2012 Fiscal Year Annual Research Report
脳-腸相関を軸とした顎口腔と胃食道との間の知覚-運動制御機構と関連疾患の解明
Project/Area Number |
24390464
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
宮脇 正一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (80295807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大牟禮 治人 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (00404484)
八木 孝和 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (10346166)
植田 紘貴 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (10583445)
永山 邦宏 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (60583458)
坪内 博仁 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60145480)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳腸相関 / 顎口腔機能 / 迷走神経 / 胃 / 食道 |
Research Abstract |
本研究は、顎口腔機能の低下が、胃・食道の機能低下や知覚過敏を引き起こし、それが迷走神経を介して顎関節症等を引き起こし、最後に、胃・食道の疾患に繋がるという仮説を立て、顎口腔と胃・食道の機能的相関や顎関節症等と胃・食道の疾患との因果関係を明らかにして顎口腔と胃・食道の疾患の治療や予防に繋げることを目的とした。平成24年度は、健常者に対し、計算課題によるストレス負荷を加えた時と胃食道内へ酸を注入した時の咬筋の筋電図測定を行い、咳や嚥下等を除いた両側咬筋の非機能時筋活動量が増加することを明らかにした。また、fMRIを用いて、計算課題によるストレス負荷を経時的に加えた時、噛みしめ時は、過去の報告と一致したSensory motor cortex(SMC)の大脳皮質咀嚼野が賦活していた。また、無意識の噛みしめを想定した手の握りしめ時と計算課題によるストレス負荷時は共通して島皮質と前部帯状回が賦活していたが、SMCの大脳皮質咀嚼野は賦活していなかった。無意識の噛みしめには島皮質と前部帯状回が関連すると考えられた。また、今回、手の握りしめ時とストレス負荷時に大脳皮質咀嚼野が賦活していなかったのは咀嚼筋の筋活動の増加量が少なかったためであると考えられた。また、成人男性14名を対象として、咀嚼あり・なしの2条件で、胃排出能評価と運動機能評価および自律神経機能評価を行った。咀嚼によって胃の活動は一過性に抑制され、胃からの食物排出が一時的に抑制されることが示唆された。また、この変化には自律神経(迷走神経)による胃の神経性調整が関与している可能性が考えられた。胃食道内への酸刺激時には咬筋の筋活動が増加するという結果を得ていることから、今後は胃食道内への酸刺激時の脳賦活部位を調べ、これまでの脳賦活部位の結果と比較することで、無意識の噛みしめに関連する脳部位を特定し、覚醒時ブラキシズムの発現メカニズムを検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算課題を用いたストレス負荷や胃食道内への酸の注入による咬筋筋活動の増加を検討した後、ストレス負荷時や噛みしめ時のfMRI撮像と脳賦活部位の解析を行い、関連学会で結果を発表した。 また、呼気試験や胃電図、心電図の計測条件は確立され安定したデータ採得も行えるようになり、咀嚼が胃の活動や自律神経機能に与える影響に関しては、前述のとおり新たな知見を得ることができた。現在、fMRI関連のデータについては、結果をまとめ、論文を執筆中である。これらのことから本研究は研究計画に沿っておおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は顎関節症等と胃・食道の機能低下や知覚過敏および疾患との因果関係を解明するために、ラットを用いた嚥下・唾液中枢の破壊が胃・食道機能に及ぼす影響や早期接触・歯の喪失・食道炎症モデルが胃食道の機能等に及ぼす影響の解明のための動物実験の他、筋筋膜痛と顎関節痛を有する患者を対象にした消化管機能評価や消化管運動改善薬とプロトンポンプ阻害剤の治療効果検討のためのランダム化比較試験を行っていく予定である。また、胃食道内への酸刺激時にfMRI撮像を行う方法を構築し、胃食道内への酸刺激時の脳賦活部位を調べ、関連する脳部位を検討する予定である。この際、嚥下や不快症状等による体動に影響され、MRIデータが正確に採得できない可能性があるため、fMRI撮像回数や撮像時間を短くし、データの乱れを排除することで、被験者のMRIデータ採得を推進させ、脳機能を介した覚醒時ブラキシズムと食道内酸刺激との関連や覚醒時ブラキシズムの発現メカニズムを検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、胃食道内への酸刺激時にfMRI撮像を行う方法を構築し、胃食道内への酸刺激時の脳賦活部位を調べ、関連する脳部位を検討する予定であったが、食道内への酸注入時にfMRI撮像を行う際に、嚥下や不快症状等による体動に影響され、MRIデータが正確に採得できない事例が確認された。この点は実験条件(fMRI撮像回数や撮像時間)の改善を行い、次年度以降のデータ採得を推進させる予定である。また、消化管ホルモンの定量的評価に必要な基礎データを確立する予定であった。実際の達成度としては、呼気試験や胃電図、心電図の計測条件は確立され安定したデータ採得も行えるようになり、咀嚼が胃の活動や自律神経機能に与える影響に関しては、前述のとおり新たな知見を得ることができた。内分泌機能に与える影響に関しては上部消化管機能に関連する消化管ホルモンが多種多様に及ぶため、より一層のデータ収集と解析が必要である。
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Research Products
(32 results)