2012 Fiscal Year Research-status Report
動的環境において地理情報システムに現れる最適化問題に関する研究
Project/Area Number |
24500021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 教授 (70203289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥海 重喜 中央大学, 理工学部, 助教 (60455441)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地理情報処理 / 動的ラベル配置問題 / 略地図生成と描画 / 海上航路ネットワーク / エネルギー輸送問題 |
Research Abstract |
初年度であるため,まず,現在のGISデータがどこまで動的環境に適用できるかという調査を行った.動的データ構造の構築と最適化問題に関しては,次のような点に着目して研究を進めてきた.現在,モバイル端末上に表示される地図においては,その拡大縮小,表示画面のスクロールや回転などに伴って,画面上に表示されているデータをリアルタイムに処理し,表示しなおすという操作が不可欠になって来ている.そこで,回転する地図において,文字情報が重ならないように配置できる最大の大きさを求めるという,ラベルサイズ最大化問題に対する,多項式時間の解法を提案した.静的な地図においては,ラベル配置問題のほとんどがNP困難と呼ばれる,難しい問題であるが,動的な環境において,逆に,このようなラベル配置問題が多項式時間で解けることが分かったことは,驚くべきことである.また,平面上を点が動く場合には,ラベルの大きさや表示できる数の最適解を得ることは,非常に難しいので,まず,点の動く範囲を直線状に制限し,ラベルが重なってしまったとしても,配置するという問題設定で発見的手法を構築し,計算機実験によって,その有効性を検証した.また,画面上に表示する地図はデータ量が非常に多すぎて,必要な情報を得ることが難しくなることも多い.そのような場合に,地図を簡略化してデータ量を削減して,動的な環境に対応できるようにすることも重要となる.そこで,本年度は,大量の地図データから必要な情報を抽出し,略地図を生成するための手法も提案し,計算機実験を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,地理情報システムにおける動的環境における理論的研究として,次の3つのテーマに焦点を当てて研究を行っている.(1)動的データ構造の構築,(2)動的データを用いた最適化問題の解法の開発,(3)制御不能流の理論的研究である.動的データ構造と最適化問題の解法は密接に関係しており,並行して研究を行ってきた.本年度は,地図データのモバイル端末上での表示の動的環境への拡張という,GISで最も基本的な地図表示の問題を中心に研究を進めてきた.主に,動的環境でのラベル配置においては,動いている点に対する引出し線を用いた解法の提案と地図の回転におけるラベルの最適化問題という,2つの問題に対して,効率的な解法を得られた.また,モバイル端末上に地図を表示する場合に,多くのデータを表示すると,情報量の過多によって,必要な情報を得にくいという現象がおこる.そこで,略地図を生成し,情報量を減らして,必要な情報を得やすくするという手法の研究も行い,それに対する計算機実験を行った.これらの研究成果に対しては,まだ,大規模のデータでの実験は行っていないが,理論の構築と予備実験ではある程度の成果が得られたと言える. 制御不能流,特に最小極大流の理論に関しては,問題の難しさによって,まだ,新しい知見を得るには至っていないが,研究推進のヒントとなると思われるアイデアがあり,それを確認する計算機実験を行う予定であるので,それにより,理論が進む可能性が出てきたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では,地理情報システムに現れる静的環境下での問題を,動的環境ではどのように定式化すれば良いかや,静的環境における解法の適用可能性,問題点などを研究してきた.特に,動く対象物を扱ったラベル配置問題は地図のモバイル端末表示において,重要なテーマになっている.そこで,直線上を移動する点に対するラベル配置問題に対して,実時間処理で対応可能な発見的手法の開発した.この問題に対しては,発見的手法は得られたものの,近似保証などの理論的成果はまだ得られていない.そこで,理論的保証のあるアルゴリズムの構築を目指したい.また,回転する地図に対しては,新しい問題を定式化し,多項式時間の解法を得た.それを踏まえて,静的な環境での様々な問題を動的環境に変えた時に,問題が本質的に難しくなるのかどうかを,計算量理論の観点から調査し,静的環境でのデータ構造やアルゴリズムを動的環境に対応させていく時の統一的な変更の方法や,そこでの問題点を調べて行く予定である.また,その結果に応じて,理論的研究と計算機実験による評価を予定している. 制御不能流,特に最小極大流の理論の研究に関しては,研究推進のヒントとなると思われるアイデアについて,その可能性をまず計算機実験によって,確認する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度であったため,動的環境における既存研究やその問題点などの調査や,実用的な応用の場面で現れた新しい問題を定式化し,解法を考えるなど,理論的研究開発が中心となっていた.開発したデータ構造やアルゴリズムの計算機実験は,主に予備実験としての小規模なものを行ってきた.次年度は,実用的な状況に近づけて実験を行うことを予定しているので,次年度使用額は,次年度の予算と合わせて計算機実験の環境を整えるための費用として使用する予定である. また,一部は,初年度で得られた研究結果の国際会議での発表や論文誌への投稿を予定しているので,そのための費用として使用する.
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Research Products
(8 results)