2012 Fiscal Year Research-status Report
熱帯地域でも普及可能な超低価格地中熱冷房システムのインドネシアでの実証研究
Project/Area Number |
24404024
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Section | 海外学術 |
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
高島 勲 秋田大学, 名誉教授 (50163192)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾西 恭亮 秋田大学, 工学資源学研究科, 助教 (20402969)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 地中熱利用冷房 / 省エネルギー / 熱帯地域 / インドネシア / 地熱多目的利用 / 地球環境 |
Research Abstract |
2012年7月に実験地のバンドン工科大学の敷地に地中熱冷房システムを設置した。地中の熱交換配管は、幅1m、長さ25m、深さ1.5mのトレンチの最深部にコイル状の、その上の50cmに土砂埋設した所に平行2列の各100mポリエチレン(内径25mm)配管を行った。地上部分は、市販の家庭用エアコンの室外機の風冷熱交換部分を取り外し、前記地下配管の循環水で冷却を行った。このシステムの評価のために、地下温度6点、地下水分量3点、室温1点、循環流量と出入り口温度、気温及び降雨量計、エアコン電力計2台(本システムと比較用の空冷エアコン)を設置し、データーロガーによる連続観測(一部は目視記録)を行っている。この時点から各種データの記録を開始している。 各種記録のうち、主なものは1.5m深の地下温度が22℃、土壌水分量が20%、熱交換器入り口温度が23-30℃、出口との温度差が3℃、流量が15L/min.などである。効率については、1日の運転電力が通常のエアコンが8.45kWhであるのに対し、地中熱システムが6.1kWhと38%の向上が観測されたのを最高に10-25%程度の値を示している。但し、設置室は人の出入りがあり、その影響を取り除いた評価法を検討する必要がある。2013年1月には、風冷熱交換部分の直接水冷から冷媒と冷却水の2回路の熱交換器に置き換えて運転を開始した。 研究目的の重要な要素であるシステム価格については、ほとんどの物品が現地で調達でき、かつ低価格であったことにより5万円程度と目標をほぼ達成した(計測装置は除く)。現地調達物品についての耐久性や性能については、次年度以降厳密に評価を行う。 2013年1月に、第2の実験地であるジョグジャカルタのペグバングマン大学(PNU)構内で地下温度観測用の2m深孔をハンドオーガーで4孔掘削した。観測された温度は26-27℃であり、1孔については連続に、他の3孔については1週間に1度の観測を続けている。この結果をもとに、平成25年度の地下抽熱実験地点を決定する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的に長期の運転とそれに伴う地下温度変化等の観測を主体とする研究であり、所期の予定通りの設備及び観測体制を確立したことにより、運転とデータ取得が行われている。データーロガーの設定はおおむね1時間に1回のデーターを記録しているが、その時間間隔でも膨大な量となるので、各月初めの1週間を取りまとめる方向で検討中である。 2013年1月に熱交換機と循環ポンプの交換を行ったが、ポンプの不調が原因と思われる故障が発生した。この修理を同年3月に実施したが連続運転に不安があり、故障の少ないポンプを選択し、運転再開に向けて作業中である。この中断でも、地下環境等の観測は実行中である。 海外の共同研究では、現地の協力者の対応が研究推進の重要な鍵となる。この点については、多くの協力を受けてはいるが、通年の運転と観測が主体の研究ではより緊密な連携が必要である。この点から、システムと研究内容のより一層の理解を深める活動を進める必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、バンドンでは2系統ある地下配管システムごとの抽熱性能の評価と地下環境の変動解析を行う。冷房効率の評価が比較的難しい状況から、部屋への人員の出入りのない週末・祝日の運転データを取得し、設置したシステムの正確な効率向上係数を求める。また、長期の運転に伴う機材の安定性の評価と地下環境等の変化を実測し、長期変動モデル計算の検討を行う。 ジョグジャカルタでは、システム設計の基礎となる地下の熱抽出特性の測定を行う。予定している配管システムは地下2m深でのコイル状配管と2-4m深の垂直コイル状配管で、いずれも長さ50mのポリエチレン配管(内径25mm)である。これらの地下配管は、いずれも土木機材を利用することで低価格で施工できる。なお、後者の垂直コイル方式は理論的な議論はなされているが、実際の実験としては世界初のものである。 本研究は小規模で低価格な地中熱冷房システムを実証実験として行っているが、将来的には中規模ビルや地域冷房・給湯による省エネルギー社会の実現を目指すものである。そのための吸収式冷房システムや大規模抽熱モデル、地下水流動系の解析による高効率熱利用などについても情報収集や宣伝活動を進める。具体的には、東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)や地方公共団体との協力を推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第2の研究実施地点であるジョグジャカルタのペグバングナン大学(PNU)での地下熱交換部分の設置と試験による抽熱性能試験を行う。このための資材、掘削、配管工事及び計測装置に20万円程度を使用する。 バンドンでは2系統ある地下配管システムごとの抽熱性能の評価と地下環境の変動解析を行う。冷房効率の評価が比較的難しい状況から、部屋への人員の出入りのない週末・祝日の運転データを取得し、設置したシステムの正確な効率向上係数を求める。このための人件費として10万円程度を予定している。 これまでの研究成果を発表し、普及を促進するために、バンドンにおいて政府・地方公共団体の担当者を含めた会合を計画している。このための会議費として10万円程度を予定している。 インドネシアでの活動およびインドネシアの研究協力者の日本での活動のための旅費を80万円程度見込んでいる。研究の特性から旅費の占める割合が高くなっているが、現地研究の効率化とインドネシア側の研究協力者の寄与の増大で成果を上げる体制を構築する。 前年度の予算のうち、約30万円が平成25年度へ繰り越された。この経費削減の理由は、多くの物品が現地で調達可能で低価格であったこととバンドン工科大学が共同研究として人件費不要で協力してくれたことによる。今年度に繰り越された予算は、主として旅費および物品購入に充当する。
|