2014 Fiscal Year Research-status Report
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24500006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
天野 一幸 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30282031)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 計算量理論 / 通信計算量 / 二部グラフ被覆 / しきい値論理回路 / 線形計画 / 充足可能性 / 計算複雑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,各種計算モデルに対して,数理計画的アプローチに基づいた計算困難性の解析手法の開発を目指すものである.これに向けて,今年度得られた主な成果は以下の通りである. (1)近年のWilliamsによるブレークスルー以来急速な進展が見られる,充足可能性判定アルゴリズムと計算困難性に対する下界導出との両面性に着目したアプローチに基づき,制約付しきい値論理回路に対する計算困難性の証明に成功した.特に,しきい値論理素子の評価が,線形制約式で表されることに着目し,ある特定の構造的制約を満たすしきい値論理回路の評価が,多項式個の整数計画問題の許容性の判定に帰着できることを明らかにした.これに,先に述べたアルゴリズムと計算困難性に関する両面性の議論を組み合わせることで,非決定性指数時間計算可能な関数クラスと,導入した構造的制約を満たす定数段しきい値論理回路で計算可能な関数クラスの分離に成功した.この結果をフランスで行われた国際会議,および,電子情報通信学会論文誌において発表した. (2)前年度までに得られたクリーク-独立点集合問題に対する通信計算量を求める問題と,グラフ理論における最小有向二部グラフ被覆を求める問題との等価性に関する結果を進展させ,この問題に対する既知の結果を凌ぐ計算量下界の導出に成功した.得られた結果を応用数学に関する国際的に著名な論文誌において発表した. (3)3次元空間における立方体の非移動最疎充填を求める問題を大規模整数計画問題に帰着し,得られた問題を実際に計算機を用いて解くことで,充填密度に対する新たな上下界を求めることに成功した.充填密度に対する上界を求める問題は,自然な形で整数計画問題として記述できるものの,下界を求める問題を整数計画問題に帰着し解を得るというアプローチは,本研究による新たな成果である.この結果を情報処理学会論文誌において発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初今年度(平成26年度)までで終了の予定であった.しかし,特に今年度行った様々な計算困難問題を整数計画へと帰着しその振る舞いの解析を行う段階において,例えば,解空間の局所的構造とその困難性の関係についての興味深いデータが得られるなどの事例が生じた.これらに対するより詳細な解析と,そこから生じるであろう理論的展開を現在構築中の枠組みに取り入れることが,本研究による成果を最大化するためには最善であると判断し,本研究の計画期間を1年間延長することとした.本研究の達成度をやや遅れているとした理由はこの点による.一方で研究期間の延長により,当初目的よりも汎用性を持つ計算困難性証明の枠組みが構築でき,本研究の全体的な成果としてはより大きなものとなることが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに計画最終年度となった平成27年度には,特に,今年度(平成26年度)までに得られた,各種計算困難問題を整数計画等の数理計画問題により表現した際の解空間構造とその困難性への影響を精査し,計算困難問題に特有の離散的構造の抽出を行う.また,上記研究の項で挙げた,しきい値回路モデルに関する結果や,通信計算量に関する結果の更なる発展を試みる.特に,クリーク対独立点集合問題については,本研究の成果の発表後,射影平面理論を用いた発展的結果が海外の他の研究グループにより発表されており,この結果のより深い理解に基づく展開を重点的に研究することとする.次いで,計算困難問題に特徴的に含まれることが想定される構造を理論的枠組みの中で定式化することにより,当研究の最終目的である,各種計算モデルにおいて計算困難性が評価可能な証明手法へと取りまとめる. 得られた成果は各種研究会等で積極的に発表を行うものとする.また,そこで得られるフィードバック等も取り入れながら論文にとりまとめ論文誌等への投稿を行うものとする.
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Causes of Carryover |
平成26年度に,計算機実験により得られた計算困難性を担保する性質に対する定式化を行い,これを論文としてとりまとめ学会において発表予定であった.しかし,当該年度後半に行った計算機実験において,より詳細な解析を要すべき興味深い現象を示す新たなデータが得られたため,これを組み入れた理論へと再構築する必要が生じ,そのため,論文へのとりまとめ,および,学会発表に関する経費に未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に得られたデータの解析に基づく理論の拡張を含む最終的な論文のとりまとめ,および,この成果について学会発表の一部を次年度(平成27年度)に行うこととし,未使用額はその経費,および,旅費にあてることとする.
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Research Products
(11 results)