2013 Fiscal Year Annual Research Report
諸外国倒産手続における担保目的物の評価手法に関する比較検証
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24402007
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤本 利一 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (60273869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 和彦 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40174784)
上江洲 純子 沖縄国際大学, 法学部, 准教授 (60389608)
金 春 同志社大学, 法学部, 准教授 (80362557)
下村 信江 近畿大学, 法務研究科, 教授 (60273728)
杉本 純子 日本大学, 法学部, 准教授 (00549800)
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00282533)
名津井 吉裕 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (10340499)
山本 研 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90289661)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 担保権 / 担保価値 / 別除権 / 処分価額連動方式 / 倒産法 |
Research Abstract |
担保目的物価値評価の基準等を調査する前提として,フランス倒産法における担保の処遇について,ピエール・クロック( Pierre CROQ )教授(パリ第2大学)を日本に招へいし,研究会においてその概要をご報告いただき,意見交換を行った。通訳には,分担研究者である下村信江教授(近畿大学法科大学院)があたり,またその報告原稿を日本語に翻訳し,近畿大学法科大学院論集第10号161頁-184頁(2014年3月)に掲載し,公表した。担保目的物の価値評価を行うにあたり,そもそも,現在のフランスの担保法制がどのようになっているか,とりわけ,平時実体法と倒産実体法の二つの観点から,その基本的な枠組を明らかにできたことに価値があると思われる。 研究代表者である藤本利一は,定期的に開催され,報告結果が銀行法務21に掲載される,大阪倒産実務交流会において,実務家の事例をもとにした研究報告に対し,比較法的手法を用いて,適宜コメントを行った。実務家の報告者は,木村圭二郞弁護士・溝渕雅男弁護士(共栄法律事務所)であり,そのテーマは,「中小オーナー企業のスポンサー選定に関する考察」であった。この報告に対し,藤本利一「計画外事業譲渡は『濫用』か?」銀行法務21 771号34頁-37頁(近刊)が公表されている。この論考は,日本とアメリカ法における倒産手続における事業譲渡における価値評価の問題に言及しており,その点で,本研究テーマと連関する。 研究代表者である藤本利一は,東アジア倒産再建協会が主催する「第5回 東アジア倒産再建シンポジウム」(中華人民共和国北京市)に参加し,「日本における国際倒産事件の規律」について,パネリストとして,報告を担当した。聴衆は,中国,韓国の裁判官,倒産弁護士,研究者であり,シンポジウムの前後を通じて,上記テーマを含めつつ,本研究テーマについても,幅広く情報収集と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランス倒産法における担保の処遇について,ピエール・クロック( Pierre CROQ )教授(パリ第2大学)より,フランス担保法の概要について,とくに倒産手続との関係での内容をご講義いただいたことは,研究会にとって好ましいことであった。その成果が研究会構成員にとって有益であったため,この点を踏まえて,現地調査前に,できれば,かの地の専門家の意見をヒアリングすることを試みようと考えている。そのため,いきなり現地に赴くのではなく,事前準備をもう少し高度化したほうがよいとの意見が強くなっている。そのため,倒産法だけでなく,それをささえる司法制度にまで視野に入れ,検討を行うことが必要となり,本年度は,たとえば,Jack Beatson 判事(ロンドン,控訴院)を大阪大学に招へいし,イギリスの司法制度について,ご講義を受ける。そのうえで,イギリス調査に出向く予定である。しかし,そのために,本調査全体を次年度以降にずらしていく必要があると思われる。もっとも,これは,研究の内容を高めるための,よりよい方向での「準備」期間の厚みをとるものであり,計画全体の観点からは,致命的な遅滞にはならず,たとえば,ヨーロッパ諸国として,次年度に集中的に調査を実施し,経費を合理化することにもつながる。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス倒産法における担保の処遇について,ピエール・クロック( Pierre CROQ )教授(パリ第2大学)からご講義を受けたことで,フランス法の基本的な概要を共有することができた。来年度のフランス現地調査に向け,クロック教授と継続してコンタクトをとるとともに,トゥールーズ大学のマリー=エレーヌ・モンセリエ=ボン教授(倒産法専攻)とも連絡を取っている。研究者を起点としつつ,現地の実務家をご紹介いただく予定である。 また,ヨーロッパ諸国における調査について,本年度は,イングランドから,Jack Beatson 判事(ロンドン,控訴院)を大阪大学に招へいし,司法制度改革についての講義をいただくことを予定している。かの地における司法制度改革の現状を踏まえつつ,そのうえで,彼の同僚である倒産裁判官等へのインタビューを実施することを企図している。 アメリカ合衆国においては,ハーバード大学のJesse Fried教授やニューヨーク大学のTroy A. McKenzie教授の支援をお願いしつつ,ニューヨークやボストンなど東海岸にある都市を中心としつつ,シカゴなど中西部の都市,さらには,カリフォルニア大学ロスアンゼルス校のLynn LoPucki教授のサポートをお願いし,サンフランシスコやロスアンゼルスなど,西海岸の都市も視野に入れつつ,全体の評価が行えるよう,調査を実施することを試みる。 韓国においても,かの地の研究者や実務家の協力を得ながら,現地の倒産実務の動向をにらみつつ,引き続き情報を獲得することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査を実施するにあたり,複数の研究分担者が,同時に現地に赴く必要性が高くなったことが挙げられる。散発的に,個々人が調査に出向くよりも,ユニットを構成し,同時に海外調査を行うことが合理的であると考えたからである。このことは,とくに,平成25年度において,フランス・パリ第2大学のピエール・クロック教授を招へいし,フランス担保法の概要について,レクチャーを受け,意見交換を実施したことに影響を受けている。双方向での意見交換を行う場合,1対1よりも,複数の研究分担者が質疑応答を行い,議論が活性化することはもちろんであるが,とくに比較法的に十分な紹介がなされていない国に関しては,より慎重な準備が必要であると認識したからである。 新しい年度では,イギリスより,Jack Beatson控訴院判事を招へいする予定であり,イギリスの司法制度のあり方について,レクチャーを受ける予定であり,こうしたインバウンドの知見獲得に資金を利用する予定である。また,アメリカ合衆国への海外調査を予定しており,複数の研究分担者が,現地に赴く予定であり,そのための費用として利用される。
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Research Products
(2 results)