Research Abstract |
インドネシアでは,過去30年間にアブラヤシ農園が急激な拡大をみせ,スマトラなどの地方社会の社会経済発展や資源利用のあり方に大きな影響を与えている.しかしその拡大過程をみると,1990年代末以降,小規模農園の開発が増大したり,既開発地の再配分に力点が移行したりするなど,土着化・内延化とでもいうべき重大な変化が生じている.本研究は,こうしたアブラヤシ農園の拡大過程とインドネシア外島部の社会変容との関係を,社会層分化の実態や,各社会層の生産力構造と生産関係の解明を通じて実証的に明らかにしようとするものである. 初年度の研究では,まず,事例地域として取り上げたリアウ州(州別アブラヤシ農園面積で全国1位)のアブラヤシ農園拡大過程を跡づける体系的なデータ収集に力を入れた.州農園局などの公的機関が保有する行政資料のみならず,リアウ州唯一の国有農園企業の内部資料や,リアウ州を代表する新聞リアウ・ボスのアブラヤシ関連記事の収集を行い,土着化と内延化の過程を浮き彫りにする,類をみないデータベースの構築を進めることができた.これらのデータベースの分析に基づく研究成果は,現地研究協力者の所属するリアウ大学の国際セミナーでの招待講演や,シンガポールの東南アジア研究所(ISEAS)発行の単行本所収の論文を通じて公表された.一方,リアウ州のフィールドにおけるインテンシブな現地調査は,アブラヤシ農園開発の先進地域である北スマトラ州との州境に近い,ロカン・ヒリル県を中心に行った.調査地としては,国有農園企業の所有する大規模農園,PIRと呼ばれる開発計画による小農の農園に加え,主に北スマトラからの移住者による小農農園,ロカン・ヒリル県政府による計画的開発地を取り上げ,基礎的な調査を行い,これらの比較を通じて,アブラヤシ農園開発が,予想以上に多元的な社会層分化を伴いながら進行している状況が明らかになった.
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