2012 Fiscal Year Research-status Report
自発的学びを醸成する公共図書館の生涯学習機能に関する実証的研究
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24500290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 右子 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30292569)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公共図書館 / 生涯学習 / エンパワメント |
Research Abstract |
本研究では公共図書館に特徴的に見られる、図書館を拠点とした女性のエンパワメントに関わる活動および図書館自体を学びの対象とした自主的活動に着目し、その実践を公共図書館固有の生涯学習の様態としてとらえた上で、そうした学習活動のプロセスと成果を実証的に明らかにすることを目的としている。 平成24年度は公共図書館における「女性の自発的学び」という営為を明らかにするため、これまでの活動実践を史的展開(20世紀初頭から現在まで)および地域的展開(日本・アメリカ・北欧)を視野に入れて分析し、公共図書館に特徴的な女性の自発的な学びとエンパワメントにかかわる実践活動を整理し、本研究の分析モデルの構築を行なった。 また日本の公共図書館において展開されてきた図書館作り運動から現在の図書館支援活動を、図書館自体を学びの対象とした主体的な学習活動としてとらえ、史的展開を踏まえその全体像を検討した。そして公共図書館が生涯学習装置として持つ普遍的/基本的機能の中に女性のエンパワメント支援が含まれていることを明らかにし、その結果を論文にまとめた。 さらに平成25年度に本格的に着手する予定である、日本の公共図書館において図書館をテーマに自発的学習に取り組んできた長期活動者へのインタビューを部分的に開始した。 これらの研究を通じて公共図書館を拠点とする女性のエンパワメントに関わる活動を理念的に分析したことにより、生涯学習機関としての公共図書館の持つ潜在的可能性を提示するための研究基盤を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、公共図書館を拠点にした女性の自発的学習やエンパワメントを総合的に検証するため、 (1)公共図書館に特徴的な女性の自発的な学びとエンパワメントにかかわる実践活動を、活動の公共図書館理念の普遍性と設置地域(日本、アメリカ、北欧)における個別性に留意しながら、その全体像を整理する。 (2)日本の公共図書館において展開されてきた図書館作り運動から現在の図書館支援活動を、図書館自体を学びの対象とした主体的な学習活動としてとらえ、史的展開を踏まえその全体像を整理する ことが、当初設定された研究の第一段階であった。 平成24年度において(1)(2)について分析が進み計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は伝統的に女性グループのエンパワメントの場として機能してきた日本の公共図書館において展開されてきた、図書館自体を学びの対象とした主体的な学習活動を研究対象として、その実質的な内容に踏み込んで実証的な分析を行いこうした活動の本質を明らかにする。 とりわけ1960年代後半から自主的に発生した図書館設置運動に関連して図書館作りに関わる市民の自主的な勉強会として生まれ、図書館設立後も活動を続け今日に至っている市民グループ(長期活動者)に焦点を当てる。具体的には活動者の生産した資料の分析、およびインタビューを通じた活動内容の分析を中心的作業とし、その実質的な内容を実証的に明らかにする。最終的には「公共図書館それ自体」を学びの対象とし、図書館の在り方を追究する市民グループの半世紀にわたる活動を総合的に明らかにしその意義について検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、インタビュー調査を行うため、国内旅費とインタビュー対象者への謝金とテープ起こしの費用が予定されている。また資料整理のために人的サポートを受けるための予算を計上している。 本研究は国内外の日本の公共図書館の現場に広くフィードバックされるべき性質を持つものである。研究成果は可能なメディアを用いて、図書館界に発表する予定である。そのため研究成果発表にかかわる論文の校閲費・投稿に関わる費用を計上している。
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