2013 Fiscal Year Research-status Report
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24500294
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80149517)
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Keywords | 公立図書館 / アメリカ / 歴史 / サービス / アクセス / プライヴァシー / ラーニング・コモンズ / 第3の場 |
Research Abstract |
本研究は「サービスの提供」「資料や情報へのアクセスの保障」「利用者のプライヴァシーや図書館記録の秘密性の保護」という現代公立図書館の基本的な価値の生成と展開を歴史的に追求し、特に21世紀に入っての価値の変容を説明することで、公立図書館の解釈について一般図式を提出することにある。 この研究は26年度に単行書の出版を予定しているので、24年度は全体的な構想を連携協力者および研究協力者と共有すること、さらに各論については各担当者が独自に研究を進め、それを相関図書館学方法論研究会で討議するという計画を立てていた。 本25年度は8月に京都大学で国際図書館フォーラムと研究会を開き、そこでは当研究会のメンバーである吉田右子(筑波大学)、小林卓(実践女子大学)、呑海さおり(筑波大学)、久野和子(愛知学泉短期大学)が各自の進捗状況などを確認するとともに、相互に批判的検討を行った。なお、このフォーラムには中国からの研究者が2名参加して発表するなど、全体では20名が参加した。 また研究会のメンバーには個別業績を査読雑誌に投稿することを奨励しており、研究代表者の川崎が関わるものに絞っても、例えば以下の業績を完成させている。詳しくは13「研究発表」を参照されたい。川崎良孝・福井佑介「公立図書館のフィルターソフトをめぐる法的判断と図書館思想:ブラッドバーン事件における『意見確認』を中心に」『京都大学大学院教育学研究科紀要』;「映画『ザ・スピーカー』をめぐるALA での論争:1977-1978年」『図書館界』などがある。また11月には中国図書館大会(中国文化部)で招待講演「読書空間としての図書館の歴史と現状」を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の目的は、(1)「研究の全体構想の共有と深化」、(2)「図書館サービスの歴史的展開の研究」、(3)「1960年代の転換の時代についての各論研究の着手」という3つの柱を研究計画では立てていた。そして25年度は各論の具体的研究を一定程度完成させるという目標を立てていた。その達成度は以下のとおりで、順調に進展している。 まず(1) 「研究の全体構想の共有化と深化」については、8月の国際図書館セミナーで確認するとともに、中国図書館大会でも発表し、その妥当性について意見を交換した。それをもとに最終目的である単行本の刊行に向けて、川崎が総論の執筆を終えている。 (2)「図書館サービスの歴史的展開の研究」は、(1)を受けて「サービスの提供(a)図書館の偏在に向けて」、「サービスの提供(b)すべての人の利用に向けて」、「サービスの提供(c)すべてのメディアの受容に向けて」という、単行書の3つの最初の章に該当するところの執筆を終えている。なお、(1)と(2)で学術書100ページ分に相当する。 (3)「1960年代の転換の時代についての各論研究」は、連携研究者の吉田右子(筑波大学)「社会運動と図書館」、小林卓(実践女子大学)「エスニック・マイノリティーへの図書館サービス」を完成させ、さらに研究グループに参加している中山愛理(大妻女子短期大学)が「拡張サービスからアウトリーチ・サービスへ」、高鍬裕樹(大阪教育大学)が「図書館記録の秘密性」を完成させた。(3)の領域は25年度に最も研究が進んだ部分である。 (4)「図書館サービスの揺らぎと挑戦:21世紀についての各論研究」は、26年度を中心とするが、すでに研究協力者の安里のり子(ハワイ大学)「学術情報流通の電子化と図書館員の対応」、久野和子(26年度から神戸女子大学に異動)が「場としての図書館:その価値と研究」を書き上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度についても、8月に国際図書館セミナーと相関図書館学方法論研究会を継続して開催する。そして26年12月には相関図書館学方法論研究会を開催して、本プロジェクトの総括と、今後の進展を話し合う。それに合わせて『図書館トリニティ (Trinity) の時代から揺らぎ・展開の時代へ』を上梓し、本プロジェクトの成果とする。本書は第1部「サービスの提供」、第2部「図書館トリニティの時代」、第3部「トリニティの揺らぎと模索・展開の時代」で構成される。 (1)「1960年代の転換」については、川崎(総論)に続いて、吉田右子(社会運動と図書館)、小林卓(多文化図書館サービス)、高鍬裕樹(図書館記録の秘密性)、中山愛理(アウトリーチ・サービス)、ウェルトハイマー(ハワイ大学:図書館学教育)、北村由美(京都大学:アメリカの東南アジア政策と図書館)で構成される。この部分はほとんど完成しているが、最後の詰めを行う。 (2)「図書館サービスの揺らぎと挑戦:21世紀」については、川崎(総論)に続いて、吉田右子(北欧の図書館)、呑海さおり(ラーニング・コモンズ)、久野和子(第3の場としての図書館)、高鍬裕樹(Lib. 2.0下の図書館)、安里のり子(学術情報の流通)、さらに嶋崎さや香(新しい図書館史研究)、福井祐介(「情報と思想のひろば」としての図書館再考)を用意している。嶋崎と福井は京都大学の博士課程院生で、福井は学術振興会特別研究員である。 いずれにしても、各論が完成すれば、各自が査読雑誌、研究発表、講演などで、積極的に成果を世に問うことにし、最終的には単行書にまとめて発行する。出版社はすでに決定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度分の約27万円を繰越しは、予定していたアメリカ人研究者などが、本人の都合で参加できなかったことなどによる。 25年度分の約27万円は26年度に外国旅費に使うことを予定している。具体的にはアメリカ・中国から各1名3泊5日の来日を予定している。
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Research Products
(9 results)