2013 Fiscal Year Annual Research Report
胃がん腹膜播種に対する新しい免疫細胞を用いた治療開発
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24390306
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| Research Institution | Hyogo Medical University |
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Principal Investigator |
岡村 春樹 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60111043)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹子 三津留 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (40143490)
菊池 正二郎 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (70381960)
前山 義博 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80614031)
田中 義正 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90280700)
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| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | IL-18 / ヘルパーNK細胞 / CD8陽性細胞 / γδＴ細胞 / 抗CTLA4抗体 / 抗PD-L1抗体 / 抗腫瘍効果 |
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| Research Abstract |
当該研究はインターロイキン１８（IL-18）の癌治療への応用の方法を開発することを主な目的としている。近年、免疫／炎症反応を抑制するリンパ球や表面抗原を標的とする癌の免疫治療が実用化され、有望な成績が得られたという報告が相次いでいる。この治療法は癌細胞を傷害する細胞の持続的な増殖と機能の維持をもたらすものであるが、自己免疫様の病態などの副作用も伴うもので、改良の余地や効果拡大の余地があると考えられる。
24年度の研究では活性化されたNK細胞、CD8陽性細胞、γδT細胞の生存、増殖をIL-18が著しく高めることを確認し、報告した。
25年度はこれらの細胞の中で特に、ヒトNK細胞のうち、ヘルパー機能を持ったCD56brightCD11c+のNK細胞がIL-18によって誘導されること、この細胞がCD8陽性T細胞、γδT細胞の増殖や機能分化を誘導すること、その誘導に単球が重要な役割を持つことなどを明らかにし、さらにこのヘルパーNK細胞の誘導機序について解析した（Li, et al. PLoS ONE,2013）（Sugie et al. Cancer Immunol. Immunother、2013）.
これらの実験結果は最近実用化された抗体による癌の免疫治療の効果拡大にIL-18が使える可能性を示している。
実際マウス大腸がん細胞CT26を腹腔内移植したマウスを用いて、抗CTLA4抗体や抗PD-L1抗体とIL-18とを組み合わせて治療すると抗体単独による治療に比べてはるかに強い抗腫瘍効果を示した。抗体のみで治療した場合、延命効果はあるが5－6週間で死亡したのに対して、IL-18と抗体との組み合わせで治療した場合は観察している限り腹水もなく、健康に経過した。この時のIL-18の作用機序についての解析も終わり、現在論文作成に当たっている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL-18はIFN-γなどのサイトカイン誘導因子としてみつけられた。しかしながら近年自然免疫の研究が発展する過程でインフラマゾームが発見され、IL-18が細胞のストレスセンサー、あるいはストレス応答因子としての役割を持つことが示唆された。インフラマゾームは酸化ストレス、ERストレス、栄養ストレス、漏出ATP，蛋白凝集塊などによって活性化され、IL-1βやIL-18の前駆体を活性型に変換する。また細胞の分化などにおいても活性化される。インフラマゾームやその産物であるIL-1βやIL-18の生物学的な役割は完全にはわかっていないが、様々なストレスから細胞を守り、細胞の生存や細胞分化を助ける可能性が高い。
IL-18は免疫担当細胞以外でも偏在的に存在しているが、それらの細胞における役割はよくわかっていない。一方リンパ球などに対してはサイトカイン産生のシグナルのみならず細胞の生存シグナルを活性化することが示されている。我々の研究でもIL-18KOマウスのCD8陽性細胞やNK細胞は活性化されても死にやすく、増殖しにくいこと、IL-18を添加することによって増殖、サイトカイン産生、殺細胞活性が著しく高められることを確認している。今回の研究ではヒトγδT細胞の活性化(分化)と増殖をヘルプする新奇細胞CD56brightCD11c+のNK細胞の増殖にはIL-18が重要な役割をすることを示した。この細胞はγδＴ細胞のみならず、CD8陽性T細胞の増殖も促進する。
これらのことはIL-18が抗腫瘍作用を持つリンパ球、特に自然免疫リンパ球の活性化、増殖を促すことにより、腫瘍免疫において役割を持ちうることを示している。実際マウスの腫瘍モデルを用いた実験においてIL-18は抗CTLA4抗体や抗PD-L1抗体による治療効果を著しく促進した。このような理由から腫瘍免疫におけるIL-18の利用法の開発と、それを裏付けるIL-18の作用機序解明がおおむね順調に進んでいると考えられる。
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| Strategy for Future Research Activity |
IL-18が抗腫瘍作用の強いリンパ球であるNK細胞、CD8陽性T細胞、γδT細胞は選択的に増幅、活性化するがCD4陽性のTregなどは増殖させないので、IL-18が腫瘍に対する免疫治療の効果を高める可能性が示された。しかしながら、IL-18がどのような機序でリンパ球の増殖や分化を促進するのかは明らかでない。IL-18の医療応用を考える上ではIL-18の中心的な生物作用やその分子メカニズムを明らかにする必要がある。IL-18KOマウスの細胞やリコンビナントIL-18を用いたこれまでの実験結果ではIL-18は細胞のERストレス応答やオートファジーに関与していることが示唆されている。このことを確認するために、分子生物学的な方法による関連遺伝子の発現、電顕やコンフォーカル顕微鏡を用いた形態学的な観察、ERやミトコンドリアの機能測定を行い、細胞内オルガネラの制御におけるIL-18の役割を明らかにしてゆく。
一方、癌治療モデルにおけるIL-18と抗CTLA４抗体や抗PD-L1抗体との組み合わせの効果に関する解析は、腹腔浸出細胞（PEC: peritoneal exudate cells）や脾細胞における、NK細胞、CD8陽性T細胞、CD４陽性細胞の表面抗原の解析、産生サイトカインの解析、腫瘍細胞に対する殺細胞活性の測定などによって行っている。NK細胞、CD8陽性T細胞などの増大、CD4陽性細胞の減少などを確認しているが、抗体を用いてそれらの細胞を除いた時にIL-18の効果がどのようになるのか、IL-18を併用したときの副作用はどうか、また、それらのエフェクター細胞の移入による癌治療効果について検討を加え、癌免疫治療におけるIL-18の効果増強作用を確認する。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究によってIL-18がNK細胞、CD8陽性Ｔ細胞、γδT細胞などの抗腫瘍作用を持つリンパ球の活性化、増殖を著しく高めること、その機序が生体内でも有効に働くことは確認し、一つの区切りを付けられるところまで終了したが、多様な癌種、多様な癌モデルを用いて、上記CT26を用いた研究と同様、IL-18が免疫治療の効果増大を示すかどうか、確認を行う事が出来なかった。
またIL-18の効果の裏付けとして、IL-18の中心的な役割を知っておく必要があり、IL-18が細胞内オルガネラのコントロール、エネルギー代謝、物質代謝において果たす役割を、形態学的、分子生物学的、機能学的に明らかにすることにより、脳や心臓、上皮など、非免疫組織に偏在的に存在するIL-18の役割を明らかにし、それら臓器の疾患の機序解明にも有用であるが、こちらに関する実験もまだ終了しておらず、次年度使用額が生じた。
上に述べたような理由により、多様な癌腫や様々な腫瘍モデルを用いてIL-18による治療効果拡大について検討を加えるために、実験動物、抗CTLA４抗体や抗PD-L1抗体のような治療薬、リンパ球サブセット解析に必要な抗体、組織観察に要する試薬、ELISAキット等々の購入の費用に充てる。
またIL-18が細胞内オルガネラのコントロール、エネルギー代謝、物質代謝において果たす役割を明らかにするために、エンドプラスミックレティキュラム、ミトコンドリアなどの解析用試薬、細胞表面抗原染色用試薬、細胞培養用機器、細胞培養用試薬、ウエスタンブロッティング解析用試薬などの購入に充てる。このほか、様々な消耗品の購入や学会出張、論文投稿などの費用としても用いることが予想される。
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Research Products
(7 results)
