2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80149517)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公立図書館 / アメリカ / 歴史 / サービス / アクセス / プライヴァシー / ベトナム戦争 / ラーニング・コモンズ |
Research Abstract |
本研究は「サービスの提供」「資料や情報へのアクセスの保障」「利用者のプライヴァシーや図書館記録の秘密性の保護」という現代公立図書館の基本的な価値の生成と展開を歴史的に追求し、特に21世紀に入っての価値の変容を説明することで、公立図書館の解釈について一般図式を提出することにある。 この研究は26年度に単行書の出版を予定しているので、今年度は全体的な構想を連携研究者および研究協力者と共有すること、さらに各論については各担当者が独自に研究を進め、それを相関図書館学方法論研究会で討議するという計画を立てている。 そのために24年8月には京都大学で一般公開の国際図書館セミナーと相関図書館学方法論研究会を開き、そこでは全体的な構想を川崎が発表し、当研究会のメンバーである吉田右子(筑波大学)、小林卓(実践女子大学)、呑海さおり(筑波大学)、安里のり子(ハワイ大学)、久野和子(愛知学泉短期大学)が発表した。また25年3月には明治大学で相関図書館学方法論研究会を開催して、各自の進捗状況などを確認するとともに、相互に批判的検討を行った。 また研究会のメンバーには個別業績を査読雑誌に投稿することを奨励しており、研究代表者の川崎が関わるものに絞っても、例えば以下の業績を完成させている。詳しくは13「研究発表」を参照されたい。吉田右子・川崎良孝 「アメリカ図書館協会における同性愛差別法反対運動:図書館専門職の社会的責任」『図書館界』;川崎良孝 「アメリカ図書館協会1938年版『倫理綱領』の改訂の試みと挫折:1959-1962年」『図書館界』;ジューン・ピネル-スティーブンズ著, 川崎良孝ほか訳『公立図書館で知的自由を擁護する』など。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の目的は、(1)「研究の全体構想の共有と深化」、(2)「図書館サービスの歴史的展開の研究」、(3)「1960年代の転換の時代についての各論研究の着手」という3つの柱を研究計画では立てていた。 まず(1) 「研究の全体構想の共有化と深化」については、8月に公開の国際図書館セミナーを開催し、そこで川崎が全体的な構想の発表を行い、意見を交換し、共通認識が得られた。そしてこの部分については、9月に上海図書館および華東師範大学での講演で図書館史解釈の全体的な枠組みを発表し、枠組みの有効性について意見を交換した。 (2)「図書館サービスの歴史的展開の研究」は、(1)を受けて川崎が25年3月の相関図書館学方法論研究会で具体的に原稿を提出したが、それは最終的な単行書の草稿になるとともに、25年度の各論研究の枠組みを設定することにもなっている。 (3)「1960年代の転換の時代についての各論研究の着手」は、8月に公開の国際図書館セミナーで各自の担当課題について素描を行い、3月の相関図書館学方法論研究会では、各自の担当章の目次構成と使用する基本資料、それに主たる結論について、濃密な意見交換を行った。 そして13「研究発表」にも示しているように、いくつかの各論については査読雑誌に投稿し採択されることで、成果を社会に還元した。 以上のように、本研究プロジェクトは、計画調書に記載した内容を着実に実行しており、現時点では「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度についても、8月に国際図書館セミナーと相関図書館学方法論研究会を継続して開催し、26年3月には相関図書館学方法論研究会を開催する。研究内容については、(1)「1960年代の転換」(情報へのアクセスの保障と図書館記録の秘密性という基本的な2つの価値)について、メンバーが各自の専門領域で個別研究を行う。また26年度に向けて、(2)「21世紀における揺らぎと新しい革新についての研究」に着手する。 (1)「1960年代の転換」については、川崎(総論)に続いて、吉田右子(社会運動と図書館)、小林卓(多文化図書館サービス)、安里のり子(アメリカ図書館協会の変革)、高鍬裕樹(図書館記録の秘密性と利用者のプライヴァシー:大阪教育大学)、北村由美(アメリカの東南アジア政策と図書館:京都大学)などの各論研究を完成させ、可能な限り査読雑誌への発表や学会での発表につとめる。 (2)「21世紀における揺らぎと新しい革新についての研究」については、川崎(総論)に続いて、吉田右子(北欧の図書館)、呑海さおり(ラーニング・コモンズ)、久野和子(第3の場としての図書館)、高鍬裕樹(Lib. 2.0下の図書館)について、論文が執筆できる準備を整え、26年3月の研究会では具体的な論文構想が提示できる状態にする。 いずれにしても、各論が完成すれば、各自が査読雑誌、研究発表、講演などで、積極的に成果を世に問うことにしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用計画は以下のとおりである。 ・備品費:図書館情報学など研究先端図書(洋書)に、40万円。 ・謝金等:資料の収集と整理に必要な研究補助者(事務補佐)の雇用費40万円(内訳:1人×週1回) ・国内旅費:相関図書館学方法論研究会など研究旅費12万円(東京2回2泊3日) ・ 国際図書館セミナーの旅費24万円(東京から4名2泊3日1回) ・外国旅費:国際図書館セミナーの旅費40万円(アメリカ・中国から各1名4泊5日1回)
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Research Products
(9 results)