2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期および幹細胞性を制御するGタンパク質共役受容体に関する研究
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24390069
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
和泉 孝志 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70232361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立井 一明 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00192633)
大嶋 紀安 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30360514)
岸本 幸治 徳島大学, 生物資源産業学部(仮称)設置準備室, 講師 (50280699)
山本 正道 群馬大学, 先端科学研究指導者育成ユニット, 助教 (70423150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞内シグナル伝達 / 細胞医化学 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物においてGタンパク質共役型受容体(GPCR)は最大の膜受容体ファミリーを形成しており、細胞外からのシグナルを細胞内に伝えている。GPCRの中にはG2Aのように細胞周期を制御し幹細胞性を増加させるものがあることが明らかになってきたが、その細胞内シグナルの解析や、生体において果たす役割については不明な点が多い。本研究では、G2Aが細胞周期や幹細胞性を制御する分子機構を生化学的・分子細胞生物学的に明らかにすると共に、その生体における役割を解明することを目指した。さらに、G2Aのリガンドである酸化遊離脂肪酸は、膜のリン脂質から代謝されて産生されるが、その機序については不明な点が多い。本研究ではリン脂質代謝酵素やその代謝産物の生体機序に関する解明も行った。 G2Aの機能に関する研究では、その過剰発現やリガンドである9-HODE刺激はU251細胞のスフェロイド形成における細胞移動時のN-カドヘリンの発現増加とマトリクスメタロプロテアーゼを活性化した。この際、幹細胞マーカーの発現、G1期を示すCdt1の発現に加えてXIAPの発現も増加したが、G2Aのノックダウン細胞ではカスペースの発現が増加した。一方、G2Aのノックダウン細胞を用いたマウスの皮下移植モデルでは腫瘍形成や臓器への転移が顕著に抑制された。 リン脂質代謝酵素に関する研究では、カンナビノイド産生酵素の1つと考えられる新規ジアシルグリセロールリパーゼのラット脳からのcDNAクローニングに成功した。また、グリセロホスホジエステルを加水分解する酵素である哺乳類の7種類のGDEのうちGDE4とGDE7のリゾリン脂質に対する活性を示し、その組織分布を報告した。さらに、イノシトールリン脂質代謝と胚発生との関連について、ホスホイノシチド 3-キナーゼ及びその代謝産物の細胞分化における役割について解明し報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G2Aを介する幹細胞性の解析においては、G2Aの幹細胞性に及ぼす影響について過剰発現系やノックダウン系を用いた研究を進め、細胞周期、上皮間葉転換、がん悪性度に関与する指標について、詳細な解析を行うことができた。特に、スフェロイド・スフェア形成時の上皮間葉転換の誘導と細胞周期や細胞死との関連についての解明が進んだ。これらの結果は、G2Aのもつ生物学的な意味の解明にもつながる研究成果であると考えられる。 新規リン脂質分解酵素に関する研究が進み、新規ジアシルグリセロールリパーゼのcDNAクローニングに成功した。また、グリセロホスホジエステルを加水分解する酵素群の内、2つについてその酵素学的な解明や分布を報告することができた。イノシトールリン脂質代謝と胚発生との関連について、ショウジョウバエを用いた研究を行い、ホスホイノシチド 3-キナーゼ及びその代謝産物であるホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸の細胞分化における役割について解明し報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる本年度は、以下のテーマについて研究を進めるとともに、全体的な研究成果のとりまとめを行い論文として発表することを目指す。 G2Aを介する幹細胞性の解析では、今までに得られた成果を基盤として、ヒトグリオーマ培養系を用いて、G2Aの幹細胞性に及ぼす影響についてさらに解析を進める。特に、マスター遺伝子及び細胞周期制御因子の発現並びにその作用に着目して解析を進める。 G2Aのリガンドである酸化脂肪酸は、グリセロリン脂質もしくはコレステロールエステル中の不飽和脂肪酸が酸化され分解されて生じる。これら酸化遊離脂肪酸の役割についてさらに解析する。また、酸化ストレス下のリガンド産生機序における各種のリン脂質分解酵素の役割について解析する。さらに、新規リン脂質分解酵素・代謝酵素の果たす生体内での役割について解析を進める。 G2Aはストレス誘導性の受容体でありそのmRNAの半減期は短いという特徴をもつ一方で、ストレス条件下での細胞の生存に深く関与している。その生物学的な意味を、生化学的、細胞生物学的に解明する。特に、酸化ストレスへの対応機序としての還元的な細胞内環境の維持機構、及び低酸素下での細胞のエネルギー代謝維持機構、さらに形態学的側面からの解析を行う。これらによって、G2Aが持つ幹細胞性維持機能についての解明を行う。
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Causes of Carryover |
学会発表などを行った結果、旅費は計画より多い支出となったが、細胞培養実験並びに動物実験が計画より順調に行われたため、培養用試薬や測定キット等の物品の購入費が計画当初より少なくてすんだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用の研究費は、主に物品費として使用する予定である。その用途としては、細胞培養および細胞を用いたシグナル伝達の研究に関連した支出にする計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] New members of the mammalian glycerophosphodiester phosphodiesterase family: GDE4 and GDE7 produce lysophosphatidic acid by lysophospholipase D activity.2015
Author(s)
Ohshima N, Kudo T, Yamashita Y, Mariggio S, Araki M, Honda A, Nagano T, Isaji C, Kato N, Corda D, Izumi T, Yanaka N
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 290
Pages: 4260-4271
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] GDE4 and GDE7 Produce Lysophosphatidic Acid by Lysophospholipase D Activity2015
Author(s)
Isaji C, Kudo T, Ohshima N, Yamashita Y, Araki M, Honda A, Nagano T, Kato N, Konishi A, Kishimoto K, Tatei K, Yanaka N, Izumi T
Organizer
The 6th International Conference on PLA2 and Lipid Mediators
Place of Presentation
東京都、新宿区、京王プラザホテル
Year and Date
2015-02-09 – 2015-02-12
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