2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規水素吸入療法による院外心停止患者の予後改善を目指した臨床研究
Project/Area Number |
24390405
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀 進悟 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 元昭 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30265798)
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子状水素 / 蘇生後症候群 / 虚血再灌流障害 / 抗酸化薬 / 酸化ストレス / 蘇生後脳症 / 脳機能不全 |
Research Abstract |
以下の動物実験を行い、非高濃度酸素下においての、水素吸入の有効性の検証を行った。 [研究の背景1現在、極めて予後不良な院外心停止蘇生後患者の増加は、国際的公衆衛生上の課題となっている。現時点で心停止患者に対する特異的な治療として低体温療法が施工されているが、その効果は十分とは言えず、脳・心臓後遺症のため社会復帰率も低く、生命予後は極めて不良である。心肺停止蘇生後の臓器障害の原因である全身の虚血再灌流障害を軽減するための新規治療確立が急務である。分子状水素ガス(H2)は抗酸化物質として注目されている。 [目的]心停止蘇生後症候群に対する低体温療法とH2吸入療法の予後改善効果を比較検討すること。 [研究方法]Wister ST rat♂を用いて経皮的心外膜電気刺激による心室細動/心停止モデル(心停止6分間)を作成し、3分間の用手胸骨圧迫後に電気的除細動を行い蘇生した。蘇生後5分間100%酸素にて人工呼吸器管理を行った後、以下の4群にわけ呼吸器管理を行い、4時間の体温管理を行った。(1)N2群(26%02+74%N2)、(2)H2群(26%02+2%H2+72%N2)、(3)N2+低体温療法(TH:33℃)群、(4)H2+TH群の4群に分け、7日間生存、Neurologic deficit score(NDS:異常なし=0;死亡=100)を測定した。心肺蘇生には人工呼吸および用指胸骨圧迫(200回/分)、エピネフリン8μg、炭酸水素ナトリウム0.1mEq静脈投与、電気的除細動(2J)を行った。心肺蘇生開始時から自己心拍再開2時間後までの間、ガス吸入を行った。 [研究結果]7日間生存率は、N2群:33.3%、H2群:66.6%、N2+TH群:66.6%,H2+TH群:83.3%であった。7日後のNDSは、H2群、N2+TH群でN2群より有意に低く、さらにH2+TH群ではH2群、N2+TH群よりも有意に低かった。心停止蘇生後群に対するH2吸入療法は、非高濃度酸素投与下の心停止モデルにおいても、脳機能予後を軽減し予後を改善し、さらに低体温療法と同等の効果および低体温療法との相乗効果を有する新規治療薬となりうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は世界で初めて、蘇生後症候群患者に水素ガスを人工呼吸器下に投与する臨床研究である。そのため、動物実験を用いて、水素ガスの安全性や有効性を十分に検証する必要がある。初年度は、動物実験で非高濃度酸素下においても水素が抗酸化物質としての有効性を検証した。同時に、臨床研究開始に当たり、倫理委員会への申請書類を提出した。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験にて水素の安全性と有効性の検証を進めると共に、臨床研究の準備を行う。具体的には、蘇生後患者少数例を対象として、単施設非盲検を行い、安全性を検証する(Single arm study with historical control)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していたヒトを対象とした介入型臨床研究の倫理審査および実施が遅れたため平成24年度の研究費に未使用額が生じた。平成25年度は動物実験にて水素の安全性と有効性の検証を進めると共に臨床研究の準備を行う。臨床研究の遂行にあたり、データセンター・研究事務局支援事業、リサーチコーディネーター人件費に一部充てる。
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Research Products
(1 results)