2012 Fiscal Year Annual Research Report
音響バイオロギングによる大型ヒゲクジラの摂餌行動の研究
Project/Area Number |
24405037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
赤松 友成 独立行政法人水産総合研究センター, 水産工学研究所, グループ長 (00344333)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物音響 / バイオロギング / 資源管理 / ヒゲクジラ / 摂餌生態 |
Research Abstract |
水産資源の持続的な利用のためには、ヒゲクジラ類の大きな捕食圧力は無視できない。しかし、ヒゲクジラの摂餌量と餌種は、これまで捕獲による胃内容物調査でしか得られなかった。本研究は、鯨体にとりつけた新開発の録音器で摂餌に伴って発生する音を記録し、摂餌タイミングと量さらに餌生物種を個体毎に時々刻々観察できることを実証する。まず、資源回復が遅れているシロナガスクジラを対象とし、アイスランド北部のフーサビク湾において、各個体がいつどの水深でなにをどのくらい食べたのかを、音響バイオロギングで明らかにする。 海の主要捕食者の摂餌量と餌種を知ることは、水産資源の管理・利用・予測において鍵となるばかりでなく、海洋の食物連鎖における大規模な炭素循環量を示すことができるだろう。これまでの海洋生物学では極めて困難であった、餌を食べるという行為の可視化を大型ヒゲクジラで実現することが、本研究の最大の意義である。 平成24年度は、アイスランド北部のフーサビク沖スキャルファンディー湾に春期に来遊するシロナガスクジラを対象とし、安全な装着・回収技術を確立し、摂餌音データを2個体取得した。これまでに開発した音響タグを深海対応とするためカーボン製のものを新たに製作し、設計耐圧1000m、500mLのペットボトルほどの大きさで220時間の連続録音が可能な録音装置を開発した。体の動きを計測する超小型加速度データロガーも併用し、個体ごとの潜水プロファイルおよび経験水温と体軸方位を計測した。回収したデータから摂餌音のソナグラム解析を行い、周波数成分とその時間変化などの特徴量を数値化した。摂餌の際には口を大きく開け海水を含むため、急減速や遊泳方位が変化する。これを音響記録と比較することで、音響的に餌獲りを同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
深海用録音装置を開発し、代替計画を発動することなく当初予定のシロナガスクジラでの観測を実行した。 接近が困難で装着個体は二頭にとどまったものの、音響による摂餌イベントの明瞭な抽出が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒゲクジラの周辺にいた餌の種と密度を画像データロガーで同定する。これを摂餌音と比較し、餌種に特異的な音響特性を抽出する。画像情報は音響情報に比べ計測時間が短く、餌種判定や密度推定には強力なツールである。さらにフローノイズレベルと加速度データロガーの積分値で得られた遊泳速度と比較することで、音響だけで遊泳速度およびそれを指標とした摂餌濾水量を計測できるようにする。
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