2012 Fiscal Year Research-status Report
「箸」センシングに基づく食育支援システム構築法の研究
Project/Area Number |
24500187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
金田 重郎 同志社大学, 理工学部, 教授 (90298703)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ユビキタス / センシング / 箸 / 導電性 / 食育 / 食べ物 / 老人 / 集団性 |
Research Abstract |
ユビキタスセンシングにより「何時食事をしているか」「誰と食事しているか」「和やかに食事しているか」等を自動計測する技術を確立し,併せて当該技術を用いた食育支援システムの構築を目指している.具体的には,食物・箸・人体によって形成される閉ループの存在を,電圧を印加した際のループ電流によって検出する.今期の進捗状況は以下の通りである. (1)摂食動作検出については,7種類の食物を用いて,被験者10名による評価実験を実施した.その結果,食物を掴む動作については確実に検出できること,口に運ぶ動作についても99%以上の確率で検出できることを確認した.成果の一部は,情報処理学会・情報システムと社会環境研究会(H25年3月)において報告した.(雨宮寛敏,山岸勇貴,河合純,金田重郎,「導電性箸を用いた摂食行動の自動記録手法」,情報処理学会・情報システムと社会環境研究会,H25年3月) (2)箸の中に送信機を装着することは当初の予想通り困難を極めている.無線による電力供給も何度か試みたが,形状的に細い箸では,期待した高Q値は得られず,電力が供給できないことを確認した.箸は,二次電池を入れられるサイズでもなく,少なくとも,H24年度は解決策を見出せなかった. (3)上記の状況に鑑みて,センシング手段を肘に取り付ける,新しいアプローチに着手した.本アプローチでは,カメラによる食物の種類判別も試みている.ただし,食べ物を探している時(箸は下方を向いている)と,口に運ぶ時(箸は上方を向いている)のカメラ照明条件の変化によって,食物の色だけでは,あまり高精度の食物特定は出来ていない.但し,肘に取り付ける点にはオリジナリティがあると考えており,H25年度にプロトタイプを構築して,成果を学会等において報告したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の評価実験の結果,閉ループを用いた,「食物を箸で挟む動作」「食物を口に咥えた動作」の検出は,確実であることを確認できた.本研究「伝導性箸」の手法自体については,その有効性を検証できたと考えている.しかしながら,予想されたこととは言え,閉ループを検出するための抵抗測定回路と信号送信機を,細身の箸に組み込むことはできていない.24年度の状況を見る限り,大学の「素人細工」では,評価に利用できる「伝導性箸」を作ることは難しい.H25年度についても,引き続き,デバイス面からの検討を加えて行きたいが,たとえば,肘にデバイスを付けることを容認する等の別のアプローチを並行して検討する必要がある. 一方,集団で食事しているケースについての分析については,すでに着手済みである.集団の食事については,「その場の輪に加われなかった参加者」が会話から外れるので,ひたすらつぎつぎと,高い頻度で食べ物に箸を延ばすと予想していた.しかし,会話に加われないと,かえって箸の回数が少なくなる被験者もおり,当初予想とはすこし違った結果であった.H25年度にも分析を続けたい. 更に,学会活動については,海外の学術的国際会議への発表,あるいは,ジャーナル論文化に着手できていない.成果の対外的なアピールとして,H25年度は,ジャーナル論文への投稿あるいは英語での成果報告が必要と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
伝導性箸について,最大の課題は,やはり,信号の伝送である.大学の研究室における「素人細工」では困難性が高い.たとえば,昔のDual-in-lineのICチップであれば,ピンの幅が十分にあって,人手の半田付けも可能であった.しかし,Face-down-bondingを前提とするような現在のLSI-Packageのピン間隔では,人手半田付けはままならない.企業さんと連携して助成金を頂いて研究を進める方向性の検討が必要と思われる. 現状の信号ケーブルを伴った伝導性箸については,食物を掴む動作と,食物を口に運ぶ動作をほぼ完璧に捉えており,この伝導性箸の原理自体の修正は必要ない.ただし,回路的にも,現状の電流量は十分に小さいとは言い難い部分があり,更なる低電流化の検討を行いたい.その場合,電流が下がることは回路のインピーダンスが高くなることを意味するわけであり,それだけ,ノイズの影響を受けやすくなる.回路構成の面から,この点の改善も図りたい. また,当初から研究課題として上げている集団で食事する時に輪に入りこめていない参加者を特定する研究については,口に食物を運ぶ間隔を測定するアプローチ自体を変更する必要はないと考えており,H24に引き続いて,実験を継続してゆく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画 H25年度については,以下の計画にそって研究を進めたい. (1)伝導性箸については,「集団による食事の分析」について,検討を継続する.基本的には,餃子等をひとつの大きな皿に盛った状態で,会話を楽しみながら,箸を延ばすシーンを想定する.箸としては,無線の箸が準備できていないため,信号ケーブルをつないだ従来のプロトタイプを利用する.当初,「集団に参加できていない参加者は,箸を運ぶ回数が増える」と考えていたが,H24年度の予備実験の結果,必ずしもそうでないケースが散見された.このため,H25年は,一定量の被験者数を確保して,プロトタイプ箸による評価実験を継続したい. (2)肘カメラを用いたアプローチについては,プロトタイプシステムによる評価実験を継続して行う. H24年度は色による食物の種別判別の初歩的な実験を行ったが,H25年度は,オプティカルフローを用いて(カメラから見てあまり移動することのない)「箸が掴んでいる食物」を弁別するアプローチを併用して実施する.肘カメラ自体に新規性があると考えられるので,得られた成果は学会等に発表してゆく予定である. (3)H24年度に不十分であった成果のジャーナル論文化,あるいは,国際会議への投稿についても,鋭意取り組みたい.ただし,ジャーナル化は,情報工学系の学会では,回路面への理解が得られないことも予想されるので,電気系の学会や,ユビキタスセンシングを専門とするジャーナル論文・トランザクション論文への投稿を検討したい.
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Research Products
(1 results)