2013 Fiscal Year Research-status Report
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24500006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 一幸 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (30282031)
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Keywords | 通信計算量 / 数理計画 / 整数計画 / 完全グラフ / 二部グラフ被覆 |
Research Abstract |
本研究は,計算量の下限導出問題に対する新たな証明手法を開発することが主目的である.これに向けて本年度は特に,計算量理論における重要な未解決問題である「クリークと独立点集合の通信問題」(以下CLIS問題)の非決定性通信計算量に対する新たな解析手法および計算量下限を与えることに成功した. 前年度より引き続いて行った研究により,従来より考えられてきたグラフに対する無向二部グラフ被覆の概念を,有向グラフへと拡張した上で,与えられたグラフに対する効率的な被覆を求める問題と,CLIS問題の非決定性通信計算量に対する下限を求める問題が等価であることの証明を得た.この結果は,効率的なアルゴリズムの構成と計算量の下限の導出とが表裏一体であるとする,近年の研究結果を補強するものとしても特に興味深いものである. 次に,特に完全グラフに着目し,これに対する従来知られているものより効率的な有向二部グラフ被覆を得ることに成功した.より具体的には頂点数の3分の2乗のオーダーの有向二部グラフ被覆を構成した.この事実と上の結果を組み合わせることで,n頂点グラフを入力とするCLIS問題の非決定性通信計算量の新たな下界 1.5 log n を得ることに成功した. また,本研究では特に,計算量下限を数理計画的なアプローチによって得る手法を探求することを目指している.これに対しては,各種の小さなグラフに対する最適な被覆を求める問題を整数計画問題として定式化し,整数計画ソルバを用いて解くことによって,特に,本研究で導入した有向被覆が従来の無向被覆に対して真なる拡張となっていることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた研究成果は,本研究課題の目的達成に向けて重要な進展となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に当たる次年度は,今年度得られた成果を発展拡張することにより,新たな計算量の下界導出手法の開発を目指すとともに,研究成果のとりまとめを行う. まず,今年度得られた完全グラフに対する有向二部グラフ被覆の最適性についての検討を行う.また,これまでに得られた結果を拡張する形で,各種のグラフに対する有向二部グラフ被覆に対するより詳細な解析を行う.これには,理論的手法および計算機実験を通じた解析的手法の両面からのアプローチを取り入れる.特に解析的手法により得られるデータを理論的枠組みの中に組み入れ,新たな手法を開発することに重点をおき研究を進める.また,今年度までに得られた,グラフの被覆問題と非決定性通信計算量の評価の等価性に類似した主張が,他のグラフに対する概念と他の計算モデルに対する計算量の評価についても拡張可能であるかについて検討する. これに加えて次年度は,離散数学分野でも難問が多く残される極値組み合わせ論的問題に,計算量的視点から検討を加えることを試みる.たとえば,ある種の加法組み合わせ論的性質を満たす集合の発見問題について,これを計算機援用のもとで求め,得られた集合に対する性質の解明および一般化を通じて新たな構成法を発見することを目指す.さらには,この際に要する計算量を理論的に解析することにより,数学的問題に対する計算量の評価といったより汎用的な手法の開発をも試みる. 得られた成果は,国内外の研究会や学会等において積極的に発表しフィードバックを得るとともに,最適化理論や数理計画理論に関する研究者との意見交換や最新技術に関する情報交換を積極的に行うことを通じて,当該研究の目的である新たな計算量の評価手法の開発を目指すものとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度購入した計算機システムの立ち上げに当初の見込みより時間を要し,また,これを用いた実験が想定していたものより時間のかかるものとなったことによって,その結果のとりまとめと成果の発表が一部次年度へ持ち越しとなった.そのため,特に旅費,プログラム開発に関わる謝金,および,論文掲載時に要する別刷り代金において,当初予算額に比べて実際の支出額が少ないこととなった.計算機実験自身については順調に進んでいる. 今年度導入した中規模計算機システムの積極的な活用を行う.これに対応するために数理計画分野の専門家との討論や最新技術の教唆を行う機会を設け,前年度繰り越した旅費を充当する.また,得られた成果を国内外の会議において積極的に発表するための旅費としても使用するものとする.また,一部は今年度投稿した論文の掲載料としても用いる予定である.
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Research Products
(4 results)