csの可動化機構」、「森林-農耕地流域系での放射性Csの分布動態の解明」を行った。H25年度は、沖縄から東北地方で栽培されている全部で 56 種のアブラナ科品種に、バイオ肥料微生物を接種し二本松の圃場に移植し、微生物接種が、生育と放射性Cs吸収に与える効果を調べた。上記56品種中、土壌から植物への放射性Cs移行係数は、ちぢみみかぶれ菜が0.004と最も低く、一方、山塩菜は0.037と最も高く、9倍の違いを示した。また、微生物接種で、アブラナに属する仙台雪菜、くき立ち菜、みやこべか菜、カラシナ属する山塩菜及び、西洋アブラナに属する川流れ菜、ちぢみかぶれ菜、五月菜は値を大きく上昇させた。 さらに、有機物資材、植物生育促進菌、水分条件がCs吸収に与える効果を調査し、資材の施用は明確な傾向を示さず、一方、微生物接種は放射性Csを有意に減少あるいは増加する場合があることが分かった。 福島県二本松市東部を中心に阿武隈川およびその支流域で、河川堆積物、表層土壌、無脊椎動物、脊椎動物(両生類、爬虫類、鳥類および哺乳類)を採取し解析した結果、2012年の調査と同様に特定のホット・スポットが依然存在したが、全地点において暫減の傾向がみられた。水田生態系では特にカエル類のオタマジャクシ期に、極めて特異な高濃縮現象がみられ、また、鳥類では卵からも放射性セシウムが検出され、汚染が次世代へ継続する可能性が危惧された。一方、大型哺乳類では経年的な減少傾向が確認された。 粘土鉱物に固定された放射性Csの可動化に関しては、バーミキュライトの層間に固定させたCsは有機酸のみとの反応では遊離しなかったが、Mgと共存させた有機酸溶液中では層間を拡大し可動化が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①除去植物とバイオ肥料微生物による除去能力加速化の実証に関しては、アブラナ科植物約70系統を栽培し、その56系統に関して、放射性Csの吸収特性が解明できた。また、バイオ肥料接種で放射性Cs吸収が7倍程度増加する品種も見いだした。また、微生物接種により作物の放射性Csの吸収が促進される場合とされない場合が有り、同じ種であっても土壌が変わると反応が異なり、生育状況と合わせより複雑な過程で吸収が行われること、及び植物体内のカリウム含有率と生重の増加がCs濃度の減少につながっていることが分かった。 ②粘土鉱物に固定された放射性Csの可動化機構では、バーミキュライトの層間に固定させたCsはクエン酸等の有機酸のみとの反応では遊離しなかったが、Mgと共存させた有機酸溶液中では層間を拡大させ可動化が生じることを見いだした。 ③森林-農耕地流域系での放射性Csの分布動態の解明を行った結果、流域のカエル類のオタマジャクシ期に、極めて特異な高濃縮現象や、生体が生息する水田や森林で蓄積レベルが異なること、鳥類の卵からの放射性セシウム検出等、非常に貴重なデータを得たこと等による。
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Strategy for Future Research Activity |
①除去植物とバイオ肥料微生物による除去能力加速化の実証に関しては、二本松市の試験圃場では、大部分の放射性Csが粘土鉱物の相関に強く固定されており作物等が吸収する画分は極めて少なくなっている。そこで、H25年11月より、有機酸等を細胞外に分泌して粘土鉱物に固定化されたカリウムを可動化する微生物を二本松の土壌に接種し、放射性Csの可動化が増大するか検討した結果、カリウム溶解菌の接種は、粘土鉱物に固定化した放射性Csの可動化を促進する可能性が見えてきた。H26年度は、カリウム溶解菌・バイオ肥料・放射性Cs吸収特性が高いアブラナ科植物、異なる土壌等で、植物-微生物相互作用を最大に発揮できる放射性Cs除去条件を見いだす。 ②粘土鉱物に固定された放射性Csの可動化機構では、バーミキュライトに固定されたCsの施肥などの土壌溶液中のK濃度変化に伴う溶出・可給態化様式、根分泌物中のプロトン(H+)、有機酸とMgイオンによるバーミキュライト固定態Csの可給態化メカニズム、根圏土壌中の腐植・有機物・生物によるCs-バーミキュライト吸着・可給態化反応への影響などを調べる。 ③森林-農耕地流域系での放射性Csの分布動態の解明では、2012年から2013年にかけて二本松市周辺の放射性セシウムレベルが、僅かながら減少しているが、①堆積物などの無機環境では天候や地理的要因といった特徴で、放射性Csレベルの減少がみられない地域があり、そのモニタリング、②動物種への放射性Cs蓄積では、高次爬虫類などで食性では把握できい変動が認められその検証、二本松市周辺の渡り鳥も次世代の卵等が汚染される傾向がみられ、その解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
福島県二本松市での圃場試験に用いる人件費・謝金の節約及び旅費への使用が予算より下回ったため。 H26年度の福島県二本松市への旅費に使用する予定です。
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Research Products
(13 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] バイオ肥料2013
Inventor(s)
小野愛、見城貴志、浅野智孝、吉川正巳、横山正
Industrial Property Rights Holder
小野愛、見城貴志、浅野智孝、吉川正巳、横山正
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
特願2013-258791
Filing Date
2013-12-16