2012 Fiscal Year Annual Research Report
陽性情動やエンリッチ環境が脳内エピジェネティクス修飾に及ぼす影響と疼痛制御
Project/Area Number |
24390151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
仙波 恵美子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00135691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 和雄 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 名誉教授 (70110517)
堀 美代 公益財団法人国際科学振興財団, バイオ研究所, 研究員 (90399329)
成田 年 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40318613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 陽性情動 / 超音波発声 / エピジェネティクス修飾 / 脳報酬系 / マイクロアレイ / microRNA / DNAメチル化 / 慢性疼痛 |
Research Abstract |
陽性情動(笑い、喜び)や遊びが疼痛を緩和し、免疫系や脳機能にもよい影響を与えることが報告されているが、そのメカニズムについては不明である。本研究では、その基盤にあるエピジェネティクス修飾による遺伝子発現制御機構を解明することにより、疼痛制御・治療に応用することを目指す。平成24年度は、ラットで快情動を示す50kHzの超音波発声(USV)を惹起することができるTickling刺激により、脳報酬系の要である側坐核においてドーパミン(DA)が放出され、DA受容体アンタゴニストの投与で、50kHzのUSVの発生が抑制されることを明らかにした。さらに一日10分間のTickling刺激を4週間続けたラットと、触刺激で置き換えた対照群のラットとの間で、マイクロアレイにより前頭葉・側坐核・海馬・扁桃体における遺伝子発現の変化について検討した。結果については解析中。また、マウスにおける遊びのモデルとされるRough-and-tumble playについて、小動物用超音波測定解析システム(Avisoft, SAS Lab)を用いて、隔離飼育の必要性、時期(週齢)、回数などの検討を行っている。モデル動物として確立した時点で、microRNAの網羅的解析を行う予定である。陰性情動のモデルとして神経障害性疼痛モデルを作製し、脊髄後角や脳報酬系におけるエピジェネティクス修飾についても検討を行っており、陽性情動との違いを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較的若いラットでは50kHzの超音波発声(USV)(快情動の指標)を惹起することができる。堀らは、Tickling刺激により脳報酬系の要である側坐核においてドーパミンΦA)が放出され、DA受容体アンタゴニストの投与で、50kHzのUSVの発生が抑制されることを明らかにした。仙波らは、今年度購入した小動物用超音波測定解析システム(Avisoft,SAS Lab)を用いて、マウスの様々な行動とUSVとの関係について検討を進めている。USVの解析方法についても確立した。成田らは、疾痛(陰性情動)による脳内エピジェネティクス解析を進め、精力的に論文を発表している(Imai et al., J Neurosci. 31:15294-15299, 2011,Imai et al., Brain. 136:828-843,2013)。今後さらに3グループの協力関係を進め、陽性情動による脳でのエピジェネティクス修飾を明らかにして行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年12月に星薬科大学にて研究打ち合わせ会議を行い、これまでの成果発表と今後の進め方についての話し合いを行った。陽性情動については、村上・堀らはこれまでどおりラットのTickling刺激を行い、マイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析を行うこととし、採取する脳部位は脳報酬系の要である側坐核、側坐核に入力する扁桃体・前頭前野・海馬とした。仙波、成田はこれまで神経障害性痔痛モデルマウスでの解析を行っており、成田らは側坐核におけるエピジェネティクス解析の結果、ドーパミン遊離の減少とmiR200b,miR429の減少およびDNMT3aの増加によるDNAメチル化の促進を見出している。陽性情動モデルとしてエンリッチ環境よりさらに強い陽性情動を惹起すると考えられるRough-and-tumble playを採用することとし、仙波が超音波測定解析システム(Avisoft,SAS Lab)を用いてモデル作製を担当し、成田がmicroRNAの網羅的解析を行う予定である。痔痛(陰性情動)とは全く異なった結果が得られることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
村上・堀らはラット脳でのマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行う。学術研究助成基金助成金の次年度使用額(140,750円)は、遺伝子発現解析費用に充てる。仙波らは超音波測定解析システム(Avisoft,SAS Lab)を用いてモデル作製を行う。成田らはラットおよびマウスでのエピジェネティクス修飾の解析(microRNAアレイ、変化したmicroRNAの標的遺伝子の探索など)を行う。なお遺伝子発現解析日費を約150万円と見積もっていたものが、実際の見積りをとってみるとそれより少しオーバーすることがわかったため、残額が生じた。
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