2013 Fiscal Year Research-status Report
制約充足問題の最適解近似アルゴリズムを高速化する制約条件の簡単な識別方法
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24500011
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山上 智幸 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80230324)
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Keywords | 制約充足問題の最適解探索 / 解の数え上げ問題 / 対数領域計算可能性 / 固定長領域計算量 / リスト分割数え上げ問題 / 時間・領域計算量 / 解法アルゴリズムの効率 / 小型計算機端末 |
Research Abstract |
○平成25年度で2年目となる本研究では、初年度に引き続き、最適化問題の一般的な解法アルゴリズムと時間・領域計算量の分析を行った。 ○最適化問題の計算量分析では、新たに最適化問題の対数領域計算可能性に取り組んだ。まず、日常使用される携帯やタブレット端末のような矮小メモリーを持つ計算機モデルで、最適化問題の解法アルゴリズムの効率を論じる。これまでの多項式時間計算量の概念では分類不可能な最適化問題に対し、新たに対数領域計算の概念を導入することで、より詳細な分類を可能にした。本研究の特筆すべき点は、より精密な論理回路還元性の概念を用いた新しい分類方法を確立し、分類の精度を飛躍的に上げたことである。この研究成果は2013年12月に中国成都で開催された国際会議ISAAC 2013で発表した。 ○多項式時間計算機モデルを用いた研究では、近年完成された制約充足問題の分類の応用として、無向グラフのリスト分割数え上げ問題を取り扱い、Oxford大学の研究グループとの共同研究で完全な分類を行った。中でも、与えられた制約条件の形状にグラフを分割可能か否かを判定する問題は、リスト分割問題と呼ばれ、殊に応用範囲が広い。この成果の優れた点は、制約充足問題に帰着することで、全てのリスト分割数え上げ問題の計算量の分析が初めて可能となり、これにより、問題の完全な分類を得ることが出来た。この結果は2014年6月にバンクーバーで開催される国際会議CCC 2014で発表する予定である。 ○更に固定長メモリーの小型計算機端末の計算機モデルを用いて、解法アルゴリズムの複雑さの分析を行った。この分析のために、固定領域計算に初めて還元性の概念を導入し、これによって、還元性の適応回数によって問題の難しさを分類することが可能となった。この結果は、2014年1月にスロバキアで開催された国際会議SOFSEM 2014で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○平成25年度は福井大学大学院情報・メディア工学専攻の専攻長の職務に忙殺されたが、本研究の目標とする制約充足問題の計算量による分類とその応用に関して、新しい成果が得られた。また、共同研究にも力を入れ、イギリス及びドイツの研究者グループと交流を持った。特に、Oxford大学との共同研究は予想外の進展があり、非常に有意義な成果を挙げた。年度末までの研究成果として、国際会議論文3編(その内1編は6月発表予定)と専門誌掲載論文2編が出版された。この国際会議論文は、これから内容を書き足して国際的な専門誌への投稿を予定している。イギリスの研究者グループとは、今後も研究協力を続けていくつもりである。また、ドイツの研究者との共同研究については、今後の成果が見込まれている。 ○以上の理由から、研究は滞り無く進んでいるものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
○最終年度となる平成26年度の研究では、海外の研究者との共同研究を模索しながら、以下の各項目を中心に据えて研究を行う。特に、ドイツのBonn大学のKarpinsky教授の率いる研究グループとの共同研究を進める予定である。 ○まず、ある特殊な形式の制約条件を満たす最適解を求める問題の計算量による分類を行う。特に、次数(制約充足条件の変数の出現回数のこと)を制限した制約充足条件の最適解探索の分類は、これまで見過ごされている。これに対し、制約充足条件の解の数え上げ問題では、次数3以上の問題は全て次数3の場合に帰着可能であるが、次数2の場合は特異であり、完全な分類が研究されている。しかし、最適解探索の場合には、次数に関する研究自体がまだ行われていない。本研究では、次数が高々2である問題に焦点を絞り、対数領域アルゴリズムで解が近似できる問題や、論理回路を対数個使用して近似可能な問題などに分類することを目標とする。 ○次に、ハイパーグラフ(通常のグラフの辺をハイパー辺に置き換えたもの)に関する制約充足条件の最適解を求める効率的なアルゴリズムの開発を行う。ハイパーグラフ上の制約充足問題は、通常の制約充足問題と大きく異なり、これまで知られたアルゴリズムでは解くことが出来ない。従って、新たな技法と分析方法が必要になる。こうした技術を新たに開発し、これまで未解決のハイパーグラフ上の制約充足問題に応用する。時間があれば、この新技術の他分野への応用も考察する。 ○スマートフォンやタブレットなどの携帯端末では記憶容量が極端に制限されている。昨年度までは、こうした矮小な記憶容量を持つ計算モデルを使って、問題の複雑さを分析してきた。今年度は、こうした研究を更に発展させ、固定長領域計算量を用いた還元性(問題の複雑さを比較する方法)の一般的な性質の詳細な分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○研究成果発表のために出席した国際会議や共同研究のために渡航した経費などが、当初の予想額と異なっていたため、研究費に差異が生じた。この差額は、本年度の経費に充当したいため、年度末にはあえて消費しなかった。 ○3年目となる本年度は、これまでの研究成果を総まとめし、国際会議などでの研究成果の発表をこれまで以上に積極的に行っていく予定である。そのためには、ポスターによる成果発表に必要となる大型プリンターやそれに付随するプリンターインクの購入などを行う必要がある。更に、スライド発表用に必要な携帯型計算機端末の購入を予定している。 ○新規に図書の購入が必要であり、また、既刊の論文の電子コピーの購入に予算が必要である。専門誌論文などの文書作成にはMS Officeなどのソフトウェアの購入を見込んでいる。また、計算ソフトウェアの購入も必要となる。 ○研究成果の電子的開示に必要なWEBページの保持に必要な費用を計上する。また、計算機のセキュリテーのために必要なウイルス対策ソフトウェアのリース契約とその更新に掛かる費用を計上する。
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Research Products
(9 results)