2013 Fiscal Year Research-status Report
共有・分散メモリ型並列処理の融合による統計計算アルゴリズムの効率化
Project/Area Number |
24500344
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
越智 義道 大分大学, 工学部, 教授 (60185618)
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Keywords | 統計科学 / 計算機統計学 / 並列計算 / 共有メモリ型並列計算 |
Research Abstract |
平成24年度に構築した,分散メモリ型プロセス並列処理と共有メモリ型スレッド並列処理を可能にする計算機環境,ならびに並列計算環境下での疑似乱数生成法に関する検討を基礎に,具体的な統計計算アルゴリズムの分散メモリ型並列化と共有メモリ型並列化ならびにその融合に関わる検討を次の2点から進めた。 1.スレッド並列とプロセス並列処理の融合によって構成されるハイブリッド並列処理を基本として,離散データ解析における超過変動処理に関わるアルゴリズムの並列処理化について検討した。この分析において構築される尤度は,現実的にとらえると,解析的に計算不能な重積分の形が現れることが多い。その尤度評価のためには,モンテカルロ積分等が必要となり,さらにその尤度の最大化が問題となり,現実的な解析手法としては計算負荷があまりに大きい。平成25年度の研究では,この積分評価について。計算機処理能力に応じたタスク分配にもとづくハイブリッド並列を行い,加えて,最大化においては,積分評価の際に生じる誤差の調整のために曲面当てはめの考え方を導入して,計算精度と計算コストの調整を行うことを検討し,現実的な分析手法としての可能性があることを確認した。 2.離散データの正確推測法でのアルゴリズムとして知られる多変量シフトアルゴリズムの並列処理化について検討した。このアルゴリズムはその効率的数え上げのために遂次性が高いが,多段ステップでのアルゴリズムとして見直すことによって並列化が可能であることを確認した。ただし,この並列化アルゴリズムについて,プロセス並列処理による実装では,プロセス間通信型の処理のために,必ずしも計算効率が向上せず,場合によっては処理遅延が生じることが確認された。一方で,共有メモリ型計算では,メモリアクセスのタイミングへの配慮が必要となるものの,プロセス並列の場合のような処理遅延が避けられることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに構築していた研究環境ならびに疑似乱数生成法の検討にもとづいて,計算アルゴリズムの並列化の検討に取りかかっている。タスク分解において独立性が高い処理とタスクそのものに従属性・遂次性の高い処理の両面からのアプローチに着手でき,本年度の研究で,それぞれの局面での問題点も確認できている。今後これらの個別の問題について,改善策を検討するとともに,特に離散正確推測のアプローチでは,ハイブリッド計算への適用可能性についての展開を考えていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に引き続き,以下の統計計算アルゴリズムの並列化アルゴリズムにおいて,分散・共有メモリ型並列の効率とその融合の方策について検討を加える。 1.積分評価等でのモンテカルロ積分の実装でのハイブリッド並列処理の効率について,プロセス並列とスレッド並列のアルゴリズム上・物理システム上の配分・適用箇所を含め,その適用条件とともに整理する。さらに,この結果を利用しつつ,最適化段階で並列化の可能性について検討を加え,離散データ解析における超過変動処理の問題への適用し,実データ解析に関する可能性を確認する。 2.離散データの正確推測法での多変量シフトアルゴリズムの並列化について,平成25年度に実装した2段ステップによるプログラムを改善し,各種データに適用することによって,並列化の効果について詳細な検討を行う。また,さらに3段以上の多段ステップへ拡張した場合の並列化の可能性について,ハイブリッド並列の観点から検討する。一方で多変量シフトアルゴリズムは完全な数え上げを基礎としたアルゴリズムであるが,ネットワークを基礎として条件付き確率を用いたサンプリング手法による近似計算によるアプローチを考えることができる。このネットワーク構築,サンプリング段階における並列化の可能性についても検討する。 3.ベイズ推測において必要とされる,相関のある複数の変数に関わる乱数生成法の並列化実装について検討を行う。 このうち2.については並列化の困難な遂次処理を含むが,平成25年度に当初想定した範囲を超えて並列化の可能性が確認できている。このため,当面の研究の焦点は2.と1.に置くものものとし,2.の成果が発展的に得られる状況になった場合は,その検討に注力し,本研究開始時点で計画していた3.の課題の検討については今後の検討課題とすることも考える。
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