2013 Fiscal Year Research-status Report
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24500026
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
仲川 勇二 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60141925)
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Keywords | Management Science / ゲノム科学研究 |
Research Abstract |
2014年3月に仲川らの論文がINFORMS(Institute for Operations Research and the Management Sciences)学会の論文誌 Management Science誌に掲載された。約60年の歴史を持つジャーナルであるが、日本の研究機関に属する研究者の掲載は、10編以下と思われる。このジャーナルは、全体としてジャーナルランクA+で最も評価が高いジャーナルであるが、分野により評価が若干異なる。最適化の分野では一貫して最も評価の高い位置にあり、日本の研究者の論文の掲載は今回が45年ぶりの2度目である。仲川が独自開発したエントロピーを用いた問題の困難度測定法と、この測定法を利用した問題分割法を提案し、IBMのCPLEX、Baron, Bonmin, LindoGlobal, Couenne等の世界的に著名なソルバーと比較し、仲川の解法(HOPE)が顕著に優れていることを示した。 HOPEの応用として、ゲノム科学研究の分野には、次元の呪い(curse of dimensionality)(H. Josephine and O. Jurg、 NATURE REVIEWS、2003)と呼ばれ、未解決の難問として知られている回帰分析問題がある。この問題は、サンプルデータ数よりも変数の数が多い場合で統計的なアプローチが困難な特性を持っている。同様の困難をもつ問題は金融工学にも存在し、既にHOPEを用いて24か月のデータから日経225の中で連動する50銘柄を選択するインデックス連動ファンド問題を取扱い、1995年4月から1998年3月の実データに対して極めて高い精度の解を求めることに成功していた(電子情報通信学会論文誌、2005年)。今回は、24か月のデータを用いて東証1部上場 (TOPIX)1440銘柄から50、100、200、300銘柄を選定する最適化に成功した。ゲノム科学研究では、およそ1万変数の規模の問題を解く必要があるが、この規模を解く目途もついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オペレーションズ・リサーチとマネージメントサイエンスに関する学会としては世界最大のINFORMS (The Institute for Operations Research and the Management Sciences) において、この学会を代表する論文誌 Management Science 2014年3月号に仲川らの論文が掲載されたことは顕著な成果である。これは、仲川が35年間かけて独自に研究開発した最適化理論とその理論に基づいた解法ソフトウエア(HOPE)が世界で高い評価を受けたことになる。 また、HOPEの応用として、ゲノム科学研究の分野で「次元の呪い」と呼ばれる未解決の難問の解決に目処が立ったことは、今後の本研究の実用化に向けて大きな前進である。この「次元の呪い」は、Nature Reviews Genetics (2009)やScience(1995)等の一般科学誌やThe Annals of Statistics(2005)等の統計関係の論文誌、ビッグデータに関連してJournal of Machine Learning Research(2012)等機械学習等の幅広い分野で、克服すべき課題として熱心に議論されている。また、マーケティングの消費者購買行動の分析等経営学、経済学等の分野でも使用可能である。海外の共同研究者との共同研究も今回の成果に見られるように順調に進んでいる。テネシー大学Edirisinghe教授とは、今回のManagement Science以外に多目的最適化の関係でMathmatical Programming誌への投稿を目指している。ミシシッピー大学Rego教授とは仲川の離散最適化法を金融工学の非凸二次計画問題へ応用した研究で再度Management Science を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
離散最適化の理論的な研究とソフトウエア(HOPE)の改良に引き続き取り組むとともに、ゲノム科学の「次元の呪い」解決のための研究に重点的に取り組む。変数が1440個の場合に、高精度で意味のある解を見つけることに成功している。今後は、10000変数の問題が解けるようにプログラムの改良を行う。また、ゲノムデータを用いた最適化に取り組むとともに、多目的最適化に関連した研究も推進する。実社会での意思決定においては、互いに競合する複数の評価基準(利益とリスク等)を考慮せざるを得ない局面が多い。このような場合は、本来単一目的の最適化よりも多目的最適化問題として取り扱う必要がある。多目的最適化は、経済学のゲーム理論や金融工学、さらには社会科学全般や工学等広範囲の応用分野があり、重要な研究分野である。しかし、厳密にパレート最適解を求めようとする取り組みは極めて少ない。仲川が開発したHOPEを発展させ、多目的離散最適化において厳密解法の実用化を現実のものとするための研究を推進する。HOPEは、既に500変数規模の問題のパレート最適解を厳密に列挙することや、複数制約の問題や非線形の問題も厳密にパレート最適解を見つけることに成功している(電子情報通信学会論文誌、2011)。リスクを考慮した意思決定への応用 に関しては、意思決定者が希望する領域内のパレート最適解を、効率的に求めることができる多目的最適化技術をリスク管理システムとして応用することを目指す。金融工学、統計学、経営学への応用に関しては、インデックスプラスアルファ作成技術の実用化を目指す。また、離散最適化技法の経営学分野への応用を推進する。マーケティング分野への応用に関しては、標的解法の核技術である離散最適化技法のマーケティング分野への応用を推進し、実用化の可能性についても探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際会議での2回の発表とミシシッピー大学 Rego教授との研究打ち合わせのために、3回の外国出張を予定している。 次年度は予算額が他の年度と比較して少なく、国際会議での研究成果の発表等研究費は例年と同様の額が必要と考えられるので、その研究費の不足分を補うために前年度の研究費の一部を繰り越した。この繰越金額は上記の国際会議での発表旅費に使用する。 6月に開催されるISDS’2014 では、金融工学用に開発した最適化ソフトがゲノム科学研究の「次元の呪い」を解決する可能性が高いことを報告する。題目は“Non-convex Portfolio Optimization and Regression for Genome-wide Association Study” (Antalya City, Turkey on 10-14 May 2014) である。7月に開催されるIFORS 2014 (20th Conference of the International Federation of Operational Research Societies) では、多目的最適化研究での世界最高速のソフトウエアを開発したことを発表する。題目は、“Complete Efficient Frontier of Bicriteria Nonlinear Separable Discrete Optimization Problems with multiple constraints” (Barcelona, Spain on 13-18 July 2014)である。9月に予定している米国での研究打合せは、Management Science へ投稿予定の金融工学(インデックス連動)最適化に関する論文の作成に関する研究である。
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Research Products
(1 results)