2013 Fiscal Year Annual Research Report
鉱質コルチコイド/糖質コルチコイド受容体パラドックスの解明と腎臓病治療への応用
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24390214
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長瀬 美樹 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60302733)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポドサイト / 鉱質コルチコイド受容体 / 糖質コルチコイド受容体 / Rac1 / 遠位尿細管細胞 / ChIP-seq / メサンギウム細胞 / 肥満糖尿病 |
Research Abstract |
(1) RhoGDIα-Rac1-MR系の標的細胞の同定と細胞特異的標的遺伝子の網羅的解析 RhoGDIα KOマウスではRac1活性化によるMRシグナル増強が生じる。その標的細胞を特定するために、RhoGDIαの腎臓内局在を免疫二重染色により解析した所、腎糸球体ポドサイトと遠位尿細管に局在していた。すなわち、全身性RhoGDIαKOマウスではポドサイト、遠位尿細管細胞においてRac1を介するMR過剰活性化が生じているものと考えられた。そこで、MRのゲノム作用を介する腎障害メカニズムとその細胞特異性を検証する目的で、培養遠位尿細管細胞株mDCT cellsと培養ポドサイト細胞株にアルドステロン刺激を加えた際、核内受容体であるMRがどの遺伝子のプロモーター領域に結合するか、次世代シーケンサーを用いた全ゲノムクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)解析により網羅的に解析した。さらにChIP-seqとマイクロアレイ解析を組み合わせて遠位尿細管細胞、ポドサイトにおけるMR標的遺伝子を同定した。その結果、細胞毎に独自のMR結合プロファイルが観察され、腎遠位尿細管細胞株ではゲノム上の1113ケ所に有意なMR結合領域が見いだされ、標的遺伝子として既知・未知の遺伝子が同定された(Ueda et a. BBRC 2014)。培養ポドサイト細胞株では腎遠位尿細管細胞株とは全く異なる結合プロファイルを呈した。 (2) 足細胞特異的MR KOマウス、同GR KOマウスのポドサイト表現型の解析 足細胞特異的MR KOマウスは樹立途上である。足細胞特異的GR KOマウスは通常飼育条件下では足細胞障害やアルブミン尿を生じなかったが、足細胞障害刺激を加えると、野生型ではポドシンの発現低下が見られるのに対して、GR KOマウスでは全く低下せず、障害も軽微であり、ポドサイトGRの新たな役割が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
足細胞特異的RhoGDIαKOマウスが全身性KOマウスと同等のポドサイト障害を自然発症すること、本マウスのポドサイトにおけるRhoGDIα-MRパスウェイ亢進が病態に深く関与することが示された。足細胞特異的MR KOマウス作製用の交配でホモオスマウスがまだ1匹しか得られておらず、in vivoポドサイトにおけるMRとGRの対比の解析が行えていないものの、足細胞特異的GR KOマウスのポドサイトの表現型を新規に見出すことができ、ポドサイトGRの新たな役割が明らかになってきている。またMRのChIP-seq解析法を確立し、遠位尿細管細胞株におけるMR結合サイトならびに標的遺伝子の網羅的解析に成功し、その成果を論文発表した。ポドサイトに関してはウイルスベクターを用いたトランスフェクションが必要で、解析に時間がかかったが、データの取得はすでに済ませており、現在論文投稿準備中である。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 足細胞特異的MR KOマウスの樹立と足細胞障害の解析 現在、Cre陽性MR flox/WT(ヘテロ)マウス(オス)は複数得られているが、オスホモマウスが1匹しか得られていない。Cre陽性MRヘテロマウス(オス)とCre陰性MRホモマウス(メス)の交配を進める。Cre陽性MRホモマウスが十分な匹数得られたら、ポドサイト障害の表現型とその分子機序を解析する。さらに、足細胞特異的GR KOマウスとの対比でポドサイトにおけるMRシグナリングとGRシグナリングを対比解析する。万が一、Cre陽性MRホモマウスが胎生致死であった場合には、そのメカニズムを調べる。 (2) ポドサイトにおけるMR. GRのChIP-seq解析 平成25年度に、培養遠位尿細管細胞および培養ポドサイト細胞株におけるMRのChIP-seq解析系を確立したので、この解析系を用いた研究計画を追加したい。すなわち、アルドステロン反応性MR結合サイトとデキサメサゾン反応性GR結合サイト、Rac1反応性MR結合サイトをChIP-seq法を用いて比較解析し、リガンド依存性・非依存性MR活性化の下流経路、MR-MRE/GREとGR-MRE/GREの標的遺伝子や下流経路とその特異性を規定する要因につき解析を加える。さらに、現在抗体の性能の問題から成功していないが、in vivo糸球体におけるMR、GRのChIP-seq解析も計画に加えていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度、科学研究費補助金はすべて使用したが、学術研究助成基金分は一部平成26年度に繰り越した。その理由として、ポドサイト特異的MR KOマウスの産出のための交配を進めているが、解析に必要な数のKOマウスが得られず、本マウスの解析が平成26年度に持ち越されることになったためである。 平成26年度には、繰り越した基金分を用いて、当初計画していた足細胞特異的MR KOマウスの解析を進める計画である。 Cre陽性MRヘテロマウス(オス)とCre陰性MRホモマウス(メス)の交配を進める。Cre陽性MRホモマウスが十分な匹数得られたら、ポドサイト障害の表現型とその分子機序を解析する。さらに、足細胞特異的GR KOマウスとの対比でポドサイトにおけるMRシグナリングとGRシグナリングを対比解析する。万が一、Cre陽性MRホモマウスが胎生致死であった場合には、そのメカニズムを調べる。
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Research Products
(10 results)