2013 Fiscal Year Annual Research Report
造血器腫瘍におけるTET2遺伝子異常とエピジェネティック制御の解析
Project/Area Number |
24390241
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
千葉 滋 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60212049)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | エピジェネティック制御 / TET2 / リンパ腫 |
Research Abstract |
TET2は、血液がんで最も高頻度に変異が認められる遺伝子の一つであり、TET2遺伝子にコードされる蛋白は、メチル化シトシン(mC)をヒドロキシメチル化シトシン(hmC)に変換する酵素である。TET2の機能を明らかにするために、TET2に結合する蛋白質を探索した。マス・スペクトロメトリー法でスクリーニングされた蛋白質の中で、O-linked N-acetylglucosamine transferase (OGT)がTET2に強く結合すること、特に、OGTのアミノ末端が、TET2の酵素触媒領域を含むカルキシル末端と結合することを明らかにした。OGTはセリン/スレオニン残基にO-linked N-acetylglucosamine (O-GlcNAc)を付加する酵素で、細胞への強制発現によってTET2へのO-GlcNAc付加が増加することが示された。しかしながら、OGTを強制発現した細胞におけるゲノム中のhmC量に変化はなく、OGTが結合することでTET2の機能に影響を及ぼすか否かは不明であった。一方、TET2遺伝子ノックダウン細胞では、O-GlcNAc付加蛋白質全体量が減少していた。この結果から、TET2はOGTに結合することによりOGTの機能を高めていることが推察された。一方、TET2遺伝子ノックダウンマウスでは、CD4陽性T細胞においてBcl6遺伝子のイントロンに存在するサイレンサー領域のメチル化が更新し、またBcl6の発現が亢進していた。Bcl6は濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞分化のマスター転写因子であるが、このマウスは40週齢以降、脾臓においてTfh細胞が増生し、さらに60週齢以降Tfh細胞の形質を示すT細胞リンパ腫を発症した。ヒトではTfh細胞腫瘍として血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)が知られる。AITLサンプルのゲノム解析で、一次異常としてTET2遺伝子変異を83%の頻度で、二次異常としてRHOA遺伝子変異を71%の頻度で認め、TET2遺伝子変異によるエピジェネティック異常を発端とするT細胞リンパ腫の発症過程の一端が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)TET2複合体による脱メチル化解析、2)TET2遺伝子改変マウスのフェノタイプ解析、3)T細胞性リンパ腫発症関連遺伝子の同定、の3項目を目指して研究を行った。1)については複合体の一端としてOGTを同定した。脱メチル化の機序を解明するにはいたらなかったが、以外にもTET2がOGTの機能を制御することを示唆する結果を得た。2)ではフェノタイプ解析だけでなく、エピジェネティック制御異常によって当該のフェノタイプが出現することまで突き止めた。3)では、血管免役芽球性リンパ腫において、一次異常としてTET2遺伝子変異を、二次異常としてRHOA遺伝子変異を高頻度に同定した。以上から概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
TET2変異によるエピゲノム異常とRHOA変異による低分子GTPase蛋白機能異常の組み合わせによって、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫の動物モデルを作製する。また、エピジェネティック制御異常の中でも、メチル化シトシン(mC)からヒドロキシメチル化シトシン(hmC)への変換障害が、がん前駆状態を形成していることが想定される。この際、どのような遺伝子が標的になっているかを、TET2遺伝子改変マウスや、hmC変換障害を来している細胞を用いて解析する。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] Somatic RHOA mutation in angioimmunoblastic T cell lymphoma.2014
Author(s)
Sakata-Yanagimoto M, Enami T, Yoshida K, Shiraishi Y, Ishii R, Miyake Y, Muto H, Tsuyama N, Sato-Otsubo A, et al., Nureki O, Miyano S, Nakamura N, Takeuchi K, Ogawa S, Chiba S.
-
Journal Title
Nature Genetics
Volume: 46
Pages: 171-175
DOI
Peer Reviewed
-
[Presentation] Hypermethylation of Bcl6 Is a Potential Cause of Development of Lymphoma with Tfh Features in Tet2 Knockdown Mice2013
Author(s)
Hideharu Muto, Mamiko Sakata-Yanagimoto, Yasuyuki Miyake, Genta Nagae, Terukazu Enami, Yuhei Kamada, Kazumi Suzukawa, Naoya Nakamura, Hiroyuki Aburatani, Seishi Ogawa, Shigeru Chiba.
Organizer
The American Society of Hematology 55th Annual Meeting and Exposition
Place of Presentation
Ernest N Morial Convention Center (New Orleans, LA, U.S.A.)
Year and Date
20131207-20131210
-
[Presentation] TET2 binds and regulates O-linked N-acetylglucosamine transferase.2013
Author(s)
Terukazu Enami, Mamiko-Sakata Yanagimoto, Yukitsugu Asabe, Yasuyuki Miyake, Satoshi Serada, Tetsuji Naka, Hideharu Muto, Hidekazu Nishikii, Yasuhisa Yokoyama, Naoshi Obara, Kazumi Suzukawa, Shigeru Chiba.
Organizer
第75回日本血液学会学術集会
Place of Presentation
ロトイン札幌・ニトリ文化ホール・札幌市教育文化会館(札幌)
Year and Date
20131011-20131013
-
-
-