Research Abstract |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の細胞内C末端領域に直接結合するGPCR結合タンパク質は,巨大なシグナル伝達タンパク質複合体(シグナルソーム)を形成し,受容体のトラフィッキングやシグナル伝達をGタンパク質非依存性に調節する。しかし,シグナルソームによる細胞機能制御やその病態生理的意義については,不明な点が多い。最近,我々は,エンドセリン受容体(ETR)と細胞内で直接結合するGPCR結合タンパク質として,Jab1やTriadinを新たに同定した。さらに,これらの分子が,ヒト骨格筋に発現するタンパク質と結合し,シグナルソームを形成することを世界に先駆けて発見した。本研究の最終目的は,グルコース代謝の主要組織である骨格筋において,ETR結合タンパク質により形成されるシグナルソームによる細胞機能調節機構とその病態生理的役割,特に,ETRが関与する2型糖尿病における機能的重要性を解明することである。本年度は,骨格筋で形成されるシグナルソームの重要な構成因子であるETRのシグナル伝達について検討した。骨格筋において,ETR刺激はERK1/2のリン酸化を引き起こした。このリン酸化応答は,Gqタンパク質阻害薬及びPDGF(血小板由来成長因子)受容体阻害薬によって,ほぼ完全に消失した。また,PDGF受容体の下流に位置するPI3キナーゼやSrcを阻害することによって,ETRを介したERK1/2のリン酸化は抑制された。さらに,ダイナミンのドミナントネガティブ変異体(K44A)を用いて,細胞膜受容体のinternalizationを阻害したところ,ETRを介したERK1/2のリン酸化は顕著に抑制された。これらの結果から,ETRを介したERK1/2のリン酸化には,ETRのinternalizationを介して惹起されるPDGF受容体のトランス活性化が関与していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は,骨格筋におけるエンドセリン受容体のシグナル伝達機構を薬理学的に解析し,エンドセリン受容体シグナルソームの機能的重要性の一端を明らかにした。そして,本年度に得た知見は,原著論文2報分として,発表される予定である。このことから,本研究計画は,おおむね順調に進展していると考えている。
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